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1章 二学期中間テスト
何!?そりゃ茶化さなくちゃだな!
しおりを挟む授業が始まる直前で教室へ戻ると、後ろの席の直登に職員室へ呼ばれた理由を聞かれた。必然的に隣にいる数馬も聞いてくる事になる。
俺は二人にあらかた説明すると、可哀想にという顔をされた。
「でも、教頭先生って良い人だから、きっと大丈夫だよ。俺も第二会議室使ってた時、たまに見に来てくれてたけど、いつも優しくしてくれたんだ」
「学年主任じゃなくて良かったじゃん。あの人うるさいから」
「それな!俺もあいつだけは無理だわ」
ニヤニヤしながら直登に言われて学年主任を思い出す。バーコードみてぇな頭してて、俺を見つけるとゴミでも見るかのような顔して文句言ってくる一年の学年主任。確か鈴木とか呼ばれてたな?
良く俺が玉ちゃんに職員室に呼び出されてた時、たまにバーコードも説教して来てたんだ。バーコードの説教は玉ちゃんの二倍長ぇんだ。そして俺に対して容赦なく暴言を吐いて来るおっさん。
最近は玉ちゃんに呼び出される事が無かったからバーコードにも会わなくて済んでるから平和だった。
「それと、桐原さんも一緒なら安心だ。何かあったら助けてもらえるよな」
数馬がそう言って思い出す。確かに、一人で朝早くあの隅っこの教室に行くよりはマシだよな。
伊織って先生達からも一目置かれてるみてぇだし、頼りになるからそこは良かったかもな。
「貴哉の進級の件は、今の生徒会長が引退したら教頭先生が引き継ぐのか~。正直次の生徒会長に引き継がれなくて良かったと思うよー?」
「え、何で?」
直登に言われて首を捻る。俺的にはどっちでも良かったけど、てかそもそも次の生徒会長って誰だ?もう決まったのか?
「選挙がこれから行われるけど、ほぼ確定でしょ。前田侑士。二年で生徒会会計やってる優等生くんだよ。まぁ貴哉は今の生徒会長も知らなかったぐらいだし知らなくて当然か」
「全然知らねー。そいつが次の生徒会長になるのか」
「一応選挙はやるみたいだけど、今の神凪生徒会長の推薦だから確定してるようなものだよ。でもね、前田さんは神凪さんの仕込みだか知らないけど、かなりヤバいらしいよ」
「直登、どうヤバいの?」
「お前って本当そういうの詳しいよな~」
「これは噂なんだけど、来年からクラスが特進、一般、特別の三つに分かれるらしいんだ。特進と特別は一クラスとかで、ほとんどの生徒が一般になると思うけど、これを提案してたのが神凪さんと前田さんなんだよ」
「へー、そうだったんだ~」
「特進と特別って何?どう違うんだよ?」
「特進は普通より勉強したい人向けだね。一流大学目指してる人とかがなるんじゃない?特別は俺にも良く分からないけど、何かに特化してるとは思うんだよね~」
「でも俺達は一般だろうから関係ない話だね」
「そうだね~。春くん辺りは特進行きそうだけどね~」
「戸塚か、あいつ最近良く教室からいなくなるよな。前はずっと机で本読んでたのに」
「好きな子でも出来たんじゃない?」
「何!?そりゃ茶化さなくちゃだな!」
「やめておきなって。春くんは春くんで好きにやらせようって」
久しぶりに鉄仮面の浮いた話が聞けると思ってテンション上がったけど、直登に止められた。
あいつを茶化した所で言い負かされて終わるに決まってるけどな。
新しい生徒会長になる奴の話も、来年からクラスが三つの種類に分かれるかもしれない話も、今の俺にとっちゃ関係ねぇ話だな。
とりあえず今の俺は中間テストをやっつけなくちゃなー!
そんな話をしてたら授業が始まる鐘が鳴って担当の先生も入って来た。けど、空がまだ来ていなかった。
俺は球技大会後から特に空と話す事なく過ごしていた。向こうも同じで、たまに目が合っても他のクラスメイト同様の対応をされて終わる。
もうそれでもいいやって思ってやってってるけど、こうして席にいるかいないかはつい確認しちまう。
この確認も無くなったら俺と空は本当になにも無くなるんかな。これで良かったんだ。今は自分にそう言い聞かせて過ごすしかなかった。
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