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「今から適当に二人組を作れ。組み手と型の練習をするぞー。先生が一度だけ実演する。後はそれぞれのペアを回って評価つけるからな。真面目にやれよ!」
「聖、お前、俺と組め」
列がほどけるなり、由宇は近づいてきて聖に声をかけた。
「でも俺チビだし。由宇はもっと背の高い奴と組んだほうがやりやすいんじゃないの」
適当な理由で由宇を遠ざけようとしたのは、先ほどの話題に戻るかと思って身構えていたからなのだが、由宇はとりあえず今は体育に集中するつもりのようだった。
「馬鹿。お前が他の奴と組んだら怪我させられるかもしれないだろ。ただでさえ危なっかしいんだから」
聖は思わずため息混じりに言った。
「……あのなあ。いくら何でも、そこまで運動神経悪くないぞ。それに、そんなにやわじゃない。由宇にかばってもらわなくたって、」
「かばってるんじゃない。心配してるだけだ」
「だからそれが過保護なんだって言ってるんだっつの」
小声で悪態をつきつつも、聖は由宇に従って二人組を作ってその場に座る。
このシステムは残酷だな、と思う。
パートナーが見つからない間、おろおろと所在なく立ち尽くす時間といったらもう、この世の地獄を全て凝縮したといっても過言ではないくらいだ。
もちろん、聖の場合はそんなことは一度も起こらなかったけれども。
「よーし。ペアができたな?じゃあ実演を始めるぞー」
教師が柔道部を指名して、一つ一つ技や型の説明をしているのをぼんやりと聞いていると、柔道場の壁にもたれかかって腕組みしていたヴァンが言った。
「そんなにやわじゃない、か。そんな体でよく言う。平気なふりをして、立っているのが精一杯のくせに」
聖は憮然と黙りこくった。
意識が朦朧とする感じはないが、相変わらず地面はふわふわするし体にはあまり力が入らない。
悔しいが、ヴァンの言ったとおりだった。
(人の血を好き勝手飲んだ奴が言う台詞か)
「だから、途中でやめてやっただろう?最後までしていたら、お前は今ごろベッドから起き上がることすらできなかったさ」
たしか人間の血は多くても四、五リットルで、三分の一が失われると死に至ると聞いたことがある。
昨日から今朝にかけて、かなりの血を吸われたが、ヴァンは一体どの程度の量を飲んだのだろう。
(お前、どれだけ飲んだんだよ。俺の血を返せよ)
ヴァンは心底愉快そうにクククと笑った。
「返すだと?そんなことできるわけがないだろうが。あんなのはまだ序の口だ。コップ一杯程度だからな」
大きなガラスのコップになみなみと注がれた深紅の血を想像したら、また目が回りそうになった。
聖は強いてまばたきを繰り返し、ヴァンの姿と声を意識の端に追いやろうと努めた。
だがその努力は、どうやら実を結びそうにもなかった。
「聖、お前、俺と組め」
列がほどけるなり、由宇は近づいてきて聖に声をかけた。
「でも俺チビだし。由宇はもっと背の高い奴と組んだほうがやりやすいんじゃないの」
適当な理由で由宇を遠ざけようとしたのは、先ほどの話題に戻るかと思って身構えていたからなのだが、由宇はとりあえず今は体育に集中するつもりのようだった。
「馬鹿。お前が他の奴と組んだら怪我させられるかもしれないだろ。ただでさえ危なっかしいんだから」
聖は思わずため息混じりに言った。
「……あのなあ。いくら何でも、そこまで運動神経悪くないぞ。それに、そんなにやわじゃない。由宇にかばってもらわなくたって、」
「かばってるんじゃない。心配してるだけだ」
「だからそれが過保護なんだって言ってるんだっつの」
小声で悪態をつきつつも、聖は由宇に従って二人組を作ってその場に座る。
このシステムは残酷だな、と思う。
パートナーが見つからない間、おろおろと所在なく立ち尽くす時間といったらもう、この世の地獄を全て凝縮したといっても過言ではないくらいだ。
もちろん、聖の場合はそんなことは一度も起こらなかったけれども。
「よーし。ペアができたな?じゃあ実演を始めるぞー」
教師が柔道部を指名して、一つ一つ技や型の説明をしているのをぼんやりと聞いていると、柔道場の壁にもたれかかって腕組みしていたヴァンが言った。
「そんなにやわじゃない、か。そんな体でよく言う。平気なふりをして、立っているのが精一杯のくせに」
聖は憮然と黙りこくった。
意識が朦朧とする感じはないが、相変わらず地面はふわふわするし体にはあまり力が入らない。
悔しいが、ヴァンの言ったとおりだった。
(人の血を好き勝手飲んだ奴が言う台詞か)
「だから、途中でやめてやっただろう?最後までしていたら、お前は今ごろベッドから起き上がることすらできなかったさ」
たしか人間の血は多くても四、五リットルで、三分の一が失われると死に至ると聞いたことがある。
昨日から今朝にかけて、かなりの血を吸われたが、ヴァンは一体どの程度の量を飲んだのだろう。
(お前、どれだけ飲んだんだよ。俺の血を返せよ)
ヴァンは心底愉快そうにクククと笑った。
「返すだと?そんなことできるわけがないだろうが。あんなのはまだ序の口だ。コップ一杯程度だからな」
大きなガラスのコップになみなみと注がれた深紅の血を想像したら、また目が回りそうになった。
聖は強いてまばたきを繰り返し、ヴァンの姿と声を意識の端に追いやろうと努めた。
だがその努力は、どうやら実を結びそうにもなかった。
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