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1章 二学期中間テスト
※ 一条がボラ部に?何で?
しおりを挟む※伊織side
朝、貴哉を教室まで送ってから自分の教室へ向かう。
どうやら俺の大事な貴哉に何かあったらしい。
朝、いつものように迎えに行ったらもう起きてた感じで、いきなり抱き付かれたんだ。もうその時点でおかしかった。寝起きの貴哉はすぐには起きないんだ。しばらく駄々を捏ねたり、怠そうにしばらくベッドに寝転がってたりなのに、自分から起きて俺に寄って来るなんて今までに無かったから、嬉しさ半分戸惑い半分って感じだった。
多分まともに眠れてねぇんだろうな。あと、泣いた後の顔してた。
昨日の貴哉は昔からの親友の野崎って奴と会ってたんだ。それまでは普通だった。野崎の連絡先聞いときゃ良かったな。そしたら昨日の様子とか聞けたのに。
夜に貴哉と連絡を取り合ってた時は普通に感じたかな。貴哉からただいまのメッセージが来たのは21時と少し遅い気もしたけど、昔馴染みの奴と会ってたし、連絡が遅れた可能性もあるからあまり気にしていなかった。
うーん、野崎と何かあったって考えるのが妥当か?他に貴哉があんな風になる原因ならあるにはあるけど、それは考えたくなかった。
考えたくない原因ってのは早川空だ。そいつは貴哉の元彼だから。
最近二人が関わってる様子なかったからそこまで注意して見てなかったけど、実際あの二人は同じクラスだし、俺のいない所で話したりしててもおかしくはない。
はぁ、貴哉にはあんま早川の話したくねぇんだけどな。だから朝も敢えて話題に出さなかったし。
俺と早川は貴哉を取り合ってたんだけど、もうあんな繰り返しはしたくねぇし、貴哉にも早川の前ではイチャつくなとか言われてるから触れないでいたんだ。
でも、もし今回貴哉の様子が変な原因が早川だったとしたら俺は触れずにはいられねぇだろうな。
何があったにしろ、貴哉をあんな風にしやがった原因だからな。
モヤモヤしつつ階段を上がっていると、一条紘夢が俺の教室の前の廊下にいるのが見えた。
一条は俺に気付くと笑顔で近寄って来た。
「いーくんおはよう♪あのさ、話があるんだけど少しいい?」
「どうした?」
「中間テストが終わったらボラ部に入部したいと思ってるんだけど、いいかな?いーくん部長だったよね?」
「え、一条がボラ部に?何で?」
これは驚いた。一条と言えば、元学校一の問題児と言われていて、俺と貴哉を停学にまで追い込んだ張本人だけど、今では今までの行いを反省して、髪も銀髪から黒髪に染め直し、持ち前のずば抜けた頭脳を生かして、困ってる人がいたら助けてあげてる聖人だ。
そんな一条がボラ部に入ってくれたらすげぇ助かるけど、理由が気になった。
「ボラ部って、困ってる人がいたら無償で手を貸すがモットーでしょ?それ、今の俺にピッタリだなぁって♪あと、メンバーが楽しそうだし、部活って青春っぽくて良いなぁって♪俺、何でもするから入部許可してくれないかなぁ?」
「そう言う理由なら大歓迎だけど、一条が入るって知ったらみんな驚くだろうな」
「やったー♪吉乃がいるから演劇部も考えたんだけど、正直演劇部の裏方って地味じゃん?ボラ部の方が役に立てそうだなぁって♪」
「演劇部のが華やかだろ。こっちは主に草むしりとか街のゴミ拾いとかだぞ。お坊ちゃんの一条に出来るのかぁ?」
「やるよ!どっちも初体験だけど、一生懸命やる!」
やる気に満ち溢れた顔で言われたら俺からはもう言う事はねぇな。他の部員達も一条を恨んでる奴いねぇし。
「頼りにしてるぜ♪顧問には俺から話しとくわ。後で入部届持って行くから」
「はーい♪待ってまーす♪」
明るく笑う一条は、前のような悪巧みをしている感じは一切無く、もう俺らと同じただの高校生にしか見えなかった。
まぁ俺から言わせりゃ一条を特別扱いしてた周りにも非があるけどな~。どんなに優秀な脳みそしてても所詮はまだ十数年しか生きてねぇガキだ。俺達と同じな。
ふと機嫌良く自分の教室へ向かうであろう一条を呼び止めた。
確か一条は貴哉の幼馴染かなんかで、貴哉の事を溺愛していた筈だ。初めはそんな一条にやきもちなんか焼いてたけど、今では一条にも恋人がいる。だから貴哉が一条と仲良くしてるのには目を瞑っているんだ。
ちょっと一条の頭脳を頼ってみるか?
「なぁ一条、入部試験とかしてみねぇ?どんな結果になっても入部は出来るってのが条件だ」
「……面白そうじゃん♡」
クルッと再び俺の方を振り向いた一条の表情は、少し懐かしい悪巧みをしていそうなそんな笑顔だった。
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