守護霊は吸血鬼❤

凪子

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「それと、今お前は関係ないと言ったが、関係は大いにある。俺は吸血鬼だ。お前の美味で新鮮な血を飲めなくなるわけにはいかない。お前には永続的に血を提供してもらう」

「どんな理屈だよ。そんなこと、許可した覚えないぞ!永続的って、一生ってことか?ふざけるな!」

聖は怒りに顔を紅潮させて鞄を振り回す。

ヴァンはひらりと身をかわすと、鋭い威厳を放ちながら言った。

「まだ自分の置かれた立場が分かっていないらしいな。お前は俺のものだと言っただろう。契約は二百年前、既に結ばれている。お前に拒否権はない」

意思も尊厳も徹底的に無視した発言に、聖は二の句が継げなくなった。

ヴァンはそれを、聖が状況を理解したものと受け取ったらしかった。

「せいぜい、いつでも提供できるよう良い血を蓄えておくんだな。素直に俺に従うのなら、手荒な真似はしない。俺様は優しい吸血鬼だからな」

笑い含みの声がからかうように弾む。

牙も生えていないし、顔立ちは美しい人間そのものなのに、絵本やおとぎ話で見るよりもずっと凶悪な笑顔だった。

(畜生!こいつを追い払ってやる、何としてでも……!)

聖は顔を歪めて拳を握り締め、心の中で硬く誓うのだった。






 
二時間目が終わったころに遅刻して教室に現れた聖を見るなり、由宇は真っ先に駆け寄ってきた。

「大丈夫か?」

「平気だって。それより次、体育だろ。着がえに行こうぜ」 

「見学しなくていいのか?」

「何十分も全力で走らなければ大丈夫だよ。どうせ今日は柔道だし」

「そうじゃなくて、体調。まだ若干顔青いぜ、お前」

「気のせいだよ。ほら行くぞ」

 (由宇は心配性だな)

聖は戸惑う由宇を置き去りに、とっとと自分の席に荷物を置いて歩き出していた。

ここへ来る道の途中でも、ヴァンの姿に反応する者は一人としていなかった。

たとえ接触しても、兄・誠のときのようにするりと通り抜けてしまう。

学校でもそれは同じだった。

どうしてどうして、本当にヴァンは人間の肉眼では不可視の存在であるらしい。
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