守護霊は吸血鬼❤

凪子

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聖は暑かったのか、あどけない顔を真っ赤に火照らせていた。

「ご飯、冷めちゃったね。せっかく作ってくれたのに」

と、遥はまるで何事もなかったかのような調子で言ってのけた。

元どおりの彼の姿に安心したのか、聖も慌てたようにぎこちない相づちを打つ。

「あ、料理温めますね」

心臓が壊れそうにばくばくいっている。キッチンを歩く足取りさえおぼつかなかった。

(どうしたんだろう)

聖は困惑と煩悶に顔を歪めた。食器を持つ指先が震える。

(遥さん、様子が変だ)

何の前触れもなく頭の中にヴァンの姿が浮かんで、それが余計に聖を動転させた。

(何で出てくるんだよ。お前は関係ないだろ?!)

困惑したまま三人分の食事を準備していると、スマホが震え出した。

聖はまるで火傷したようにして取り落とし、慌てて拾い上げて通話ボタンを押した。

「もしもし?」

『あーもしもし?聖?俺だけど』

「由宇!今どこにいるんだよ。遥さんもう帰ってきてるぞ」

『悪い。それがさ、今日病院行かなきゃならないの忘れててさ。おふくろが今、車で迎えに来ちゃったんだよ』

由宇は怪我をしてからもバスケ部に顔を出し、プレーに参加できなくとも自主練やリハビリをこなしている。

その熱心な様子を聖は嬉しく思っていた。

「そっか。残念だけど、それじゃ仕方ないな」

『ごめんな。俺がケーキ買っていくっていう約束だったのに』

「いいよ。じゃあ気をつけてな」

『お前も、遅くなる前に帰れよ。じゃあまた明日な』

そう言って、通話は切れた。

聖は遥の方を振り返ると、

「すみません。今日、由宇も来れるはずだったんですけど、病院に行くって」

「そっか。じゃあ、せっかくだし頂こうか」

「はい」

と言って、二人は食卓についた。

和やかで、久々に心休まる時間だった。

食事中、遥は聖をじっと見つめ、何事かを企むような顔になった。

とびきりの思いつきをしたように、嬉しそうに笑っている。

「どうしたんですか?」

「いや、嬉しくてつい、ね」

絶対にそれだけではないはずだと察しながらも、聖はそれ以上詮索せず、何も言わなかった。

涙の理由も不可解な行動のわけも。

彼の魂からほとばしった声が、切ないほど真摯に呼んだのはきっと、弟の名前だったのではないかということも。
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