1,521 / 2,840
柱史
しおりを挟む
早乙女家から(逃げ)帰って来た。
亜紀ちゃんと一緒に風呂に入った。
「あー、カレー美味しかったなー」
「そうじゃないでしょう!」
「あれ? 美味しくなかった?」
「おいしかったですけど!」
「亜紀ちゃん、ちょっとカレー臭いぞ?」
「タカさんもですよ!」
二人で歯を磨いた。
湯船に入る。
「どうすんですか、あれ!」
亜紀ちゃんが怒っている。
「どうすんだって聞かれてもなぁ」
「どんな奴かもわからないんですよ」
「お前、一緒に捨てに行ったじゃん」
「それはタカさんが」
「あ! 俺だけ悪いことにすんのかぁー!」
「だって!」
二人で掴み合った。
虚しいのでやめた。
「早乙女さん、大丈夫ですかね」
「大丈夫だよ。あいつら、なんかヘンな連中にすぐ慣れるじゃん」
「そうですけど」
「流石は「アドヴェロス」だよなー」
「もう!」
二人でゆったりとする。
「「小柱」に、『ゴルゴ13』の目を描いてやるかなー」
「ギャハハハハハハ!」
亜紀ちゃんが爆笑した。
「タカさん! 庭にヘンなのがいるー!」
ルーが風呂場に駈け込んで来た。
「ロボに始末させとけ!」
「はーい!」
ルーがロボを呼びながら駆けて行った。
「ロボー! 庭の手足の無い釣り鐘女をぶっ殺して―!」
「「!」」
俺と亜紀ちゃんはバスローブを羽織って庭に行った。
庭に出ようとするロボを必死で止めた。
俺はウッドデッキから庭に出た。
「おい、どうした!」
《はい、霊素観測のデータをお持ちしました》
「早ぇな!」
グランマザーの分体が、USBを手渡して来た。
「USBかよ」
《はい、地球の文明は把握しておりますので》
俺は亜紀ちゃんに渡そうとした。
亜紀ちゃんが硬直している。
「おい、これを……」
「た、タカさん!」
「あんだよ」
「今、手渡しされましたよね!」
「だからどうしたんだよ!」
亜紀ちゃんがグランマザーの分体を指差している。
「手、無いじゃないですかぁー!」
「あぁ!」
《ああ、この中にも「神」が入っているのですよ》
「どういうことか分かんねぇよ!」
《この宇宙の中には結構あるのです。この星系にも幾つかございますよ?》
グランマザーの分体は、知的生命体の発展に用意されたものらしいと言った。
《神性については、わたくしたちよりも高位の次元の存在なので、詳しいことは分かり兼ねます。ですが、知的生命体を発展させることについてであれば、このように利用できるのであります》
「お前、神を利用って……」
《「神」と言っても、あくまでも高位存在というだけで、地球人の「神」とは別なものです。まあ、無茶を承知で言えば、地球の「神」の僕である「天使」とでも言えましょうか。超絶的な力を持ってはいますが、満足する条件を提示すればこちらの用意した器に宿ってくれますし、また宿った器に気に入った姿を与えれば喜びます》
「ちょっと待て。段々理解出来なくなってきた」
《例えば、お渡しした「棒」を大事に磨き上げるとか》
「ああ、なるほど。そうすれば喜ぶわけだな」
《はい。以前の実例では綺麗に彩色したり、顔を描いた例もございました》
「なんだと!」
《顔は喜ばれたようですね! まあ、万一気に入らなければ、どうなっていたのかは分かりませんが》
「タカさん!」
亜紀ちゃんが俺の背中から両肩を掴んだ。
「分かった! ゴルゴは描かねぇ!」
「そうじゃなくて、その前に!」
「うるせぇ!」
グランマザーの分体が俺を見ていた。
俺は面倒になって、早乙女にやった「柱」のこと、それにグランマザーの分体からさっき貰った「小柱」も早乙女の家の庭に投げ込んで来たことを正直に話した。
「ちょっと気味が悪いんだよ!」
《石神様は既にアレをお持ちになっていたのですね! そのように懐かれる事例は聞いたことがございません。わたくしが知らないということは、恐らくこれまで無かったことかと》
「そうなのかよ」
《それと、ご安心下さいませ。アレは神聖なものではございますが、元々は他者に与えるためのものでした。与えられた者が大切にすれば、アレは大いなる幸福をもたらすものです》
「投げちゃっても?」
《はい。地球人には奇妙に聞こえるかもしれませんが、「投げ与える」という行為は実は最も良い与え方なのです》
「そうなのかよ!」
俺と亜紀ちゃんは驚いた。
《はい。恐らくは、アレの出現にまつわることかと思いますが、アレは高次元からこの宇宙に投げ出されて来るようなのです。そして知的生命体のいる星に降る。ですので、投げ与えられることで、そこの知的生命体を幸福に導くようなのです》
「そ、そうか!」
《最初の御疑問にお答えしますと、そこの知的生命体に役立つために、手足などが出現するようなのです》
「あ、ああ!」
《わたくしのこの身体も、マザーシップから投げ出される形で参りました》
「だから空から降って来るみたいに来たのか!」
《はい。この身体は石神様のために。そして手土産は、石神様がお好きなようにと思い、持ってまいりました》
「何となく、そう思ってたぜ!」
亜紀ちゃんが目を細めて俺を見ていた。
《ご説明しようとも思っていたのですが、流石は石神様!》
「まーなー!」
《手土産の蘊蓄をあれこれ語るのは礼儀に外れたことと思いまして。何か分からないことがあればわたくしにお聞きになるだろうと。その時にご説明しようと思っておりました》
「奥ゆかしいな!」
《アハハハハ》
「ワハハハハハハ!」
俺は取り敢えず笑っておいた。
「手足については分かったよ。ところで、羽が生えるのはどういうことなんだ?」
《はい?》
「羽だよ。天使には羽がついているだろう」
《はい? 聞いたこともございませんが?》
「「……」」
《羽が生えたのですか?》
「そ、そうなんだけど……」
「そういえば、手が生えたのって、タカさんが触ってからですよね!」
「おい!」
「最初はピンク色になって。もう一回触ったら紫色になって」
「ちょ、ちょっと!」
「その後で手が生えてて」
グランマザーの分体は、手は疑似的に出現するのだと言った。
一時的に量子を操って手を形成し、その後消えるのだと言う。
《よくは分かりませんが、手も羽もアレが必要だと判断したのでしょう。どういう必要だったかは分かり兼ねますが》
「手は「ヒモダンス」を踊るために……」
俺は亜紀ちゃんの頭を引っぱたいた。
「とにかく、大体のことは分かった。ただ、「アレ」っていうのはどうなんだ? ちゃんとした名称もあるんだろう?」
《はい、ございます。ですが地球人の発音ではどうも理解し難いようですので》
「なるほど。意味が近いものがあるか?」
《はい、「イエス・キリスト」が最も近いかと》
「「!」」
《三位一体の教義がアレには当てはまります。そして知的生命体を次のステージへ進める時に……》
「もういい! それは俺たちが知るべきことではないだろう」
《かしこまりました。仰る通りかと思います。ただ、石神様が大いなる使命をお持ちの方だということは》
「俺はそんなことは知らないよ。俺は大事なものを守りたいだけだ」
《さようでございましたね》
グランマザーの分体は帰った。
何にしてもだ。
「柱」たちを早乙女に押し付けたのは、何ら間違いではなかったということだ。
「小柱」の羽は気になるが、まあ良いことなのだろう。
それにしても、やっぱり不気味な連中だと思った。
亜紀ちゃんと一緒に風呂に入った。
「あー、カレー美味しかったなー」
「そうじゃないでしょう!」
「あれ? 美味しくなかった?」
「おいしかったですけど!」
「亜紀ちゃん、ちょっとカレー臭いぞ?」
「タカさんもですよ!」
二人で歯を磨いた。
湯船に入る。
「どうすんですか、あれ!」
亜紀ちゃんが怒っている。
「どうすんだって聞かれてもなぁ」
「どんな奴かもわからないんですよ」
「お前、一緒に捨てに行ったじゃん」
「それはタカさんが」
「あ! 俺だけ悪いことにすんのかぁー!」
「だって!」
二人で掴み合った。
虚しいのでやめた。
「早乙女さん、大丈夫ですかね」
「大丈夫だよ。あいつら、なんかヘンな連中にすぐ慣れるじゃん」
「そうですけど」
「流石は「アドヴェロス」だよなー」
「もう!」
二人でゆったりとする。
「「小柱」に、『ゴルゴ13』の目を描いてやるかなー」
「ギャハハハハハハ!」
亜紀ちゃんが爆笑した。
「タカさん! 庭にヘンなのがいるー!」
ルーが風呂場に駈け込んで来た。
「ロボに始末させとけ!」
「はーい!」
ルーがロボを呼びながら駆けて行った。
「ロボー! 庭の手足の無い釣り鐘女をぶっ殺して―!」
「「!」」
俺と亜紀ちゃんはバスローブを羽織って庭に行った。
庭に出ようとするロボを必死で止めた。
俺はウッドデッキから庭に出た。
「おい、どうした!」
《はい、霊素観測のデータをお持ちしました》
「早ぇな!」
グランマザーの分体が、USBを手渡して来た。
「USBかよ」
《はい、地球の文明は把握しておりますので》
俺は亜紀ちゃんに渡そうとした。
亜紀ちゃんが硬直している。
「おい、これを……」
「た、タカさん!」
「あんだよ」
「今、手渡しされましたよね!」
「だからどうしたんだよ!」
亜紀ちゃんがグランマザーの分体を指差している。
「手、無いじゃないですかぁー!」
「あぁ!」
《ああ、この中にも「神」が入っているのですよ》
「どういうことか分かんねぇよ!」
《この宇宙の中には結構あるのです。この星系にも幾つかございますよ?》
グランマザーの分体は、知的生命体の発展に用意されたものらしいと言った。
《神性については、わたくしたちよりも高位の次元の存在なので、詳しいことは分かり兼ねます。ですが、知的生命体を発展させることについてであれば、このように利用できるのであります》
「お前、神を利用って……」
《「神」と言っても、あくまでも高位存在というだけで、地球人の「神」とは別なものです。まあ、無茶を承知で言えば、地球の「神」の僕である「天使」とでも言えましょうか。超絶的な力を持ってはいますが、満足する条件を提示すればこちらの用意した器に宿ってくれますし、また宿った器に気に入った姿を与えれば喜びます》
「ちょっと待て。段々理解出来なくなってきた」
《例えば、お渡しした「棒」を大事に磨き上げるとか》
「ああ、なるほど。そうすれば喜ぶわけだな」
《はい。以前の実例では綺麗に彩色したり、顔を描いた例もございました》
「なんだと!」
《顔は喜ばれたようですね! まあ、万一気に入らなければ、どうなっていたのかは分かりませんが》
「タカさん!」
亜紀ちゃんが俺の背中から両肩を掴んだ。
「分かった! ゴルゴは描かねぇ!」
「そうじゃなくて、その前に!」
「うるせぇ!」
グランマザーの分体が俺を見ていた。
俺は面倒になって、早乙女にやった「柱」のこと、それにグランマザーの分体からさっき貰った「小柱」も早乙女の家の庭に投げ込んで来たことを正直に話した。
「ちょっと気味が悪いんだよ!」
《石神様は既にアレをお持ちになっていたのですね! そのように懐かれる事例は聞いたことがございません。わたくしが知らないということは、恐らくこれまで無かったことかと》
「そうなのかよ」
《それと、ご安心下さいませ。アレは神聖なものではございますが、元々は他者に与えるためのものでした。与えられた者が大切にすれば、アレは大いなる幸福をもたらすものです》
「投げちゃっても?」
《はい。地球人には奇妙に聞こえるかもしれませんが、「投げ与える」という行為は実は最も良い与え方なのです》
「そうなのかよ!」
俺と亜紀ちゃんは驚いた。
《はい。恐らくは、アレの出現にまつわることかと思いますが、アレは高次元からこの宇宙に投げ出されて来るようなのです。そして知的生命体のいる星に降る。ですので、投げ与えられることで、そこの知的生命体を幸福に導くようなのです》
「そ、そうか!」
《最初の御疑問にお答えしますと、そこの知的生命体に役立つために、手足などが出現するようなのです》
「あ、ああ!」
《わたくしのこの身体も、マザーシップから投げ出される形で参りました》
「だから空から降って来るみたいに来たのか!」
《はい。この身体は石神様のために。そして手土産は、石神様がお好きなようにと思い、持ってまいりました》
「何となく、そう思ってたぜ!」
亜紀ちゃんが目を細めて俺を見ていた。
《ご説明しようとも思っていたのですが、流石は石神様!》
「まーなー!」
《手土産の蘊蓄をあれこれ語るのは礼儀に外れたことと思いまして。何か分からないことがあればわたくしにお聞きになるだろうと。その時にご説明しようと思っておりました》
「奥ゆかしいな!」
《アハハハハ》
「ワハハハハハハ!」
俺は取り敢えず笑っておいた。
「手足については分かったよ。ところで、羽が生えるのはどういうことなんだ?」
《はい?》
「羽だよ。天使には羽がついているだろう」
《はい? 聞いたこともございませんが?》
「「……」」
《羽が生えたのですか?》
「そ、そうなんだけど……」
「そういえば、手が生えたのって、タカさんが触ってからですよね!」
「おい!」
「最初はピンク色になって。もう一回触ったら紫色になって」
「ちょ、ちょっと!」
「その後で手が生えてて」
グランマザーの分体は、手は疑似的に出現するのだと言った。
一時的に量子を操って手を形成し、その後消えるのだと言う。
《よくは分かりませんが、手も羽もアレが必要だと判断したのでしょう。どういう必要だったかは分かり兼ねますが》
「手は「ヒモダンス」を踊るために……」
俺は亜紀ちゃんの頭を引っぱたいた。
「とにかく、大体のことは分かった。ただ、「アレ」っていうのはどうなんだ? ちゃんとした名称もあるんだろう?」
《はい、ございます。ですが地球人の発音ではどうも理解し難いようですので》
「なるほど。意味が近いものがあるか?」
《はい、「イエス・キリスト」が最も近いかと》
「「!」」
《三位一体の教義がアレには当てはまります。そして知的生命体を次のステージへ進める時に……》
「もういい! それは俺たちが知るべきことではないだろう」
《かしこまりました。仰る通りかと思います。ただ、石神様が大いなる使命をお持ちの方だということは》
「俺はそんなことは知らないよ。俺は大事なものを守りたいだけだ」
《さようでございましたね》
グランマザーの分体は帰った。
何にしてもだ。
「柱」たちを早乙女に押し付けたのは、何ら間違いではなかったということだ。
「小柱」の羽は気になるが、まあ良いことなのだろう。
それにしても、やっぱり不気味な連中だと思った。
1
お気に入りに追加
228
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
NPO法人マヨヒガ! ~CGモデラーって難しいんですか?~
みつまめ つぼみ
キャラ文芸
ハードワークと職業適性不一致に悩み、毎日をつらく感じている香澄(かすみ)。
彼女は帰り道、不思議な喫茶店を見つけて足を踏み入れる。
そこで出会った青年マスター晴臣(はるおみ)は、なんと『ぬらりひょん』!
彼は香澄を『マヨヒガ』へと誘い、彼女の保護を約束する。
離職した香澄は、新しいステージである『3DCGモデラー』で才能を開花させる。
香澄の手が、デジタル空間でキャラクターに命を吹き込む――。
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
人形の中の人の憂鬱
ジャン・幸田
キャラ文芸
等身大人形が動く時、中の人がいるはずだ! でも、いないとされる。いうだけ野暮であるから。そんな中の人に関するオムニバス物語である。
【アルバイト】昭和時代末期、それほど知られていなかった美少女着ぐるみヒロインショーをめぐる物語。
【少女人形店員】父親の思い付きで着ぐるみ美少女マスクを着けて営業させられる少女の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる