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第19話『双子のパパになる』
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村の外はすっかり雪景色である。
ミミが妊娠してから10ヶ月ちょっと。
出産を控えていたミミは、
村に作った出産用の施設に
宿泊していた。
ミミの出産に立ち会うのは
助産の経験があるユミルの元メイド、
サーシャが立ち会っていた。
(気付けば父親か。
何というかあっと言う間だった。
事前にある程度の心構えを
していたものの、いざとなると
結構ビビるものだな……。
魔王ユミルのお産に立ち会った
経験がある元メイドのサーシャ
さんが産婆役を買って出てくれた
のは本当助かったな)
サトシはミミの出産の立会いを
希望したのだが、サーシャからの
非常に強い制止があり、やむなく
廊下で待つことになった。
サーシャ曰く、出産の場には
男は直接たちあわない方が
良いとのことでサトシは部屋の外の
廊下をまるでクマのように
うろうろせわしなく歩くばかりだった。
サーシャいわく無理をして
妻の出産に無理して立ち会った男が、
出産のあまりの壮絶さに不能になり
結果としてその後の夫婦生活が
うまくいかなる例があまりに多いらしい。
数々の修羅場をくぐり抜けてきた
歴戦の猛者。肝の座った魔王軍の
男ですらそうなってしまうのだから
やはり、出産の場に男が立ち会う
というのは余程のことなのであろう。
(男の俺には想像もできないけど、
出産っていうのはそれほどの
大変なことなのだろうな。
少し残念ではあるけど、ここは
おとなしくプロの意見に従おう)
「出産は無事に終わりました
サトシさんどうぞ部屋に
入って下さい」
サトシはゆっくりと
ドアのノブを開ける。
ミミはタオルに巻かれた
赤子を抱いていた。
「おおっ!……双子か」
ミミから産まれたのは双子。
金髪銀眼の男の子と、
銀髪金眼の女の子である。
「……サトシ。
妾、頑張ったのじゃ」
「ありがとう」
サトシは気の効いた台詞も
考えていたのだったが
結局は感極まり『ありがとう』
の一言しか言葉にすることは
できなかった。
「サトシさん、
ご安心ください、
母子ともに無事です!」
サトシは産婆をしてくれた
サーシャに一礼をして
双子の男の子、女の子そして
ミミも無事であることを確認する。
(俺が親か。まだ実感がない。
というより現実感がない。
ふわふわと浮いた感じだ。
いやいや。それでは駄目だ。
生まれた双子とミミのためにも
より一層頑張らないとな)
サトシは自分を発奮する
ために頬を両手のひらで
ぴしゃりと叩く。
「サトシよ。産まれたばかりの
この子らを抱いてやってくれぬか?」
「もちろんだ。
でも、まだ首もすわっていない
子を二人同時に抱えるのは怖いから
一人づつ抱かせてくれ」
サトシはタオルにくるまれた
娘と、息子を交互に抱きしめる。
サトシにとってはとても
かわいらしい顔に見えた。
「ミミ、子供の名前は
一緒に決めたあの
名前で良かったか」
「もちろんなのじゃ」
息子の名前はユドラ
娘の名前はセフィ。
サトシとミミの二人で
決めた名前である。
「ユドラちゃん、
セフィちゃん、
パパでしゅよ~!」
サトシは赤ちゃん言葉で
話しかける。双子は
小さな手でサトシの
指先をを掴む。
(ほう。赤ちゃんって、
思ったより握力が強いんだな)
サトシとミミの二人で
話し合った結果、子供の名前は、
奇をてらわずにこの世界の
人間として生活するのに
支障がない名前を付けることにした。
それが、ユドラとセフィである。
地球で言うところの名前の画数的
なところも考慮した名前だ。
二人とも、世界樹の別名である
ユグドラシル、セフィロト
の名前を拝借した。
「お子さんたちは母親似ですね
きっとカッコいい子、
かわいい子に育ちますよ」
サトシは暗にサーシャさんに
自分がディスられてるのかと
思ったが、まぁ、客観的評価では
妻に似ているというのが褒め言葉
なのだろうなと受け取った。
「そうかの? この子たちの
指先のあたりとかサトシに
似ている気がするがの?」
(まあ本音を言うと二人は
俺ではなく、ミミの方に
似てくれていたのは良かった。
客観的に見れば、整った
顔のミミと比べると
俺はThe・土属性っぽい
無個性な顔だからな。
贅沢をいえば、男の子の方の
身長は130cmの母親ではなく
身長180cmの俺に似た方が
いいのだろうけど。まぁ、それは
育ってからのお楽しみだな)
サトシは数秒の間に
いろいろと考えたあと、
たった一つのことを祈った。
「二人とも健康に育ちますすように」
「妾の望みもそれだけなのじゃ」
生前のサトシは名目上の
仏教徒であるが熱心な仏教徒
というわけではなかった。
お盆に墓参りと墓磨きを
手伝って仏壇に線香を
そなえていたくらいのものである。
そんなサトシが祈ったのが
何に対してなのかは自分でも
理解していない。だが、
手をあわせて祈るときの気持ちは
純粋な何者かへの祈りであった。
サトシとミミは、じっと
産まれたばかりの双子を
眺めているとサーシャが
声をかける。
「サトシさん、
産まれたばかりのお子さんを
もっと見ていたという気持ちは
分かりますが、この後ミミさんの
産後の処置がありますので、
サトシさんは別室でゆっくり
休んでいてください。サトシさんも
付き添いの徹夜。お疲れさまでした。」
サトシは長居をしても迷惑に
なるのだろうとミミのいた病室
から立ち去り、家のソファーで
ぼんやりと考え事をする。
「世界樹であるミミと人間である
俺との間の子は種族的には
どうなるのだろうか?」
過去の文献のなかにも
世界樹と人族が子を成したの
例は残っておらず、
世界が成り立ってからの
幾億の叡智を継承している
ミミですら分からないらしい。
「瘴気をマナに変換し世界を
維持しなければいけないという
役割は俺の子供にも引き継がれる
のだろうか」
「この世界では異なる種族間で
子孫を持つことは珍しいこと
ではないとは知っていたが、
聞いていた前情報と随分と違うな」
亜人種と人族の子供は
産まれたばかりの姿は
通常は亜人種の親の
影響が色濃く受け継がれる。
(でも、ユドラもセフィも
容姿は完全に人間の赤子
とかわらなかったよな)
ソファーに深く座り、
腕を組んで目を瞑りながら
サトシはじっと考える。
「俺の娘のセフィも息子のユドラも
人族の特徴を色濃く受け継いでいる。
これはどういうことだろうか?」
ミミからの事前の情報によると
いままで多種族と子を成した
世界樹の子供は、世界樹の
特性が優先的に
子供に受け継がれるらしい。
よって産まれてくる子供は
ドライアドなどのような
植物系の亜人と同じように
苗木として産まれる
のが一般的とのことであった。
「俺が知っている範囲だと
オークと人族の子供は
緑色の肌。エルフと
人族の子供は長耳。
ヴァンパイアと人族の
子供には白い肌と赤い目
そして吸血用の牙。
そんな感じだったかな」
人族と亜人種のハーフの場合は
亜人種の特徴が優先的に
継承されるのが一般的である。
だが、ミミとサトシの子供には
その種族に固有の特徴がない。
「まあ。細かいことを
考えても仕方ねぇか。
父親である俺が不安な
そぶりをみせれば、
妻であるミミも不安になる。
俺の大して働かない頭で
考えていても仕方がない。
できることは妻や、周りに
堂々とした背中を示そう」
サトシはソファーの上で
いろいろと考えた結果、
あまり深く考えないことに決めた。
「種族が人間だろうが、
世界樹だろうが俺の子だ。
なのであれば俺としてはできる限り
のことを子供にしてあげるだけだ」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
ミミは数日の入院を経て
自宅に帰ってきた。
「ただいまなのじゃ」
「おかえり」
産後のミミは体調上の
大きな問題はなかった。
出産時に双子であることから
難産が予想されていたが、
ユミルの母の出産に立ち会った
経験もあるサーシャが産婆役を
こなしてくれたので、ミミは
産前も産後も快適な環境で
出産に臨むことができた。
(ミミが言っていた事だが、
サーシャさんがミミの
おなかの子が双子であることに
先に気づいて、難産が予想
されたので会陰切開を
したんだったな。痛そうな話だ)
会陰切開が施された部分は
トイレに行く時にヒリヒリ痛む
そうであるが、生活に支障が
でるほどの痛みではないようで
なによりである。
サトシからも"世界樹の葉"を使えば
その傷もすぐにきれいに治るのでは
と言ったのだが、
ミミにとっては出産の実感を
忘れたくないとのことであえて、
縫合と自然治癒に任せることになった。
「ミミ、今日は何か
食べたいものがあるか?」
「サトシが作るもので
あればなんでも良いのじゃ」
ミミは双子の子供をあやし
ながら応える。
「それじゃあ。元気が出るような
料理を作ろう。母乳に影響が
出るそうだからあんまり強い
香辛料とかカフェインとかが
あんまり含まれていない
料理がいいんだろうな」
「そうしてくれると助かるの
おっぱい飲んだ時に
まずかったら泣かれるからの」
「そうだなあ。それじゃあ、
栄養たっぷりで美味しい
村の畑で採れた野菜で作った
ざく切り野菜のポトフでも
作ろうか。体も温まるし
栄養もたっぷりだ」
「たすかるのじゃ。
サトシ愛してるのじゃぁ~」
「ミートゥーだ!」
そう言うとサトシは
キッチンに向かう。
出産後のミミはちょっとだけ
情緒不安定なところがあるようだ。
あくまで冗談の範疇だが
サトシに対して当たるような
事が何度かあった。
ベビーブルーである。
産後うつとも言い、この期間は
情緒不安定になるのが一般的らしい。
サトシは、村長としての仕事を
こなしたあとは極力はミミと双子と
一緒に居れるようと決意した。
「まあ。ぶっちゃけ俺が休んでても
いざとなればユミルが代理として
やってくれるから大丈夫だからな。
それに、ユミルさんから
"我の出産の時はサトシさんに
我の仕事を手伝って欲しい"
って言われているからお互い様か。
って、ユミルさんの仕事を俺が
こなすのは割と無理ゲーなのだがなっ!
文系脳で俺めっちゃ数字に弱いしなっ!」
有能なユミルに感謝しつつも、
ユミルの子が産まれた時の
代理業務の事を考えて、
思わずふぅっとため息をつく。
「しばらくは村の仕事の時間を減らして、
家族と触れ合う時間を増やそう。
なぁに。もともとがスローライフ
希望でわざわざ辺境まできたんだから、
そんなにひっちゃきになってはたらく
必要もないのだ。あくまで家庭の
幸せがあってこそのスローライフ生活だ!」
サトシはキッチンから
鶏肉入りのポトフと
ほかほかのご飯を
ミミのもとに運んでいく。
「おまたせー。アツアツのポトフだぞー」
「わーい。いただきますなのじゃー」
=================
【辺境村の開拓状況】
◆住民
土属性:1名
世界樹:1名
ユドラ:1名 ←New!
セフィ:1名 ←New!
ドワーフ:48名
魚人族《ディープワン》:39名
魔王:1名
雪女:38名
四天王:1(2名)
メイド:1名
ゴーレム:たくさん
◇特産品
ケチャップ
あいすくりいむ
ワイン(ドワーフ族作)
ココア
★ペット
混沌の翼竜:1匹
古代の翼竜:1匹
☆財政状況
大金貨:1700万枚
ミミが妊娠してから10ヶ月ちょっと。
出産を控えていたミミは、
村に作った出産用の施設に
宿泊していた。
ミミの出産に立ち会うのは
助産の経験があるユミルの元メイド、
サーシャが立ち会っていた。
(気付けば父親か。
何というかあっと言う間だった。
事前にある程度の心構えを
していたものの、いざとなると
結構ビビるものだな……。
魔王ユミルのお産に立ち会った
経験がある元メイドのサーシャ
さんが産婆役を買って出てくれた
のは本当助かったな)
サトシはミミの出産の立会いを
希望したのだが、サーシャからの
非常に強い制止があり、やむなく
廊下で待つことになった。
サーシャ曰く、出産の場には
男は直接たちあわない方が
良いとのことでサトシは部屋の外の
廊下をまるでクマのように
うろうろせわしなく歩くばかりだった。
サーシャいわく無理をして
妻の出産に無理して立ち会った男が、
出産のあまりの壮絶さに不能になり
結果としてその後の夫婦生活が
うまくいかなる例があまりに多いらしい。
数々の修羅場をくぐり抜けてきた
歴戦の猛者。肝の座った魔王軍の
男ですらそうなってしまうのだから
やはり、出産の場に男が立ち会う
というのは余程のことなのであろう。
(男の俺には想像もできないけど、
出産っていうのはそれほどの
大変なことなのだろうな。
少し残念ではあるけど、ここは
おとなしくプロの意見に従おう)
「出産は無事に終わりました
サトシさんどうぞ部屋に
入って下さい」
サトシはゆっくりと
ドアのノブを開ける。
ミミはタオルに巻かれた
赤子を抱いていた。
「おおっ!……双子か」
ミミから産まれたのは双子。
金髪銀眼の男の子と、
銀髪金眼の女の子である。
「……サトシ。
妾、頑張ったのじゃ」
「ありがとう」
サトシは気の効いた台詞も
考えていたのだったが
結局は感極まり『ありがとう』
の一言しか言葉にすることは
できなかった。
「サトシさん、
ご安心ください、
母子ともに無事です!」
サトシは産婆をしてくれた
サーシャに一礼をして
双子の男の子、女の子そして
ミミも無事であることを確認する。
(俺が親か。まだ実感がない。
というより現実感がない。
ふわふわと浮いた感じだ。
いやいや。それでは駄目だ。
生まれた双子とミミのためにも
より一層頑張らないとな)
サトシは自分を発奮する
ために頬を両手のひらで
ぴしゃりと叩く。
「サトシよ。産まれたばかりの
この子らを抱いてやってくれぬか?」
「もちろんだ。
でも、まだ首もすわっていない
子を二人同時に抱えるのは怖いから
一人づつ抱かせてくれ」
サトシはタオルにくるまれた
娘と、息子を交互に抱きしめる。
サトシにとってはとても
かわいらしい顔に見えた。
「ミミ、子供の名前は
一緒に決めたあの
名前で良かったか」
「もちろんなのじゃ」
息子の名前はユドラ
娘の名前はセフィ。
サトシとミミの二人で
決めた名前である。
「ユドラちゃん、
セフィちゃん、
パパでしゅよ~!」
サトシは赤ちゃん言葉で
話しかける。双子は
小さな手でサトシの
指先をを掴む。
(ほう。赤ちゃんって、
思ったより握力が強いんだな)
サトシとミミの二人で
話し合った結果、子供の名前は、
奇をてらわずにこの世界の
人間として生活するのに
支障がない名前を付けることにした。
それが、ユドラとセフィである。
地球で言うところの名前の画数的
なところも考慮した名前だ。
二人とも、世界樹の別名である
ユグドラシル、セフィロト
の名前を拝借した。
「お子さんたちは母親似ですね
きっとカッコいい子、
かわいい子に育ちますよ」
サトシは暗にサーシャさんに
自分がディスられてるのかと
思ったが、まぁ、客観的評価では
妻に似ているというのが褒め言葉
なのだろうなと受け取った。
「そうかの? この子たちの
指先のあたりとかサトシに
似ている気がするがの?」
(まあ本音を言うと二人は
俺ではなく、ミミの方に
似てくれていたのは良かった。
客観的に見れば、整った
顔のミミと比べると
俺はThe・土属性っぽい
無個性な顔だからな。
贅沢をいえば、男の子の方の
身長は130cmの母親ではなく
身長180cmの俺に似た方が
いいのだろうけど。まぁ、それは
育ってからのお楽しみだな)
サトシは数秒の間に
いろいろと考えたあと、
たった一つのことを祈った。
「二人とも健康に育ちますすように」
「妾の望みもそれだけなのじゃ」
生前のサトシは名目上の
仏教徒であるが熱心な仏教徒
というわけではなかった。
お盆に墓参りと墓磨きを
手伝って仏壇に線香を
そなえていたくらいのものである。
そんなサトシが祈ったのが
何に対してなのかは自分でも
理解していない。だが、
手をあわせて祈るときの気持ちは
純粋な何者かへの祈りであった。
サトシとミミは、じっと
産まれたばかりの双子を
眺めているとサーシャが
声をかける。
「サトシさん、
産まれたばかりのお子さんを
もっと見ていたという気持ちは
分かりますが、この後ミミさんの
産後の処置がありますので、
サトシさんは別室でゆっくり
休んでいてください。サトシさんも
付き添いの徹夜。お疲れさまでした。」
サトシは長居をしても迷惑に
なるのだろうとミミのいた病室
から立ち去り、家のソファーで
ぼんやりと考え事をする。
「世界樹であるミミと人間である
俺との間の子は種族的には
どうなるのだろうか?」
過去の文献のなかにも
世界樹と人族が子を成したの
例は残っておらず、
世界が成り立ってからの
幾億の叡智を継承している
ミミですら分からないらしい。
「瘴気をマナに変換し世界を
維持しなければいけないという
役割は俺の子供にも引き継がれる
のだろうか」
「この世界では異なる種族間で
子孫を持つことは珍しいこと
ではないとは知っていたが、
聞いていた前情報と随分と違うな」
亜人種と人族の子供は
産まれたばかりの姿は
通常は亜人種の親の
影響が色濃く受け継がれる。
(でも、ユドラもセフィも
容姿は完全に人間の赤子
とかわらなかったよな)
ソファーに深く座り、
腕を組んで目を瞑りながら
サトシはじっと考える。
「俺の娘のセフィも息子のユドラも
人族の特徴を色濃く受け継いでいる。
これはどういうことだろうか?」
ミミからの事前の情報によると
いままで多種族と子を成した
世界樹の子供は、世界樹の
特性が優先的に
子供に受け継がれるらしい。
よって産まれてくる子供は
ドライアドなどのような
植物系の亜人と同じように
苗木として産まれる
のが一般的とのことであった。
「俺が知っている範囲だと
オークと人族の子供は
緑色の肌。エルフと
人族の子供は長耳。
ヴァンパイアと人族の
子供には白い肌と赤い目
そして吸血用の牙。
そんな感じだったかな」
人族と亜人種のハーフの場合は
亜人種の特徴が優先的に
継承されるのが一般的である。
だが、ミミとサトシの子供には
その種族に固有の特徴がない。
「まあ。細かいことを
考えても仕方ねぇか。
父親である俺が不安な
そぶりをみせれば、
妻であるミミも不安になる。
俺の大して働かない頭で
考えていても仕方がない。
できることは妻や、周りに
堂々とした背中を示そう」
サトシはソファーの上で
いろいろと考えた結果、
あまり深く考えないことに決めた。
「種族が人間だろうが、
世界樹だろうが俺の子だ。
なのであれば俺としてはできる限り
のことを子供にしてあげるだけだ」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
ミミは数日の入院を経て
自宅に帰ってきた。
「ただいまなのじゃ」
「おかえり」
産後のミミは体調上の
大きな問題はなかった。
出産時に双子であることから
難産が予想されていたが、
ユミルの母の出産に立ち会った
経験もあるサーシャが産婆役を
こなしてくれたので、ミミは
産前も産後も快適な環境で
出産に臨むことができた。
(ミミが言っていた事だが、
サーシャさんがミミの
おなかの子が双子であることに
先に気づいて、難産が予想
されたので会陰切開を
したんだったな。痛そうな話だ)
会陰切開が施された部分は
トイレに行く時にヒリヒリ痛む
そうであるが、生活に支障が
でるほどの痛みではないようで
なによりである。
サトシからも"世界樹の葉"を使えば
その傷もすぐにきれいに治るのでは
と言ったのだが、
ミミにとっては出産の実感を
忘れたくないとのことであえて、
縫合と自然治癒に任せることになった。
「ミミ、今日は何か
食べたいものがあるか?」
「サトシが作るもので
あればなんでも良いのじゃ」
ミミは双子の子供をあやし
ながら応える。
「それじゃあ。元気が出るような
料理を作ろう。母乳に影響が
出るそうだからあんまり強い
香辛料とかカフェインとかが
あんまり含まれていない
料理がいいんだろうな」
「そうしてくれると助かるの
おっぱい飲んだ時に
まずかったら泣かれるからの」
「そうだなあ。それじゃあ、
栄養たっぷりで美味しい
村の畑で採れた野菜で作った
ざく切り野菜のポトフでも
作ろうか。体も温まるし
栄養もたっぷりだ」
「たすかるのじゃ。
サトシ愛してるのじゃぁ~」
「ミートゥーだ!」
そう言うとサトシは
キッチンに向かう。
出産後のミミはちょっとだけ
情緒不安定なところがあるようだ。
あくまで冗談の範疇だが
サトシに対して当たるような
事が何度かあった。
ベビーブルーである。
産後うつとも言い、この期間は
情緒不安定になるのが一般的らしい。
サトシは、村長としての仕事を
こなしたあとは極力はミミと双子と
一緒に居れるようと決意した。
「まあ。ぶっちゃけ俺が休んでても
いざとなればユミルが代理として
やってくれるから大丈夫だからな。
それに、ユミルさんから
"我の出産の時はサトシさんに
我の仕事を手伝って欲しい"
って言われているからお互い様か。
って、ユミルさんの仕事を俺が
こなすのは割と無理ゲーなのだがなっ!
文系脳で俺めっちゃ数字に弱いしなっ!」
有能なユミルに感謝しつつも、
ユミルの子が産まれた時の
代理業務の事を考えて、
思わずふぅっとため息をつく。
「しばらくは村の仕事の時間を減らして、
家族と触れ合う時間を増やそう。
なぁに。もともとがスローライフ
希望でわざわざ辺境まできたんだから、
そんなにひっちゃきになってはたらく
必要もないのだ。あくまで家庭の
幸せがあってこそのスローライフ生活だ!」
サトシはキッチンから
鶏肉入りのポトフと
ほかほかのご飯を
ミミのもとに運んでいく。
「おまたせー。アツアツのポトフだぞー」
「わーい。いただきますなのじゃー」
=================
【辺境村の開拓状況】
◆住民
土属性:1名
世界樹:1名
ユドラ:1名 ←New!
セフィ:1名 ←New!
ドワーフ:48名
魚人族《ディープワン》:39名
魔王:1名
雪女:38名
四天王:1(2名)
メイド:1名
ゴーレム:たくさん
◇特産品
ケチャップ
あいすくりいむ
ワイン(ドワーフ族作)
ココア
★ペット
混沌の翼竜:1匹
古代の翼竜:1匹
☆財政状況
大金貨:1700万枚
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あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
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