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聖女爆誕編
蝋燭は身を減らして人を照らす①
しおりを挟む筋肉注射は、略して筋注またはIMと呼ばれる処置である。
筋肉注射は静脈注射よりも早く長い効果が期待できるもので、血管への注入では痛めてしまうような刺激の強い薬剤(油性液や懸濁液)に対して用いられるものだ。
医療用ペンライトを口に咥えた小夜は、可動域の限界ギリギリまで首を捻って自らの肩——三角筋の辺りに指を這わせ注射位置を探る。肩峰(肩甲骨にある骨の突起)から指3本分下の辺りが好位置だ。
穿刺部分をアルコール綿で拭った後、左手で皮膚をピンと伸ばし右手でシリンジを持つ。些か無理のある体勢だが、自主練習では致し方あるまい。
「持ち方は鉛筆を持つように⋯⋯っと」
此処まで来れば、後は覚悟を決めて針を刺すだけだ。小夜の額にはじわりと汗が滲み、ごくりと唾を呑む。
(ちょっと怖い、かも)
小夜は健康優良児の為、此れまで予防接種以外に注射を打った記憶が無い。ましてや自らの身体に針を刺した経験など当然ながら無かった。
その為、直前になってから少々怖気付いてしまったのだ。
(覚悟を決めるのよ。文字通り、私の手に此の村の未来が懸かっているのだから⋯⋯!)
これから訪れるであろう痛みに耐える為、歯を食い縛る。そして、真っ直ぐに勢い良く針を刺した。
「っ⋯⋯!」
チクリと腕に鋭い痛みが走り、思わずギュッと瞳を閉じた。
気持ちが落ち着いたところでそっと瞳を開き、空のシリンジに目をやる。
(⋯⋯うん、しびれも逆血も無い。成功ね)
残念ながら今、練習として出来るのは此処までだ。ペストを発症していない小夜の身体に実際に薬液を注入する訳にはいかない。
(仕方ないけど薬液の注入は一発本番ね。その時までにイメージトレーニングを重ねて完璧にしておかないと)
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