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1章 二学期中間テスト
そ、そうか!伊織も欲しくなったのか〜!
しおりを挟むテスト終了後、空がリュックを背負って俺の席までやって来た。
「貴哉~♡桐原さん来るまで一緒にいていいー?」
「おういいぜ~」
これを見た直登が俺と空を交互に見て驚いていた。
「何々!どう言う事!?二人共喧嘩してたんじゃないのかよ!」
「この通り仲直りしましたー♡ねー♡貴哉~」
「へへーんだ!俺凄えだろー?」
直登はもう空の事を放っておけとか言われたからな。見事に仲直りした姿を見せつけるかのように言ってやった。
「もー、あんたら訳分からない!数馬くん行こー!」
「あ、うん!二人共また明日」
悔しそうに数馬を連れて帰って行く直登。
何となく直登に勝った気がして俺は満足していた。
「なぁ、貴哉?テストどうだった?」
「まぁまぁかな~。昨日は今日の分みっちりやったからな。あと、数学は良い感じだと思う」
「嘘ー!貴哉が手応えあったとか信じられない!」
「だろー?お前はどうなんだ?一学期の期末までは戸塚に続いて学年二位だったけど、キープ出来そうか?」
「さすがに一桁は無理かな。今日のは昨日のよりは出来たと思うけど、昨日はボロボロだったから。良くて30位以内かな~」
「それもすげぇけどな!」
「なぁ、明日だけどさ、本当に俺に時間作ってくれんの?」
「ああ、俺が言い出したんだから当たり前だろ~」
「いや、嬉しいなって……テスト中ずっと考えてたんだ♪」
空は子供みたいに「へへ」と笑って本当に嬉しそうだった。そんな空に俺も嬉しくなって笑い返すと、机に出してた手を握られた。
あ、これはヤバいかもな……
俺は嫌じゃなかったけど、伊織に見られたら勘違いされるかもしれないと、手を引いてしまった。
「嫌だった?」
「あ、嫌とかじゃなくてよ……伊織に見られたらさ……」
「バッチリ見たけどー?」
「どわっ!?お前いつからいた!?」
横からめっちゃ低い声がしてビクッとしちまった!い、伊織だ!すげぇ怒ってるー!
「早川が手を握るとこら辺から。何してんのお前ら」
「桐原さん、誤解です。貴哉が桐原さんとのペアリングが欲しいって言うからサイズを見てあげてたんです。でもやっぱり貴哉の指は細いから実際見に行って選んだ方がいいかも」
「え?」
「ペアリング?」
空の突然の発言に伊織だけじゃなくて俺も一瞬固まっちまった。
「俺と付き合ってる時はそんなの欲しがらなかったのに、桐原さんとは欲しがるなんて悔しいです。それと、昨日はすみませんでした。あの後貴哉に説得されて俺も反省しました。もう心配かけません」
更に続けて、おまけに昨日の公園での事を言ってるのか、ちゃっかり謝罪までしていた。
空すげぇ~!何かちゃんとまとまってね?
よ、よし俺も!
「何で言うんだよ!伊織には内緒だって言ったじゃねぇか!」
「内緒にしててもいつかはバレるだろ。それに、今のは勘違いされてもおかしくない状況だったし、桐原さんには本当の事話した方がいいだろ」
俺と空の演技に気付いたかは分からない。ただ伊織は怒った顔のまま空を見ていた。そして今度は俺を見て「帰るぞ」と腕を引かれて強制的に立たされた。
これ、失敗ってやつ?
去り際に空を見ると、寂しそうに俺のいなくなった机を見ていた。
無言のまま歩いて行く伊織に、黙って付いて行く俺。
あーあ、途中までは上手くいってたのになぁ。
手を繋ぐのはやっぱ友達同士じゃやらねぇもんなぁ。
それぞれ靴を履いて学校を出る。
伊織はまだ無言のままだった。
え、何これ?いつまでこのままのつもりなんだ?怒るならさっさと怒りゃいいじゃねぇか。こんなの気まずいだけじゃん。
「なぁ伊織~?怒ってんの?」
「…………」
「何か言えよ~!」
「さっき、手を繋いでたよな?」
「あれは……」
「早川はああ言ってたけど、本当にペアリングの話をしてたのか?」
「してた。空ならそういうの詳しいから……誤解させるような事してごめん」
本当はしていない。でもここまで来たら嘘を本当にしてやろう!本当は指輪なんて欲しくねぇ。俺はアクセサリーとかじゃらじゃらしたの好きじゃねぇから、こんな話少し無理があるかと思ったけど、伊織は困ったように笑って俺の左手を取った。
「それなら言ってくれりゃいいのに。貴哉がそんな事思ってたなんて意外だから、二人で騙してんのかと思ったんだ」
はい。騙してました。なんて言えねぇ!
俺の心はズキズキ罪悪感でいっぱいだったけど、何とかなりそうだから、俺はそのまま伊織の手を握り返した。
「騙す訳ねぇじゃん。ペアリングは後々でいいけどさ、伊織とお揃いの物も欲しいな~って思うよ♪」
「いや、昼飯がてら見に行こうぜ♡好きなの買ってやる♡」
「ん?いや、昼飯だけでいいけど……?」
「貴哉がそんな事言うから俺がすぐに欲しくなった♡」
「……そ、そうか!伊織も欲しくなったのか~!」
これはとんでもない事になったぞ!?
伊織の行動力は誰もが知っている。やると言ったらやる。そんな男だ。
俺は別に欲しくもねぇ指輪の為に伊織とそのまま駅に向かって電車で隣町まで行く事になった。
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