木こり無双~愛する者のためならば、勇者も神も切り倒す!~

にゃーにゃ

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第9話『幸せな日々』

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 遺跡都市に着いてから一ヶ月ほど経った。
 遺跡都市は森林に覆われた地域である。

 俺の木こりの技術があれば日々の日銭を稼ぐ仕事に事欠くことはなかった。
 住居については聖剣抜剣チャレンジおじさんが、
 俺たちのために特別に手配してくれたので住む場所にも不便していない。
 食事も山で取れる山菜やモンスターの肉は旨くて最高だし、
 衣食住困らない、何不自由ない每日を快適に過ごしている。


 いまこの遺跡都市を拠点にしているのにははある。


 それは過去に俺の父親と当時のソフィらしき少女がこの
 遺跡都市に訪れていることから、ソフィの産みの親や、
 生い立ちを知る何らかの手がかりがあるのではと思ったからだ。

 ただ、残念ながらソフィが8歳の時に身に着けていた、
 特徴的な金細工のあしらわれた翡翠のブローチについては、
 この遺跡都市の工芸品ではないようで、
 何人かに聞いてみたが心当たりはないようであった。


 と考えているのは、
 俺はその事実がソフィにとって不幸を招くことでしかないのであれば、
 いつでもやめてしまっても構わないと思っているからである。 


 この旅の目的は


 ソフィが自分の生い立ちや産みの親を知ることで、
 彼女が幼い頃から抱えている悩みを少しでも解消し、
 より胸を張って前を向いて歩けるようになって欲しいからである。


 もしソフィの生い立ちを巡るその旅路の果てにある物が、
 彼女に不幸をもたらすようなものなのであれば、
 いつだってやめてしまってもいいと思っている。


 答えを知ることが重要なのではない。
 重要なのはソフィが幸せになることだ。


 ソフィが幸せな姿を見ることで、
 俺は言葉にできないような心が満たされたあたたかい気持ちになれる。
 ソフィの笑顔が俺の幸せにも繋がっているのだ。

 つまるところ、結局は俺も自分の幸せのために行動しているのだ。
 現にいま俺は、この遺跡都市での日々の陽だまりのような、
 あたたかな暮らしにこれ以上ないほどの幸福を感じている。


 俺がソフィのために何かをしたいと思うのは、
 決して自己犠牲や奉仕の精神で行っていることではない。
 それが俺にとっての幸せなことだからである。


 ソフィが聖剣を引き抜いてから一ヶ月、
 俺は暇さえあれば聖剣で素振りを続けている。

 まだ剣としてはとても扱えないが、
 薪を割るイメージで単純に上から下に振るえるようにはなった。

 なお、聖剣抜剣チャレンジで聖剣を失ったおじさんは、
 露頭に迷うのではと心配したのだが、
 そんな心配は不要であった。

 聖剣抜剣チャレンジはレプリカ聖剣を使って引き続き営業中のようだ。
 今度のレプリカ聖剣は絶対に誰も引き抜けない構造になっているようである。
 転んでもただでは起きないところは、さすがは商売人である。


 食卓事情についてだが、現在は役割分担制を採用している。
朝メシは俺が作り、夕飯はソフィが作るという役割分担だ。
これは親父とオフクロがそうだったからそれを真似ている感じだ。

 山に囲まれた地域なので山菜やキノコも美味しい。
 俺とソフィが大好きな肉も美味しい。

 この周辺にいるモンスターの肉が美味しいのは、
 森の良質な山菜や草を食べているからかもしれない。
 

「ソフィ、ただいま。今日も山でたくさん木を切ってきた」


「ケネスおかえりー! お仕事お疲れさま」


「じゃーん。今日のお土産はフォレスト・ベアの肉だ」


「わお。凄い量ね。それじゃ、きょうの夕飯は肉料理を作ってあげるわ」


「楽しみだ。明日の朝食は俺が最高のステーキを作ろう。それとも、カリカリベーコンと目玉焼きとかの方がよかったか?」


 カリカリのベーコンを作る秘訣は、砂糖だ。

 フライパンの上に油を引かずに、先にひとつまみだけ
 砂糖を入れて軽くカラメル状にしてから、
 ベーコンを並べる。ベーコンの肉は何でも構わない。

 そしてフライパンで炒める。そうすると表面が、
 パリッとしてカリカリのベーコンが出来上がるのだ。

 昔はオフクロが作るカリカリベーコンを作ろうと、
 挑戦して焦げたベーコンを何度も作ったりしたものだ。

 このカリカリベーコンはオフクロに教えてもらった、
 秘密のレシピの一つだ。


「うーん。私はステーキ派かしら? ケネスのカリカリベーコンも最高に美味しいけど、せっかく新鮮な肉が手に入ったのだから、ステーキをガッツリ食べたいわ!」


 ソフィは本当によく食べる。
 食いっぷりの良いソフィをみていると何故か楽しい気持ちになる。


「ははっ。ソフィはステーキを選ぶと思っていたぞ。明日は朝からステーキだ」


「さて、でも大食いの私達でもさすがにこれだけの量の肉は腐らせちゃうわね。残ったお肉はご近所さんにおすそ分けしようかしら?」


「そうだな。それがいいかもしれないな」


 食卓でそんないつものとりとめのないやり取りをしていると、
 家の扉をノックする音が聞こえる。
 この家の大家さんこと、聖剣チャレンジおじさんだ。


「ソフィさん、ケネスくん、こんばんは。夜おそくにすまないが、お邪魔してもよいかの? 妻が美味しいポトフをたくさん作ったのでおすそ分けじゃ」


 随分と儲かっているようでこの都市でもひときわ大きい家に住んでいる。


「こんばんわ。ええ、どうぞ中にお入りください」


「ケネスくん、最初に聖剣を抜いた時は驚かされたものだが本当に働きものじゃな。君の働きぶりにはみんな驚き、また感謝しておる。森に囲まれたこの遺跡都市でもケネスくんほどの木こりはおらん。ワシラとしては永住をお願いしたいくらいじゃ」


「ありがとうございます。お役に立てて嬉しいです」


「住居の手配までしていただき、どうもありがとうございます! 快適に住まわせてもらっています」


「ソフィさん、お礼は結構ですじゃ。生きている間に聖剣を真の意味で引き抜くことができる人物があらわれるとは思わなかった。それを見せてもらっただけで十分ですじゃ」


「聖剣を抜けたのはたまたまです! 私が何かしたわけではないですので……恐縮です」


「ははっ。それでもまったく構わないのじゃ。そうじゃのう、もしよければ明日は仕事を休みにして一緒に遺跡に行ってみぬか? 観光客に解放される前の早朝の時間帯であれば、ゆっくり中を見ることができると思うのじゃが」


「面白そうですね。せっかく遺跡都市に来たので一度はソフィと観光に行きたいと思っていたので案内をしていただけると助かります」


「楽しみです! あんな立派な遺跡の中を探索できるなんて」


「ほっほっほ。ソフィさんは本当に素直な娘さんですの。ワシラはあの遺跡のおかげでこの都市は成り立っているといっても過言じゃないので、そう言ってもらえると嬉しいのですの」


そんな経緯もあり明日は観光客が遺跡を観光する時間よりも、
前の早朝の時間帯に俺たちがおじさんの案内で、
遺跡を探索することとなった。

遺跡といっても観光地なので目新しいことはないかもしれないが、
ああいうロマンを感じるところに潜れるのは俺も楽しみだったりするのであった。
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