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物語の欠片
アイオライトの決意(ブラ約)
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リーゼは焦っていた。
「陽和」
「リーゼ…?」
茜色の空を見つめるリーゼは応急処置の道具を用意する。
玄関を出たところで怪我をした白猫を発見したからだ。
「その子、血が……」
「何があったかは分からないけど、その子はリリーの友だちなの。早く手当てしないと大変なことになる」
真っ白な毛並みに宝石のような輝きを放つ瞳…そして、瞳と同じような色の首輪がついた子猫。
陽和はリーゼの腕の中にいる子をじっと見つめているものの、不安げに瞳を揺らす。
「心配しなくてもすぐ治る」
「本当ですか…?」
「私は嘘が嫌いだから、絶対に治す」
リーゼは慣れた手つきでてきぱきと処置をすませる。
そのうち、子猫はすやすや寝息をたてはじめた。
「すごいです。魔法みたいですね」
「そんなことはないと思うけど…あなたに褒められるのは気分がいい」
陽和は少しだけ微笑んで、心配そうに猫の方を覗きこんだ。
「この子のお名前、なんていうんですか?」
「ネージュ。リリーがいつもそう呼んでる」
「そうなんですね。…早くネージュが元気になりますように」
陽和の祈りにほっこりしていたリーゼだったが、ある重要なことに気づく。
「ごめんなさい。少し外に出てくる」
「そう、なんですね。い、いってらっしゃいませ」
「すぐ戻るから、それまでネージュといい子にしてて」
「はい」
陽和が寂しがっているのは理解していたが、この猫が運んできた手紙に書かれていたことが本当なら今はリリーを捜さなければならない。
夜道をひたすら走って、人里離れた場所で横たわる友人の姿をとらえる。
その頃空にはもうすでに星が散りばめられていた。
「リリー」
「ああ…やあ、リーゼ」
血液パックを握りしめたまま体を起こしたリリーの顔色は決していいとは言えない。
だが、クロウ伝手に報告が届いた時点でリーゼは準備を進めていた。
「取り敢えずこれを飲んで。話はそれから」
「分かった。…ネージュは元気かな?」
「何者かに切りつけられた痕があったから手当てして寝かせてる。
森の奥なら人間は来ないだろうから少しは安全なはず。…歩ける?」
リリーはリーゼの問いかけに爽やかな笑顔で答える。
「ありがとう、助かったよ。僕たちは頑丈だから、このままいれば大丈夫だよ」
ゆっくり立ちあがるリリーに肩を貸し、リーゼはそのまま歩き出す。
このまま人間に見つかってしまうと厄介なことになるからだ。
無事にパックから血液を摂取したリリーの傷はほとんどふさがっている。
「君の見立てどおり、犯人はふたり以上いるらしい。ひとりの相手をしていたら、背後からもうひとりが銃を向けたんだ。
それから、首を切りつけられて…普通の人間なら即死だったかもしれない」
「……そう」
興味なさげに言ったものの、その言葉には心配が見え隠れしている。
なんとか家に辿り着いて扉を開けると、とたとたと陽和が走ってきた。
「リーゼ、おかえりなさい。それから…リリーさん、こんばんは」
「もしかして、君がずっとお世話していてくれたのかな?」
「近くで見ていることしかできませんでした…ごめんなさい」
リリーに視線を向けられて、そんなことはないとリーゼは首を横にふる。
自分が家を出るときにはかけられていなかった小さめの毛布がネージュにかけられていて、体の汚れを拭いたであろうタオルがその場に落ちていた。
「私だけでは気が回らなかったから助かった」
「私は全然、大したことは…」
「あなたにとってそうでも、私にとってはありがたい」
「僕にとってもありがたいよ」
ぱっと明るい笑顔を見せる陽和の姿にほっとしつつ、リーゼは事件のことが気になっていた。
陽和が台所へ行ったすきにリリーから少し話を聞き出す。
「吸血鬼事件、解決できそう?」
「今はまだ難しいかな。僕の権限では動けないような位置に犯人がいるみたいなんだ」
「…権力者の遊び」
「そういうことになるね。贄の儀を復活させようとするほど野蛮な人間たちだ、何を考えていても不思議じゃない」
「それもそうね。贄たちから恩恵を受けているのは人間の方なのに」
ふたりはそこまでで話を切りあげ、お茶を淹れてくれた陽和に笑顔で接する。
「今晩はリリーをあの部屋に泊める」
「分かりました。あの、私にお手伝いできることはありませんか?」
「いつもどおりいてくれればいい。特別なことをしなくても、あなたがいてくれるだけで充分だから」
「あ、はい…」
ほわほわした様子の陽和は楽しそうに夜食を作っている。
そんな姿を見ているだけで、リーゼは幸せなのだ。
「彼女は事件のことを知らないんだね」
「知らなくていい。もうこれ以上人間の醜さなんて見てほしくない」
ふたりがそんな会話をしていたのを知っているのは、細目を開けた白猫だけだ。
巷で騒ぎになっている事件など耳に入れたくないと話すリーゼに、リリーは小声で囁く。
「本当に大切なんだね」
「もう二度と後悔はしたくないから」
リーゼの瞳には決意の色がこめられている。
星々を閉じこめたような瞳を前に、リリーは何も言葉をかけられなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
曖昧な雰囲気になってしまいましたが、ブラ約の続きを綴ってみました。
「陽和」
「リーゼ…?」
茜色の空を見つめるリーゼは応急処置の道具を用意する。
玄関を出たところで怪我をした白猫を発見したからだ。
「その子、血が……」
「何があったかは分からないけど、その子はリリーの友だちなの。早く手当てしないと大変なことになる」
真っ白な毛並みに宝石のような輝きを放つ瞳…そして、瞳と同じような色の首輪がついた子猫。
陽和はリーゼの腕の中にいる子をじっと見つめているものの、不安げに瞳を揺らす。
「心配しなくてもすぐ治る」
「本当ですか…?」
「私は嘘が嫌いだから、絶対に治す」
リーゼは慣れた手つきでてきぱきと処置をすませる。
そのうち、子猫はすやすや寝息をたてはじめた。
「すごいです。魔法みたいですね」
「そんなことはないと思うけど…あなたに褒められるのは気分がいい」
陽和は少しだけ微笑んで、心配そうに猫の方を覗きこんだ。
「この子のお名前、なんていうんですか?」
「ネージュ。リリーがいつもそう呼んでる」
「そうなんですね。…早くネージュが元気になりますように」
陽和の祈りにほっこりしていたリーゼだったが、ある重要なことに気づく。
「ごめんなさい。少し外に出てくる」
「そう、なんですね。い、いってらっしゃいませ」
「すぐ戻るから、それまでネージュといい子にしてて」
「はい」
陽和が寂しがっているのは理解していたが、この猫が運んできた手紙に書かれていたことが本当なら今はリリーを捜さなければならない。
夜道をひたすら走って、人里離れた場所で横たわる友人の姿をとらえる。
その頃空にはもうすでに星が散りばめられていた。
「リリー」
「ああ…やあ、リーゼ」
血液パックを握りしめたまま体を起こしたリリーの顔色は決していいとは言えない。
だが、クロウ伝手に報告が届いた時点でリーゼは準備を進めていた。
「取り敢えずこれを飲んで。話はそれから」
「分かった。…ネージュは元気かな?」
「何者かに切りつけられた痕があったから手当てして寝かせてる。
森の奥なら人間は来ないだろうから少しは安全なはず。…歩ける?」
リリーはリーゼの問いかけに爽やかな笑顔で答える。
「ありがとう、助かったよ。僕たちは頑丈だから、このままいれば大丈夫だよ」
ゆっくり立ちあがるリリーに肩を貸し、リーゼはそのまま歩き出す。
このまま人間に見つかってしまうと厄介なことになるからだ。
無事にパックから血液を摂取したリリーの傷はほとんどふさがっている。
「君の見立てどおり、犯人はふたり以上いるらしい。ひとりの相手をしていたら、背後からもうひとりが銃を向けたんだ。
それから、首を切りつけられて…普通の人間なら即死だったかもしれない」
「……そう」
興味なさげに言ったものの、その言葉には心配が見え隠れしている。
なんとか家に辿り着いて扉を開けると、とたとたと陽和が走ってきた。
「リーゼ、おかえりなさい。それから…リリーさん、こんばんは」
「もしかして、君がずっとお世話していてくれたのかな?」
「近くで見ていることしかできませんでした…ごめんなさい」
リリーに視線を向けられて、そんなことはないとリーゼは首を横にふる。
自分が家を出るときにはかけられていなかった小さめの毛布がネージュにかけられていて、体の汚れを拭いたであろうタオルがその場に落ちていた。
「私だけでは気が回らなかったから助かった」
「私は全然、大したことは…」
「あなたにとってそうでも、私にとってはありがたい」
「僕にとってもありがたいよ」
ぱっと明るい笑顔を見せる陽和の姿にほっとしつつ、リーゼは事件のことが気になっていた。
陽和が台所へ行ったすきにリリーから少し話を聞き出す。
「吸血鬼事件、解決できそう?」
「今はまだ難しいかな。僕の権限では動けないような位置に犯人がいるみたいなんだ」
「…権力者の遊び」
「そういうことになるね。贄の儀を復活させようとするほど野蛮な人間たちだ、何を考えていても不思議じゃない」
「それもそうね。贄たちから恩恵を受けているのは人間の方なのに」
ふたりはそこまでで話を切りあげ、お茶を淹れてくれた陽和に笑顔で接する。
「今晩はリリーをあの部屋に泊める」
「分かりました。あの、私にお手伝いできることはありませんか?」
「いつもどおりいてくれればいい。特別なことをしなくても、あなたがいてくれるだけで充分だから」
「あ、はい…」
ほわほわした様子の陽和は楽しそうに夜食を作っている。
そんな姿を見ているだけで、リーゼは幸せなのだ。
「彼女は事件のことを知らないんだね」
「知らなくていい。もうこれ以上人間の醜さなんて見てほしくない」
ふたりがそんな会話をしていたのを知っているのは、細目を開けた白猫だけだ。
巷で騒ぎになっている事件など耳に入れたくないと話すリーゼに、リリーは小声で囁く。
「本当に大切なんだね」
「もう二度と後悔はしたくないから」
リーゼの瞳には決意の色がこめられている。
星々を閉じこめたような瞳を前に、リリーは何も言葉をかけられなかった。
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曖昧な雰囲気になってしまいましたが、ブラ約の続きを綴ってみました。
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