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03 揺れ動く心
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「いいえ。まず、シェーマス様は私と夜会でも、一回しか踊らないの」
「え? うーん……けれど、ダンスがあまり好きではないかもしれないじゃない」
ダンスの名手として知られるシェーマス様がそんな訳はないけど、この辺りの私たちの事情をスーリエには詳しく話していないので、かすかな希望を持ってしまうのも無理はないと私は思った。
「ええ。そうかもしれないわね……それに、話が絶対に盛り上がらないの。何を言っても反応が良くないから、私も楽しい会話をしようとする努力を止めたわ」
「えっ……王太子だから、色々と多忙過ぎて、私的な会話は控えてる……とか?」
信じられないと言わんばかりのスーリエ……そうよね。私たち二人は周囲に人が居る時は、一定の距離は保ちつつも、仲睦まじそうに見えたわよね。
だって、それは当たり前のことよ。私、女避けのために、彼に頼まれて婚約者役を引き受けたもの、仲が悪かったら逆効果になってしまうわ。
「王族の結婚は血を繋ぐ義務だから、仕方ないからする、恋愛にうつつを抜かすなど暇人にしか無理だと私が聞いてもないのに、言われてしまっても?」
「……なんなの、それ。しっつれいねー!」
スーリエは私がシェーマス様から言われた言葉を聞いて、信じられないと憤慨した様子だった。
「これで、私が彼に好かれていると思えない理由が、よくよく理解出来たでしょう? ……シェーマス様を思い切るまで、こんなにも時間が掛かってしまったけど、これでもう、終わりよ。早く私も婚約者を見つけなくては……」
長過ぎた恋の終わりは、あっけないものだ。
「それもそうよね……シェーマス様より、もっともっと良い人を見つけましょうよ! 悔しがるくらい、素敵な人……あ! そうよ。私の婚約者が今日、城に来ているはずなんだけど……実はお忍びで、彼の仕える殿下も連れて来ているはずよ!」
「……えっ?」
全く思ってもいなかったことを言い出したスーリエに、私は驚いた。
隣国の王族が、お忍びで城に? 彼女が嫁ぐことになる隣国は、敵対はしていない親交のある国だ。より関係を深めるためにも、未来の国王の従姉妹であるスーリエが嫁ぐことは歓迎されていた。
けれど、まさかお忍びの王族の訪問なんて……聞いたこともないわ。
「もちろん。お忍びとは言っても、王族だって関係機関だって知っているわよ! けど、多忙な王子様は、仰々しい滞在期間は取れなくて、こちらに居るのは三日間で、明日には帰ってしまうの。けど、今なら居るはずよ! ここに呼んでも、良いかしら?」
このお茶会の主催者は私で、参加者はスーリエ一人。石造りの大きな丸テーブルには、いくつも空席がある。
知らない男性をスーリエから紹介されることに、抵抗がなかったと言えば嘘になる。
だって、私はまだ……シェーマス様の婚約者なのよ。
「その……その方は、明日までしか居ないのよね?」
会うならば、今日しかない。だから、もし私がここで渋れば、もう会うことは出来ない。
心はぐらぐらと揺れた。私に気のない素振りのシューマス様は、私が男性と会ったとしても……きっと、何も思わないだろう。
「え? うーん……けれど、ダンスがあまり好きではないかもしれないじゃない」
ダンスの名手として知られるシェーマス様がそんな訳はないけど、この辺りの私たちの事情をスーリエには詳しく話していないので、かすかな希望を持ってしまうのも無理はないと私は思った。
「ええ。そうかもしれないわね……それに、話が絶対に盛り上がらないの。何を言っても反応が良くないから、私も楽しい会話をしようとする努力を止めたわ」
「えっ……王太子だから、色々と多忙過ぎて、私的な会話は控えてる……とか?」
信じられないと言わんばかりのスーリエ……そうよね。私たち二人は周囲に人が居る時は、一定の距離は保ちつつも、仲睦まじそうに見えたわよね。
だって、それは当たり前のことよ。私、女避けのために、彼に頼まれて婚約者役を引き受けたもの、仲が悪かったら逆効果になってしまうわ。
「王族の結婚は血を繋ぐ義務だから、仕方ないからする、恋愛にうつつを抜かすなど暇人にしか無理だと私が聞いてもないのに、言われてしまっても?」
「……なんなの、それ。しっつれいねー!」
スーリエは私がシェーマス様から言われた言葉を聞いて、信じられないと憤慨した様子だった。
「これで、私が彼に好かれていると思えない理由が、よくよく理解出来たでしょう? ……シェーマス様を思い切るまで、こんなにも時間が掛かってしまったけど、これでもう、終わりよ。早く私も婚約者を見つけなくては……」
長過ぎた恋の終わりは、あっけないものだ。
「それもそうよね……シェーマス様より、もっともっと良い人を見つけましょうよ! 悔しがるくらい、素敵な人……あ! そうよ。私の婚約者が今日、城に来ているはずなんだけど……実はお忍びで、彼の仕える殿下も連れて来ているはずよ!」
「……えっ?」
全く思ってもいなかったことを言い出したスーリエに、私は驚いた。
隣国の王族が、お忍びで城に? 彼女が嫁ぐことになる隣国は、敵対はしていない親交のある国だ。より関係を深めるためにも、未来の国王の従姉妹であるスーリエが嫁ぐことは歓迎されていた。
けれど、まさかお忍びの王族の訪問なんて……聞いたこともないわ。
「もちろん。お忍びとは言っても、王族だって関係機関だって知っているわよ! けど、多忙な王子様は、仰々しい滞在期間は取れなくて、こちらに居るのは三日間で、明日には帰ってしまうの。けど、今なら居るはずよ! ここに呼んでも、良いかしら?」
このお茶会の主催者は私で、参加者はスーリエ一人。石造りの大きな丸テーブルには、いくつも空席がある。
知らない男性をスーリエから紹介されることに、抵抗がなかったと言えば嘘になる。
だって、私はまだ……シェーマス様の婚約者なのよ。
「その……その方は、明日までしか居ないのよね?」
会うならば、今日しかない。だから、もし私がここで渋れば、もう会うことは出来ない。
心はぐらぐらと揺れた。私に気のない素振りのシューマス様は、私が男性と会ったとしても……きっと、何も思わないだろう。
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