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ゴウキ・ファミリー

セントラル凋落の影

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「あぁ?そりゃ本当のことなのか?」


バルジ王国冒険庁長官であるジャック・ソーアルドは部下からの報告を聞いて素っ頓狂な声を上げる。
ジャックはその厳つい顔を崩し、呆れに呆れ返っていた。


「セントラルのフミオンがそんな暴挙をねぇ・・・」


部下の報告内容はセントラルギルドのギルドマスターであるフミオンが、系列の不動産屋や至るところを通じて裏から不動産を買いあさっていることについてであった。時に強引な手法を用いてでも買っているというが、それに使われている額が半端ではないという。
何か商機を感じてやっているならそれはそれで好きにすれば良いのだが、実際のところ商機など微塵も感じさせないような物件の購入ばかりが目立った。特に2区と4区の境界辺りの購入が多いようだが、そこら一帯は4区に近く治安が比較的悪いということで、どの不動産も敬遠しがちな物件ばかりが立ち並んでいるところである。
そんな地域の空き物件を根こそぎ買いあさり、時に相場以上の価格を出してまで強引に購入もしているようだ。
はっきりと異常と分かる行動だが、問題はそれをフミオンが個人的にではなくギルドマスターの権限を使ってやっていることだった。


「損失は免れないだろうな」


ギルドマスターの権限を使う以上は、不動産の購入などには相応のメリットが無ければ背任行為とされて厳しい処分が科せられることになる。それもセントラルギルドのギルドマスターともなると、権限は強いが有事の際に問われる責任も重いので尚更だった。セントラルギルドは国からの依頼も多く請け負うことがあるので、その運営にはある程度冒険庁から指導が入ることになるのだ。
利益を優先し過ぎて冒険者から搾取し過ぎると是正勧告を食らうし、ギルドの金を不正なことに使っても駄目であるし、不適正な運営によって財務を傾かせるようなことになってもいけない。
普段ならここで指導の一つもするか、事情聴取もするところなのだが・・・


「ま、ここはとりあえず様子見しておくかい」


そう言ってふんぞり返ったジャックを見て、部下は怪訝な顔をした。


「しばらく泳がせておくんだよ。そうした方が、致命的なミスをして取返しが付かないところまでやってくれるかもしれねぇだろ?」


ジャックはフミオンはセントラルギルドのギルドマスターとして相応しくないと思っていた。セントラルの腐敗の根絶には彼の排除が必要不可欠だとも考えている。だから、フミオンを一度に追い落とせる機会であると察し、ジャックは情報を得ておきながら放置することに決めた。

セントラルギルドはこうしてあえて泳がされることで、凋落の危機を迎えつつあった。
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