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1章 二学期中間テスト
今日俺は風邪引いたつもりで過ごす
しおりを挟む空と神社で話した次の日の朝、俺を迎えに来た伊織に寝巻きのまま真っ先に抱き付くと、驚きながらも抱き締め返してくれた。
本当は空が帰って一人になった時に会ってこうしたかった。でも、そんな事したら空と会ってたってバレるから一晩中我慢したんだ。
一人で部屋に篭って、泣いた。
多分眠れたのは朝方だと思う。もう覚えてねぇ。それからもあまり眠れなくて、気付いたら伊織が来てた。
「どうした貴哉ー♡今日は朝から……おい?貴哉?」
「伊織ぃ……俺もぉやだ……」
「何があったんだ?」
伊織はそのまま俺を抱き返してくれて、背中をさすってくれた。昨日の出来事を何も知らない伊織には、悪いなとは思ってる。もちろん空との事も話すつもりはない。本当の事を話せば楽になるのかとも思ったけど、絶対伊織は黙ってないから。
もう空とは関わらないって決めたんだ。
それが空の気持ちだから。
俺が何も言わずにぎゅーってすると、伊織は俺の頭をポンポンってして顔を見ようとして来た。
ひでぇ顔してんだろうな。一晩中泣いてたもんな俺……
そして俺の顔を見た伊織は険しい顔付きになって、肩をガシッと掴んで来た。
「貴哉、昨日野崎と何かあったのか?」
「違う……」
「んー、とりあえず学校行けそうか?休むとヤバいんだろ?」
「……行く」
「うし!んじゃ着替え手伝ってやる♪貴哉、落ち着いたら聞かせてな?」
「伊織っ」
俺の制服を取ろうとしたのか、俺から離れようとする伊織にしがみ付いてぎゅーっとすると、困ったように笑った。
こんな子供みてぇなダセェとこ見せたくなかった。でも今は伊織に甘えていたかった。
「めっちゃ可愛いな♡このまま押し倒しちゃいたいぐらいだけど、遅刻させたくねぇからな。頑張って学校行こう?」
そう言って優しくキスをしてくれた。
あー、学校なんか行きたくねぇ。
でも行かなきゃ。もう遅刻は出来ねぇ。
伊織に手伝ってもらいながら着替えを済ませて、下へ降りて顔を洗おうと洗面所の鏡の前に立つ。思った通りひでぇ顔してらぁ。
瞼が腫れてて目なんか半分しか開いてねぇし、顔も浮腫んでてまるで化け物だ。伊織の奴、良くこんな顔にキス出来たなって思う。
とりあえずマスクして誤魔化すか。身支度を済ませて伊織と家を出た。
「なぁ伊織、この目どうしよう……」
「家になら伊達メガネあるけど、今から戻る訳にもいかねぇし、とりあえず腫れが治まるの待つしかねぇよな。担任に体調悪いって言って保健室で休むか?」
あ、担任で思い出した。今日は俺の為にみんなが自己紹介するんだった。昨日までは楽しみだったけど、今はそんなのどうでも良かった。
とにかく学校、特に自分の教室に行きたくねぇ。空がいるから。同じ空間にさえいるのが今は嫌だった。
「分かった。今日俺は風邪引いたつもりで過ごす。誰とも喋らずに、一人で過ごす……そう、俺は一人……」
「本当に大丈夫か?休み時間毎に会いに行くから、それまで席で寝てな?」
「昼休みだけでいいよ。他の休み時間短けぇし、階も違ぇし、お前が大変だ」
「貴哉に会えるなら全然苦じゃねぇけど?てか貴哉に目立つからあんま来るなって言われてるから遠慮してるだけで、俺は毎時間会いたいと思ってるぜ♡」
「うう……伊織ぃ」
確かに俺が言ったんだ。空に見せ付けるような事はしたくなかったから、俺を迎えに来たがる伊織を来させないようにしていた。
でも、今は伊織に会いたいって言われて安心していた。ずっと側にいて欲しいって思った。
「理由は分からねぇけど、貴哉が弱ってんのは分かるからな。俺にして欲しい事あったら何でも言えよ。全部叶えてやるから」
「……ごめん。伊織……」
「いいって♪」
理由を話せなくて申し訳なくて謝ると、伊織は優しく笑ってくれた。
やっぱり話すべきか……伊織なら分かってくれるかな……もし怒らせて離れていかれたらそれは嫌だ。
ああ、俺ってズリィなぁ。
自分がされて嫌な事はする癖にさ、本当俺って何でこんなん何だろ……
いつもとは違う怠さを感じながら伊織と学校へ向かって歩いた。
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