守護霊は吸血鬼❤

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（だから、何でお前にそんな指図を受けなきゃならないんだよ！）

「お前じゃない、ヴァンだ」

（はあ？！）

「俺の名前はヴァン・Ｆ・アルカード。純血の吸血鬼だ」

またぞろ唐突な自己紹介が始まった。ますます意味が分からない。

聖は「ああもう！」と言って頭をかきむしった。由宇が目をしばたかせて凝視している。

（だから何だって言うんだよ。とにかく黙ってろ！今お前のことを由宇に言ってやるんだからな！）

「言うも言わないもお前の勝手だが、俺の名前はきちんと覚えてもらう。今度から俺を呼ぶ時は、ご主人様もしくはヴァン様と呼べ。いいな」

（呼ばねえよ！断じて呼ばねえ！頼まれたってお前のことなんか呼ぶもんか）

「そうかな？」

にやりと不吉な笑みを浮かべ、ヴァンは余裕綽々の態度で聖の激昂を受け流した。

聖はめいいっぱいに反抗しながらも、自分の瞳に恐れが浮かんでいるのではないかと危惧した。

それがこの化け物を調子づかせているのではないかと。

大体、反応したり返事をするのがいけないのだ。

だが、無視しようにもヴァンは好きなときに好きなことを言葉に出し、それを聞いて心の中で何か考えただけで会話が成立してしまうのだ。

彼をスルーするという偉業を成し遂げるためには、相当な修行が必要そうだった。

「断言してやる。お前は俺の膝にすがりついて懇願し、助けを乞うときが来るさ。その可憐な顔を泣きそうに歪めながら、俺を必要としてな」

背筋が粟立つくらいにぞっとしない話だった。聖は不快な思いでヴァンから視線を逸らす。

（くだらない。言ってろ馬鹿）

「聖。聖、聞いてるのか？」

と、由宇に肩をたたかれて、ようやく我に返る。

「あ、ああ、ごめん」

由宇は何かをじっと考え込むような顔つきになって、口元に手を当てて言った。

「お前、やっぱり昨日からおかしいよ。熱があるみたいにぼーっとして、ずっと上の空で人の話も聞こえてないみたいだし。何かあったんだろ？話してみろよ」

「それはだな」

そのとき、タイミングが良いというべきか悪いというべきか、チャイムが鳴って体育教師が入ってきた。

「おらー授業始めるぞ。静かにしろ！」

ざわつく生徒たちの群れは、やがてぞろぞろと整列する。

準備体操を終えると、教師は声を張り上げた。