富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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御堂家 防衛戦

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 「よう、御堂! 変わりないか?」
 「ああ、石神。何も無いよ。あと二週間だよな、うちに来るのは」

 俺は亜紀ちゃんとドライブから帰った後で、御堂に電話をした。

 「オロチたちも元気か!」
 「アハハハハ! お前が来ないと姿を滅多に現わさないよ」
 「そうか。でもたまには見るのか?」
 「ああ。石神の話をしている時とかにな。いつの間にか窓の外にいるんだ」
 「ちょっと怖ぇな」
 「アハハハハハハ! でもうちの守り神だからな。姿が見れるのは嬉しいよ」
 「そうか。お前は度胸があるからなぁ」
 「そんなことは。まあ、お前と一緒にいたからな」
 「なんだよ、それは」

 二人で笑った。

 「まあ、こっちもいつも通りだ。何かあったらすぐに連絡してくれな」
 「ああ、分かってる。じゃあ、楽しみにしてるよ」
 「俺もな。じゃあ、また」

 電話を切った。
 もう夜の10時だ。
 向こうは夜が早い。
 もう御堂も普段なら寝ていたのかもしれない。
 
 亜紀ちゃんが風呂に誘いに来た。

 「タカさーん! はやくー!」
 「分かったよ!」

 




 御堂の家が襲われたのは、この三日後だった。





 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■





 「宇羅。デュラハンがやられたそうだな」
 「「業」様! なにとぞ、もう一度チャンスを!」
 「結局、あれでも何も分からなかったのだな」
 「はい! また爪でやられたということだけで」
 
 ザハ・ハディッドの異様な椅子の後ろで、黒い霧が舞っていた。
 宇羅は蒼白になり、息を止めた。
 手で口を塞げば、「業」の不興を買う。
 それだけは避けねばならない。

 「相当な爪だな。デュラハンの鎧を貫くとはな」
 「はい。でも、恐らくはその「爪」に特化したものと思われます。さもなければ、デュラハンを貫くことは出来ますまい」
 「そうか。でも油断するな。あいつは底が知れない。この俺でも躊躇することもある」
 「そのような」

 小さく呼吸し、宇羅は何とか「業」と話した。

 「宇羅」
 「はい!」
 「次は必ずやれ。あいつの大事なものを奪うのだ」
 「はっ!」

 「御堂の家を潰せ。皆殺しにしろ」
 「はい! 必ず!」
 「あそこには、あいつが作った防衛システムがある」
 「はい。しかし、我々にはほとんどが些事。恐るるに足りません」
 「それに蛇がいる。あの蛇は未知数だ。何度か威力を見ているが、大きな力を持っている」
 「はい」
 「「Esprit arc(弓の精霊)」と「Chevalier du cristal(水晶の騎士)」を使え。ミハイロフにジェヴォーダンとバイオノイドの軍勢を出すように言っておく」
 「は!」
 
 「まだ俺たちの準備は整っていない。俺の能力も足りないし、物資の不足が続いている」
 「はい」
 「ミハイロフの計画も大分遅れているようだ。今は御堂家の攻撃で満足するしかない」
 「はい」
 「だからこそ、必ずやり遂げろ。いいな」
 「あの二体が揃って、不可能はございません」
 「そうか。では三日後に」
 「はい、畏まりました!」

 宇羅は「業」の部屋を下がった。
 廊下を曲がるまで、息を止めていた。

 (一体、何呼吸したことか。どれほど、あれを吸い込んだ?)

 宇羅はやっと大きく息を吸った。

 (急がねば。ミハイロフは移送の準備を進めているか)

 宇羅は、自分の胸から伝わる、異物感を感じていた。
 胸に当てた手が濡れた。
 涙だった。
 そのようなものが残っていたことに、宇羅自身が驚いた。

 裏は長い廊下を進み、二体の魔獣の調整に向かった。





 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 御堂正嗣は、元海兵隊のジェイと話していた。

 「夕べ、石神から夜の十時に電話が来ました」
 「そうですか。それは何か危険が迫っているということですね」
 「うん、そう思います。あいつは僕のことを思って、深夜に連絡することはありません。緊急の場合は別ですが、他愛ない夏休みの予定の話でした」
 「ならば、敵に悟らせない必要があったということですね」
 「はい。会話の中で「何かあったら連絡するように」ということを言っていました。何かがあるのだと思います」
 「分かりました。我々も準備します。タイガーも十分なことをしているでしょうが、我々が絶対に御堂家の皆さんをお守りしますよ」
 「お願いします。それとジェイさんたち自身も」
 「アハハハハ! タイガーと一緒に戦うと言った俺たちです。どんな戦闘も勝って見せますよ」

 「マンモスの牙隊」。
 ジェイが率いる100名の精鋭は、双子に直接戦闘訓練を受けた10名の小隊長と総指揮官ジェイのチームだった。
 全員が銃火器はもちろん、「花岡」を使う。
 小隊長たちは「槍雷」までの中級の技が扱えた。
 ジェイは双子から直接「ブリューナク」までの上級技も習得している。

 そして、石神から特別に貸与された武器、「カサンドラ」のプロトタイプが全員に配られた。
 プラズマを発生させるもので、ガンモードで凡そ50発、近接戦のソードモードで連続3分、全長50メートルのロングソードモードで連続20秒。
 この武器だけで戦い抜くことは困難なので、使用に当たっては総指揮官ジェイの指示が必要となる。
 もう一つ。
 「花岡」の技を防ぎ、ある程度の防弾性能のある「Ωスーツ」を全員着用する。
 


 翌日、御堂家の柳が帰郷した。
 
 「お父さん!」
 「柳! どうしたんだ!」
 
 突然の柳の帰宅に、御堂は驚いた。

 「石神さんがね、うちが狙われてるって言ってたの」
 「そうか。そうだと思って、ジェイさんたちと準備していた所なんだ」
 「さすが、お父さん!」
 「石神が夜遅くに電話して来たから。そうだと思ったんだ」
 「凄いね!」

 柳は御堂の部屋で報告した。

 「石神さんがね、一昨日ヘンな夢を見たの」
 「夢?」
 「うん。私たちがイモムシになって死んじゃう夢。それでね、石神さんの大事な人間が襲われるって予感したらしいの」
 「そうか。よくは分からないが、石神ならば何か感じたんだろう」
 「そう。ああ、でもね、石神さんが、お父さん以外に話す場合には、きちんと情報を掴んだって言うようにって」
 「分かった。親父たちは夢でと言うんじゃ信憑性に欠けるからね」
 「うん!」

 柳は嬉しそうに笑った。
 石神と御堂との信頼関係の強さが嬉しかった。

 「それで、石神はどんな襲撃だって言ってたか?」
 「多分、ジェヴォーダンだって。前は海でのものだったけど、今度は陸戦タイプだって言ってた」
 「そうか。大きな怪物だね。他には?」
 「「業」に改造された兵士。「花岡」を使うし、武器も扱えるものだろうって」
 「分かった」
 「ジェヴォーダンは10頭以上、兵士は100くらいは来るんじゃないかって言ってた」
 「それは恐ろしいな」
 「そこまでなら、うちの防衛システムで対応できるし、オロチが守れるだろうと言ってたよ?」
 「分かった」
 「それに、襲われたらすぐに石神さんたちが「飛んで」来るから。私たちは地下の防衛施設にいればいいから」
 「うん」
 「ジェイさんたち「マンモスの牙隊」の人たちは、一応戦闘に加わるけど、被害が出る前に、一緒に防衛施設に潜るようにって」
 「うん、そう伝えよう」

 柳は石神に言われたことを御堂に全部伝えた。

 「あとね、攻撃はそれだけじゃない可能性もあるって、石神さんが」
 「え? まだあるの?」
 「石神さんも確信はしてなかった。だけど、嫌な予感の大きさから、もしかしたらもっと別な攻撃があるかもしれないんだって」
 「どういうものなんだい?」
 「石神さんは、霊的な攻撃だって言ってた。前に道間麗星さんが対処もしてくれてたけど、突破される可能性が高いんだって」
 「そうか」
 
 御堂は想像出来なかった。

 「でもね、そっちも石神さんが手を打っているから安心して欲しいって」
 「そうか。じゃあ安心だ」
 
 柳は御堂を見詰めた。

 「もう。お父さんたちって、本当に信頼し合ってるのね」
 「もちろんだよ。石神が大丈夫だって言うなら、本当にそうだ」
 「アハハハハ! じゃあ、私も安心する」
 「うん。でもね、柳は石神の所へ戻りなさい」
 「え!」
 「ここが戦場になるのが分かっているだから、念のためだよ」

 柳が微笑んだ。

 「私はここにいるよ」
 「柳……」
 「だって石神さんが言ってたもん」
 「何て?」
 「私は今週の「オロチ当番」なんだって!」
 「!」

 一瞬御堂は驚いたが、すぐに声を挙げて笑った。

 「分かった。じゃあ、柳もしっかり頼むよ」
 「任せて!」

 その後、御堂と柳によって、全家族と使用人たち、「マンモスの牙隊」に詳細な石神の話が伝えられた。
 防衛戦の対応はジェイによって為された。
 御堂家の人間たちは、いつでも地下の防衛施設に避難できるように言われた。
 食糧や飲料の備蓄は十分にあったが、さらに生鮮品などが追加された。
 御堂の家族たちは、逸早く防衛施設に入った。

 「ああ、こうなると、早く襲って欲しいね」
 「お父さん!」

 みんなが笑った。




 翌日。
 東京で「太陽界」の大規模なテロが起きた。
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