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SIDE:RIBES《サイド:リベス》
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SIDE:RIBES《サイド:リベス》
聖女リエナとの出会いは、一年前だった。
パシュル国を訪問した際、【蕾を花に成長させる】所を見た。
正直、つまらない能力だと思った。
見栄えは良いが、俺には必要ない。
そう思っていた。
しかし、ベルシナ国第二王子であるルーマスが聖女リエナに心酔しているという噂がパシュル国にまで届いた。
そして、その情報を交易に利用出来るか見定めるためにもう一度訪問したベルシナ国では、聖女リエナの信者が数え切れないほど存在した。
そして、ある従者に聖女リエナを調査させると、従者は何故か聖女リエナに心酔して戻ってきた。
聖女リエナは使えるかもしれない。
そう考えた私は、聖女リエナに手紙でカマをかけた。
何故手紙だったかというと彼女と話した者だけが彼女に心酔していたからだ。
「聖女リエナへ
言葉で人を操るのは楽しいかい?」
彼女はすぐにその罠に引っかかり、こちらを味方にしようとした。
「リベス殿下
私はただ皆に愛されたいだけですわ。パシュル国に害を与えるつもりなどないのです。
もしよろしければ、力をお貸ししましょう。
その代わり、私にも手を貸して下さいませ」
彼女はズル賢い人間だった。
自身の聖女の力と引き換えに、私の協力を求めた。
しかし、それで良かった。
私は優しい人間などではない。
パシュル国が良くなるためならばなんでもする、その覚悟で生きているのだから。
聖女リエナの力は使える。
私は聖女リエナと手を組んだ。
すぐに彼女を信頼するつもりはないが、今は協力するのが妥当だろう。
彼女はすぐに私にあることを依頼した。
「公爵令嬢エイリル・フォンリースを【殺害】して下さい」
それがパシュル国のためになるのならばと、私はすぐに行動に移した。
学園を追放されたエイリル・フォンリースを【わざと馬車の事故で殺した】。
馬車の車輪に細工をするよう臣下に命じたのだ。
しかし、エイリル・フォンリースの死亡を確認するために向かった時に、信じられない光景を目にした。
一度は傷だらけだったエイリル・フォンリースの身体が、辺りが光に包まれると同時に無傷に変わった。
その時、何故聖女リエナがエイリル・フォンリースの殺害を依頼したのか分かった。
エイリル・フォンリースも聖女である。
そして、聖女リエナが存在を邪魔に思うほどの能力を持っているのだ。
私は聖女リエナに馬車の事故を起こしたが、事故は失敗に終わったと伝えた。
聖女リエナは少し怒った様子だったが、私に自身の性格や能力を明かされることを恐れたのか深くは追求しなかった。
その後、わざと偶然を装って出会ったエイリルの第一印象はただつまらない人物だった。
しかし・・・・
「どうして?今のは怒ったんじゃくて、助けてくれたんでしょう?」
彼女はただ優しいだけの人間ではないのかもしれない。
いや、ただの優しい人間でも構わなかった。
その人柄は、私が持ち合わせていない眩《まばゆ》い輝きを放っていた。
パシュル国のために彼女を事故に合わせた。
我が国のためだと、間違ったことをしたつもりなどなかった。
しかし、何故だろう。
彼女を事故に合わせた自分を後悔した。
エイリルの聖女の力はまだ分からない。
ただあの時、ベルシナ国の水不足に真剣に向き合う彼女をみた時、何故か彼女の祈りが届いて欲しいと思ってしまった。
「まずは祈ってみたらどう?雨を降らせて下さいって」
ただの悪戯のような助言で、彼女は本当に雨を降らせた。
彼女の聖女の力は未だ底知れない。
聖女リエナの方が役に立つのかも知れない。
エイリルに述べた助言が頭をよぎる。
「国は優しさだけじゃどうにも出来ない。回っていかない。だから、まずは自分の実力を知って出来る範囲を考えることだ」
今、自分のことを分かっていないのは俺の方だ。
優しさなど、もっと言えば私情など、王族の私に必要ないのだ。
この気持ちは要らない。
エイリルの願いが叶って欲しいなど、彼女の笑顔が見てみたいなど、そんな気持ちは要らない。
絶対に要らないはずだ。
そう言い聞かせる自分がとても滑稽《こっけい》に感じた。
聖女リエナとの出会いは、一年前だった。
パシュル国を訪問した際、【蕾を花に成長させる】所を見た。
正直、つまらない能力だと思った。
見栄えは良いが、俺には必要ない。
そう思っていた。
しかし、ベルシナ国第二王子であるルーマスが聖女リエナに心酔しているという噂がパシュル国にまで届いた。
そして、その情報を交易に利用出来るか見定めるためにもう一度訪問したベルシナ国では、聖女リエナの信者が数え切れないほど存在した。
そして、ある従者に聖女リエナを調査させると、従者は何故か聖女リエナに心酔して戻ってきた。
聖女リエナは使えるかもしれない。
そう考えた私は、聖女リエナに手紙でカマをかけた。
何故手紙だったかというと彼女と話した者だけが彼女に心酔していたからだ。
「聖女リエナへ
言葉で人を操るのは楽しいかい?」
彼女はすぐにその罠に引っかかり、こちらを味方にしようとした。
「リベス殿下
私はただ皆に愛されたいだけですわ。パシュル国に害を与えるつもりなどないのです。
もしよろしければ、力をお貸ししましょう。
その代わり、私にも手を貸して下さいませ」
彼女はズル賢い人間だった。
自身の聖女の力と引き換えに、私の協力を求めた。
しかし、それで良かった。
私は優しい人間などではない。
パシュル国が良くなるためならばなんでもする、その覚悟で生きているのだから。
聖女リエナの力は使える。
私は聖女リエナと手を組んだ。
すぐに彼女を信頼するつもりはないが、今は協力するのが妥当だろう。
彼女はすぐに私にあることを依頼した。
「公爵令嬢エイリル・フォンリースを【殺害】して下さい」
それがパシュル国のためになるのならばと、私はすぐに行動に移した。
学園を追放されたエイリル・フォンリースを【わざと馬車の事故で殺した】。
馬車の車輪に細工をするよう臣下に命じたのだ。
しかし、エイリル・フォンリースの死亡を確認するために向かった時に、信じられない光景を目にした。
一度は傷だらけだったエイリル・フォンリースの身体が、辺りが光に包まれると同時に無傷に変わった。
その時、何故聖女リエナがエイリル・フォンリースの殺害を依頼したのか分かった。
エイリル・フォンリースも聖女である。
そして、聖女リエナが存在を邪魔に思うほどの能力を持っているのだ。
私は聖女リエナに馬車の事故を起こしたが、事故は失敗に終わったと伝えた。
聖女リエナは少し怒った様子だったが、私に自身の性格や能力を明かされることを恐れたのか深くは追求しなかった。
その後、わざと偶然を装って出会ったエイリルの第一印象はただつまらない人物だった。
しかし・・・・
「どうして?今のは怒ったんじゃくて、助けてくれたんでしょう?」
彼女はただ優しいだけの人間ではないのかもしれない。
いや、ただの優しい人間でも構わなかった。
その人柄は、私が持ち合わせていない眩《まばゆ》い輝きを放っていた。
パシュル国のために彼女を事故に合わせた。
我が国のためだと、間違ったことをしたつもりなどなかった。
しかし、何故だろう。
彼女を事故に合わせた自分を後悔した。
エイリルの聖女の力はまだ分からない。
ただあの時、ベルシナ国の水不足に真剣に向き合う彼女をみた時、何故か彼女の祈りが届いて欲しいと思ってしまった。
「まずは祈ってみたらどう?雨を降らせて下さいって」
ただの悪戯のような助言で、彼女は本当に雨を降らせた。
彼女の聖女の力は未だ底知れない。
聖女リエナの方が役に立つのかも知れない。
エイリルに述べた助言が頭をよぎる。
「国は優しさだけじゃどうにも出来ない。回っていかない。だから、まずは自分の実力を知って出来る範囲を考えることだ」
今、自分のことを分かっていないのは俺の方だ。
優しさなど、もっと言えば私情など、王族の私に必要ないのだ。
この気持ちは要らない。
エイリルの願いが叶って欲しいなど、彼女の笑顔が見てみたいなど、そんな気持ちは要らない。
絶対に要らないはずだ。
そう言い聞かせる自分がとても滑稽《こっけい》に感じた。
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