112 / 178
1章 写真ばら撒き事件
本当は学校辞めたくねぇんじゃねぇの?
しおりを挟む紘夢んちのパーティー終了後、みんなで片付けをしてから俺達はそれぞれ帰る事にした。
的羽が車で送って行く事になったからまずは電車組を駅まで送って行ってる所だ。
俺は的羽が戻って来る間、紘夢と二人で廊下を歩いていた。
向かうのは紘夢の部屋。紘夢は何も無いと言うが、俺が見たいって言ったんだ。
「部屋って言っても適当な部屋を使ってるだけだし、そこでは寝るぐらいだよ?」
「まぁいいから」
「ここだよ」
その部屋は二階の奥で、中に入ると一番最初に目に入って来たのは壁に貼られた大きな世界地図だった。
後は本当に何も無い、シンプルな部屋。ベッドと簡易的な机と椅子だけ。机にはノートパソコンが置かれているだけだった。
「すげぇな!これ地球全部だろ!?」
「そうだよ♪凄いよねぇ。こんなに広いんだもん♪」
「…………」
「俺ね、貴ちゃんと初めて会った頃の夢が世界一周する事だったんだ。いろんな国へ行っていろんな文化に触れて、日本では味わえない体験をしたいとずっとワクワクして過ごしていたんだ。毎日勉強勉強で窮屈だった俺にとってその夢だけが支えだった。いつか世界に出た時の為に勉強しておこうなんて無理矢理考えた事もあったな」
「へー、でけぇ夢だな」
「どうやら大き過ぎたみたいでさ、見事に父さんに反対されたよ。ろくでもない事考えるんじゃないって言われた。まだ小学校上がったばかりの子供に向かってだよ?その日から俺の復讐は始まってたよ」
「……紘夢の父ちゃんは、紘夢が遠くへ行くのが嫌だったんじゃねぇの?」
「だろうね。跡継ぎだったからね俺が」
「捻くれてんなー。で?自由になった今、夢はどーすんだ?」
そんな話、俺から言わせてみりゃ親が子供を心配してるだけだ。まだガキだったなら尚更だ。変な知恵付けて勝手にどこかへ行ってしまうかもしれねぇし、大きくなって本当にいなくなったらそりゃ寂しいだろ。
だからさ、紘夢も紘夢の父ちゃんとちゃんと話し合えばいいのになーって思う。
「叶えるつもりだよ。出来たら貴ちゃんとしたい。一緒に来てくれないかな?」
「楽しそうだけど、俺は遠慮する。俺頭悪ぃから他の国でやってける気がしねぇもん」
「俺がいるから大丈夫だよ。二人で足りない部分を補い合えばきっと楽しいよ」
「悪ぃな。俺はお前とは行けねぇ」
「……貴ちゃん」
「なぁ、お前学校辞めんのか?」
「……うん」
紘夢の部屋に来たがったのは本当はこの話をする為だ。付いて来そうだった空と伊織にはちゃんと言ってある。二人切りで大事な話をしたいと。
他に誰かいたら真面目に答えてくれなそうだからな。
「辞めるなって言ったら?」
「…………」
「本当は学校辞めたくねぇんじゃねぇの?」
「どうしてそう思うの?」
紘夢は薄く笑って聞いて来た。
だってさ、そんなの今日のお前見てたら分かるよ。みんなと過ごしててすげぇ楽しそうに笑ってたじゃん。
初めの頃みたいな何を考えてるか分からないような笑顔じゃなくて、本当に心から楽しくて笑ってたじゃん。
「さぁな。でも、俺はお前に辞めて欲しくないと思ってる。だから辞めたくないんなら辞めんな」
「貴ちゃんはどうして俺に辞めて欲しく無いの?学年違うし、学校では関わる事もあまりないじゃん」
「そうだけどよ、なんか中途半端じゃん?辞めたい理由があんなら別に構わねぇけど。どうせみんなに悪い事したから~って理由だろ?お前に逃げんなって言いてぇの」
「逃げる?俺が?」
「俺は母ちゃんに怒られるから退学だけはしないようにすんだ。勉強嫌いだけど、自分からも辞めねぇ。母ちゃんこえーからな。だから紘夢も逃げんなよ。嫌な事あっても我慢して卒業はしろ」
「……逃げ、なのかな?」
「俺からしたら逃げだ。悪い事したからなんだってんだ。んなの謝ったんだし、次に同じ事しなきゃいいんだろ?お前が学校を辞めたくないならならな!」
「…………」
そこが大事だ。「辞める」のと「辞めたい」んじゃ意味が変わってくる。
もし辞めたいなら俺はこれ以上は止められねぇ。紘夢にはやりたい事やって欲しいからな。
紘夢は少し考えてるように視線を俺から外した。
そして困ったように笑って言った。
「はは、やっぱり貴ちゃんは面白いや。全然俺の考え通りにいかないや」
「あ?当たりめぇだろ」
「もし、俺が辞めたくないって言ったら貴ちゃんは喜んでくれる?」
「そりゃ勿論」
「それからー、辞めないで卒業までに俺に何かあったら助けてくれる?」
「当たり前だ!俺ダチの事は放っとかねぇから安心しな♪何かあったら飛んでってやるよ」
「……うん。ありがとう」
俺がニカっと笑うと、紘夢は安心したように笑った。
そして俺に近付いて来て、手を握って来た。
「貴ちゃん。俺約束するよ。何があっても学校を辞めない。ちゃんと卒業するから」
「本当か!?あ!俺に何かあっても助けてくれよな!特に勉強面とか!」
「あはは♪任せてよ」
こりゃ俺のが助けてもらう事多そうだな。
でもとりあえず紘夢が学校辞めるってのは撤回してくれたし、良かったかな。
こうやってちゃんと話せば父ちゃんも分かってくれると思うんだけどなぁ。
親子だからな。
10
あなたにおすすめの小説
ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜
キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」
(いえ、ただの生存戦略です!!)
【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】
生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。
ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。
のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。
「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。
「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。
「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」
なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!?
勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。
捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!?
「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」
ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます!
元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!
平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています
七瀬
BL
あらすじ
春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。
政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。
****
初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は未定
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
・本格的に嫌われ始めるのは2章から
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる