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1章 二学期中間テスト
せっかくだから保健室まで送ってあげようと思って
しおりを挟む伊織は教室まで送ってくれて、「また来るから」と言い残して自分の教室へ行った。
残された俺はなるべく周りに顔を見られないように自分の席へ向かう。マスクをしているせいかチラチラと見られた。
「貴哉どうしたのー?風邪でも引いたー?」
真っ先に気付いて声を掛けて来たのはやっぱり直登だった。数馬と席で話していたのを中断して、俺を見て来た。
「引いた。マジヤバいから話掛けないでくれ。移したくねぇから」
「辛そうだな。顔も浮腫んでるし、休めば良かったのに~」
「俺もう休めないんだって」
「体調悪いんだから大丈夫でしょ。玉山先生に言ってこようか?」
直登がそう言って、俺は頼もうかと考える。帰れるなら帰りたい。今はここにはいたくねぇから。
「ん、聞いて来てくれ」
「分かったー。数馬くん、貴哉に付いててあげて?何かあったらすぐ連絡ちょうだい」
「うん!」
直登に頼んで俺は数馬に見守られながら机に突っ伏した。風邪って信じてもらえたみたいだな。
このまま帰れたらいいのにな。
「貴哉、無理しないで?お水買って来ようか?」
「数馬……俺の顔ヤバい?」
「う、うん。とても辛そうだよ」
やっぱヤバいのか。
ふと俺は空の席を見てしまう。
まだ来てねぇみたいで、少しホッとした。
しばらく数馬と待ってると、直登が玉山を連れて戻って来た。
「秋山どうした?風邪って本当か?」
「めっちゃ辛い」
「熱はあるのか?もしインフルとか感染の恐れのある病気だった場合は、病院へ行って診断書を貰ってくれば出席停止扱いになるけど、ただの風邪だった場合は普通の欠席扱いになってしまうんだ。お前の場合本当にギリギリだから、もし頑張れそうなら保健室で休むなりして何とか出席した方がいいんだが」
「熱……」
やべ。熱はねぇよ。だって仮病だもん。
仕方ねぇ、今日一日耐えるか。
「多分ない。だから頑張ります」
「あ、秋山が敬語を使ってる!一度保健室へ行って熱があるか測るんだ!ただの風邪じゃなかったらマズイしな」
「え、でも今日俺の為にみんなが自己紹介やってくれんだろ?それ聞かなきゃ」
「そんなのは延期にすればいい。ほら行くぞ」
俺は玉山に連れられて保健室へ行く事になった。
まぁいいか。せっかくだし、保健室で少し寝かせてもらお。
保健室へ行く途中で、知ってる顔に会った。
二年の犬飼誠也だった。演劇部の裏方リーダーで、たまに話す奴。犬飼も俺に気付いて笑顔で近付いて来た。
「秋山じゃん!どした玉ちゃんとなんか歩いて!何かしたのか~?」
「コラ犬飼!なんかって何だなんかって!それと、今秋山は体調が悪いんだからあまりうるさくするな!」
「秋山が体調悪いぃ?珍しい事もあるんだな。あ、ねぇ玉ちゃん、演劇部の顧問に話があるんだ、今職員室入れねぇから玉ちゃん呼んで来てくれません?」
「あー、テスト前だからな。分かった。秋山先に保健室行っていてくれるか?後で見に行くから」
「おう」
玉山は犬飼に頼まれた用事を済ませに職員室へ行った。保健室はもうすぐそこだったから先に行って寝てようと思った。
すると、犬飼も付いてきた。
「何で付いてくるんだよ」
「せっかくだから保健室まで送ってあげようと思って」
「いらねぇよ。もう保健室見えてるだろ」
「なぁ本当に体調悪いのか?何で学校来ちゃったんだよ」
「俺出席日数ギリギリだからもう休めねぇんだよ」
「ぶはっ!何それ!そんな奴いんの!?」
「ここにいるだろうが!」
「てか元気そうじゃん。サボりたいから仮病だったりして?」
「お前はうるせぇなぁほんと」
俺が睨むと、ギョッとした顔をして覗き込んで来た。やべ、顔見られたか?
「なぁ目ぇ腫れてね?体調悪そうってか、泣き腫らした感じするけど」
「黙れ!俺は今日風邪なんだ!それ以上近付いたら移すぞ!」
「ああはいはい。秋山もいろいろあるのな。ゆっくり休めよ~」
俺が怒ると、犬飼は苦笑いしながら職員室の方へ消えて行った。この目、やっぱり分かる奴には分かるか。
俺は一人で保健室に入ってベッドへ直行する。保健室のおばちゃんもまだ来てないみたいだから、熱は玉山が来てから測ればいいや。
上履きを脱いでベッドに潜り込むとすぐに睡魔が襲って来た。あ、俺眠かったんだ……そりゃそうだよな。ろくに寝てねぇし、少し寝たら怠さもなくなるかも……
俺はそのまま玉山が来る前に眠りに落ちた。
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