106 / 505
追放後
計画通り・・・・・・・?
しおりを挟む
「ゴウキめ・・・どこまでも忌々しい」
リフトは王都に戻る船の上で海面を眺めながらぼやいていた。
彼は今、とても憤慨している。それは自分の思うようにいかないからである。
クリスタルダンジョンでの素材採取の依頼は、これでもかというほど凄惨たる結果に終わった。それも最初の一回目の失敗はリフトの勇み足の失態によるものだった・・・プライドの高いリフトにとって、この事実は相当に堪えた。
調子が悪かったのか、それでも慣れない陣形のために戸惑ってしまったのか・・・いずれにせよリフトは恥も何もかなぐり捨てて、二回目のトライには入念に準備をして臨んだ。
しかし、二回目のトライは一回目よりも悪い結果となった。前日と比較しても更に攻撃が思うように敵に通じず、クリスタルウルフという本来ならば一刀で仕留められるはずの雑魚ですら二度、三度と斬らねば倒せぬようになってしまった。
三回目はもっと苦戦した。
ずっと共に戦ってきたからこそわかるが、見るからに皆の動きが普段とそれを比べて悪かった。良く言えば慎重・・・悪く言うなら臆病で慎重すぎる・・・そう言って差し支えないレベルだった。
そしてマリスに言われてリフトは無意識のうちにわかっていたことを自覚させられる。全てはゴウキがいなくなったことで起きていることなのだと。
馬鹿馬鹿しい話だが、ゴウキがいることによって安心して敵に打ち込めたーーそうした一面もあったことを認めざるを得なかった。
この問題はこのメンバーでの戦闘に慣れるまでは解決しない。リフトはそれを痛感している。リフトはゴウキを嫌ってはいるが、彼がいたことによって得られていたものの大きさは理解出来ていた。
だからクレアがクリスタルダンジョンでの依頼達成を一旦は諦め、出直すと言いだしたときも反射的に反対意見を言いそうになったが、どうにか飲み込んだ。飲み込むしかなかった。
勇者パーティーがゴウキ無しで従来の動きを取り戻すには、時間を要するだろう。解決方としてはゴウキを呼び戻すか、代わりの人間を入れるか。
前者なら解決はすぐだが、後者でも効果が表れるまでに少し時間がかかるだろう。
だが、リフトは再びゴウキをパーティーに入れるつもりなどなかった。あれを受け入れるくらいなら、時間がかかっても新体制が定着するのを待つ、そう考えている。
今回の失敗を受け、クレアは当初の計画を変更し、すぐにでもゴウキを呼び戻そうとしている。
だが、ゴウキはもう勇者パーティーに戻ることなど出来はしない。なぜならリフトがそのように手を回しているからだ。
それを知らぬはクレアとミリアだけであった。
勇者パーティーは一人の男の謀略によって、根底からヒビが入ろうとしている。
皮肉なことにそれを画策した男も、今後押し寄せる己の身の不幸を知らぬのだが。
リフトは王都に戻る船の上で海面を眺めながらぼやいていた。
彼は今、とても憤慨している。それは自分の思うようにいかないからである。
クリスタルダンジョンでの素材採取の依頼は、これでもかというほど凄惨たる結果に終わった。それも最初の一回目の失敗はリフトの勇み足の失態によるものだった・・・プライドの高いリフトにとって、この事実は相当に堪えた。
調子が悪かったのか、それでも慣れない陣形のために戸惑ってしまったのか・・・いずれにせよリフトは恥も何もかなぐり捨てて、二回目のトライには入念に準備をして臨んだ。
しかし、二回目のトライは一回目よりも悪い結果となった。前日と比較しても更に攻撃が思うように敵に通じず、クリスタルウルフという本来ならば一刀で仕留められるはずの雑魚ですら二度、三度と斬らねば倒せぬようになってしまった。
三回目はもっと苦戦した。
ずっと共に戦ってきたからこそわかるが、見るからに皆の動きが普段とそれを比べて悪かった。良く言えば慎重・・・悪く言うなら臆病で慎重すぎる・・・そう言って差し支えないレベルだった。
そしてマリスに言われてリフトは無意識のうちにわかっていたことを自覚させられる。全てはゴウキがいなくなったことで起きていることなのだと。
馬鹿馬鹿しい話だが、ゴウキがいることによって安心して敵に打ち込めたーーそうした一面もあったことを認めざるを得なかった。
この問題はこのメンバーでの戦闘に慣れるまでは解決しない。リフトはそれを痛感している。リフトはゴウキを嫌ってはいるが、彼がいたことによって得られていたものの大きさは理解出来ていた。
だからクレアがクリスタルダンジョンでの依頼達成を一旦は諦め、出直すと言いだしたときも反射的に反対意見を言いそうになったが、どうにか飲み込んだ。飲み込むしかなかった。
勇者パーティーがゴウキ無しで従来の動きを取り戻すには、時間を要するだろう。解決方としてはゴウキを呼び戻すか、代わりの人間を入れるか。
前者なら解決はすぐだが、後者でも効果が表れるまでに少し時間がかかるだろう。
だが、リフトは再びゴウキをパーティーに入れるつもりなどなかった。あれを受け入れるくらいなら、時間がかかっても新体制が定着するのを待つ、そう考えている。
今回の失敗を受け、クレアは当初の計画を変更し、すぐにでもゴウキを呼び戻そうとしている。
だが、ゴウキはもう勇者パーティーに戻ることなど出来はしない。なぜならリフトがそのように手を回しているからだ。
それを知らぬはクレアとミリアだけであった。
勇者パーティーは一人の男の謀略によって、根底からヒビが入ろうとしている。
皮肉なことにそれを画策した男も、今後押し寄せる己の身の不幸を知らぬのだが。
0
お気に入りに追加
303
あなたにおすすめの小説
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る
はにわ
ファンタジー
ランドール王国最東端のルード地方。そこは敵国や魔族領と隣接する危険区域。
そのルードを治めるルーデル辺境伯家の嫡男ショウは、一年後に成人を迎えるとともに先立った父の跡を継ぎ、辺境伯の椅子に就くことが決定していた。幼い頃からランドール最強とされる『黒の騎士団』こと辺境騎士団に混ざり生活し、団員からの支持も厚く、若大将として武勇を轟かせるショウは、若くして国の英雄扱いであった。
幼馴染の婚約者もおり、将来は約束された身だった。
だが、ショウと不仲だった王太子と実兄達の謀略により冤罪をかけられ、彼は廃嫡と婚約者との婚約破棄、そして国外追放を余儀なくされてしまう。彼の将来は真っ暗になった。
はずだったが、2年後・・・ショウは隣国で得意の剣術で日銭を稼ぎ、自由気ままに暮らしていた。だが、そんな彼はひょんなことから、旅をしている聖女と呼ばれる世界的要人である少女の命を助けることになる。
彼女の目的地は祖国のランドール王国であり、またその命を狙ったのもランドールの手の者であることを悟ったショウ。
いつの間にか彼は聖女の護衛をさせられることになり、それについて思うこともあったが、祖国の現状について気になることもあり、再び祖国ランドールの地に足を踏み入れることを決意した。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
これが私の兄です
よどら文鳥
恋愛
「リーレル=ローラよ、婚約破棄させてもらい慰謝料も請求する!!」
私には婚約破棄されるほどの過失をした覚えがなかった。
理由を尋ねると、私が他の男と外を歩いていたこと、道中でその男が私の顔に触れたことで不倫だと主張してきた。
だが、あれは私の実の兄で、顔に触れた理由も目についたゴミをとってくれていただけだ。
何度も説明をしようとするが、話を聞こうとしてくれない。
周りの使用人たちも私を睨み、弁明を許されるような空気ではなかった。
婚約破棄を宣言されてしまったことを報告するために、急ぎ家へと帰る。
成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~
m-kawa
ファンタジー
第5回集英社Web小説大賞、奨励賞受賞。書籍化します。
書籍化に伴い、この作品はアルファポリスから削除予定となりますので、あしからずご承知おきください。
【第七部開始】
召喚魔法陣から逃げようとした主人公は、逃げ遅れたせいで召喚に遅刻してしまう。だが他のクラスメイトと違って任意のスキルを選べるようになっていた。しかし選んだ成長率マシマシスキルは自分の得意なものが現れないスキルだったのか、召喚先の国で無職判定をされて追い出されてしまう。
一方で微妙な職業が出てしまい、肩身の狭い思いをしていたヒロインも追い出される主人公の後を追って飛び出してしまった。
だがしかし、追い出された先は平民が住まう街などではなく、危険な魔物が住まう森の中だった!
突如始まったサバイバルに、成長率マシマシスキルは果たして役に立つのか!
魔物に襲われた主人公の運命やいかに!
※小説家になろう様とカクヨム様にも投稿しています。
※カクヨムにて先行公開中
【短編】追放した仲間が行方不明!?
mimiaizu
ファンタジー
Aランク冒険者パーティー『強欲の翼』。そこで支援術師として仲間たちを支援し続けていたアリクは、リーダーのウーバの悪意で追補された。だが、その追放は間違っていた。これをきっかけとしてウーバと『強欲の翼』は失敗が続き、落ちぶれていくのであった。
※「行方不明」の「追放系」を思いついて投稿しました。短編で終わらせるつもりなのでよろしくお願いします。
氷の貴婦人
羊
恋愛
ソフィは幸せな結婚を目の前に控えていた。弾んでいた心を打ち砕かれたのは、結婚相手のアトレーと姉がベッドに居る姿を見た時だった。
呆然としたまま結婚式の日を迎え、その日から彼女の心は壊れていく。
感情が麻痺してしまい、すべてがかすみ越しの出来事に思える。そして、あんなに好きだったアトレーを見ると吐き気をもよおすようになった。
毒の強めなお話で、大人向けテイストです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる