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1章
テニス少年?俺の友達ぃ?
しおりを挟む朝から俺は学校の花壇で草をむしっていた。
なんでかって?ごんちゃんに頼まれたからだよ!
ごんちゃんって言うのはこの学校の教頭の事で、俺と伊織は少し前にとある問題を起こしちまって、謹慎を喰らった事がある。そん時の罰として月曜の朝に特別授業を受けてるんだ。
そこでごんちゃんに頼まれたのが、三年の農業ボーイ、渡辺が管理してる花壇の世話を手伝ってくれってやつだった。
クソ面倒だけど、ごんちゃんに言われたらやるしかねぇ。不幸中の幸いなのが、毎朝じゃなくていいって事。
「貴哉~、こっちは終わったよ~」
「おーそんじゃ抜いた草捨てて教室行くかー」
「俺がやるから二人は先に行けよ」
俺が抜き散らかした雑草共をビニール袋に入れてる空。俺を毎朝迎えに来てる空は巻き添えだ。
そして同じく罰を受けてる伊織は年上らしい素晴らしい事を言ってくれた。
「まじ?んじゃ頼んじゃおっかな~♪」
「お願いします」
空が集めた雑草がたっぷり入った袋を渡すと、伊織はニコッと笑って鞄と一緒に担いだ。
ここで金髪のひょろっとした縦長の男が現れて、俺のバッグを拾って渡してくれた。
先月イメチェンしてちょっと人気の上がった桃山だ。今日は上に指定のブレザーを羽織り、中には黒いセーターを着ていた。今登校して来たのか黒いリュックを背負っていた。
「草むしりご苦労さん♪ほい♪」
「お、サンキュー」
自分のショルダーバッグを受け取りながらつい桃山の顔を見ちまう。
短くした金髪に、相変わらず綺麗な切れ長の目。そしてマスクを取って露わになった恐ろしく美しく整った顔面。右目が隠れるぐらい長い前髪も切って、髪色も明るくなって華やかになったから大分印象も違う。黙っていれば老若男女誰でも惚れるんじゃないかってぐらいの美形。
背は高いけど、かなり痩せてるからちょっと筋肉を付ければ完璧だと思う。
はー、マジイケメンだわ……
「何見惚れてんだ♪可愛い子ちゃんめ♪」
「か、可愛い子ちゃん……」
「おい、何貴哉を口説いてんだ金髪サイコ野郎」
「いーくんてばやきもちー?♡俺が他の人可愛い言ったらやだー?♡」
俺をドキッとさせた桃山を見て伊織が不機嫌そうに言うと、桃山は俺から離れて俺の周りをくるくる回り始めた。
見た目は変わったけど、中身はやっぱり桃山だ。
伊織に懐く桃山が、パッとこちらを見て思い出したかのように話し始めた。
「そうそう。さっきコンビニのとこでテニス少年見たんだわ。ほら貴哉のお友達の」
「テニス少年?俺の友達ぃ?」
テニスと言えば茜か?と思ったけど、桃山が茜の事をそんな風に呼ぶ筈がないし、茜を見掛けてもわざわざ俺に報告なんかしねぇだろ。
誰の事だ?
「ほら~、球技大会前に一緒に練習した奴いんじゃん。茶髪の」
「あ、藤野の事か!」
「ああココか」
藤野とはうちのクラスで唯一テニス経験者だったから球技大会でペアを組んだ事のある奴だ。
見た目は今時の男子高校生で、クラスでは陽キャグループにいる明るくて良い奴。隠れゲイで、学校では絶対にバレたく無いらしく、俺しか知らない秘密。
空が「ココ」って呼ぶのは、名前が心って言うからだ。ココ、ココロがあだ名らしい。
「そうそう。藤野~。なんか友達っぽい奴といたんだけど、ちょっと険悪なムードだったんだ。横通ったら、次もよろしくとかもうこれ以上は無理とか揉めてるっぽかったんだよね~」
「ふーん。痴話喧嘩じゃね?」
「相手はどんな人でした?」
「普通?多分一年。俺がチラッと見たら目ぇ合ってどっか行っちゃった」
恐いから逃げたんだろうな。
んでもそれだけ聞いたら別に「へーそうなんだ」ぐらいにしか思わねぇけどな。
何でわざわざ俺達に言って来たんだ?
藤野とテニスやった事があるからか?
その後特に話が広がる訳でもなく、伊織と桃山はゴミ捨て場へ、俺と空は教室へ向かった。
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