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秋久ルート
第56話
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「そういえば、月見は朝食にご飯とパン、どっちなら嬉しい?」
「どちらも好きです。あ…できればご飯がいいです」
「奇遇だな。俺もだ」
そんな話をしながら、ゆっくりご飯を食べる。
今までずっと、こんなふうに誰かと話して温かいご飯を食べられる毎日があるなんて思っていなかった。
私はこういう時間が好きなんだと思う。
今までなかったからか、秋久さんがいるからかは分からないけれど、私の心は平穏だ。
「今日は少し時間があるし、月見さえよければ一緒に出掛けないか?」
そんな話に少しだけ驚いてしまう。
「お出掛け、ですか?」
「ああ。といっても、甘栗に外の景色を見せるだけなんだが…気が向かないなら無理にとは言わない」
「行きたいです」
「決まりだな」
秋久さんの笑顔はやっぱり眩しい。
彼なら私をどこまでも連れ出してくれるような気がした。
ご飯を食べ終わってしばらくしてから、彼に声をかけられる。
「そろそろ行けそうか?」
「は、はい」
「こっちだ」
秋久さんに言われるがままついていくと、綺麗な噴水がある公園へ辿り着いた。
「こんな場所があったなんて、知りませんでした」
「このあたりには抜け道が沢山あるんだ。カフェにスーパー、雑貨屋…大抵なんでもある」
お店が沢山あることも知らなかった。
秋久さんから離れすぎたら迷子になりそうだ。
「甘栗、頼むからもう少し大人しくしててくれ」
いい天気だからか、甘栗は体を起こして秋久さんの腕でじたばた動きはじめた。
「楽しいんでしょうか?」
「多分そうだ。こいつは一旦遊びだすと周りが見えなくなりがちだから、心配ではあるが…多分大丈夫だろう」
私には、ずっと気になっていたことがある。
「あの…秋久さん」
「どうした?」
「甘栗は、右耳が聞こえていないんですか?」
足があまり強くないという話は前に聞いたことがあったけれど、それ以外にもあるんじゃないかと思った。
左側から話しかけると反応がいいのに、右側からだとかなり近づかないとぴくりとも動かない。
「…よく分かったな。正確には難聴ってやつだ。全く聞こえないわけじゃない。大声で呼べば右側からでも反応することはある。
ただ、この状態じゃ野生では生きていけない。身勝手な人間が甘栗を傷つけた結果だ」
そう話す秋久さんは苦しそうだ。
自分がもっと早く犯人を捕まえられていたら…と思っているのかもしれない。
「今、甘栗はきっと幸せです」
「ん?」
「秋久さんに大切に思われて、とても楽しそうです」
どんなことがあったのかなんて想像もできない。
だから、今の私にできるのは秋久さんの心に寄り添うことくらいだ。
「私も、秋久さんたちに助けていただいてばかりで…」
どんな反応がかえってくるか怖かったけれど、秋久さんはただ優しく抱きしめてくれた。
「月見はすごいな。いつも俺の心を軽くしてくれる」
「どちらも好きです。あ…できればご飯がいいです」
「奇遇だな。俺もだ」
そんな話をしながら、ゆっくりご飯を食べる。
今までずっと、こんなふうに誰かと話して温かいご飯を食べられる毎日があるなんて思っていなかった。
私はこういう時間が好きなんだと思う。
今までなかったからか、秋久さんがいるからかは分からないけれど、私の心は平穏だ。
「今日は少し時間があるし、月見さえよければ一緒に出掛けないか?」
そんな話に少しだけ驚いてしまう。
「お出掛け、ですか?」
「ああ。といっても、甘栗に外の景色を見せるだけなんだが…気が向かないなら無理にとは言わない」
「行きたいです」
「決まりだな」
秋久さんの笑顔はやっぱり眩しい。
彼なら私をどこまでも連れ出してくれるような気がした。
ご飯を食べ終わってしばらくしてから、彼に声をかけられる。
「そろそろ行けそうか?」
「は、はい」
「こっちだ」
秋久さんに言われるがままついていくと、綺麗な噴水がある公園へ辿り着いた。
「こんな場所があったなんて、知りませんでした」
「このあたりには抜け道が沢山あるんだ。カフェにスーパー、雑貨屋…大抵なんでもある」
お店が沢山あることも知らなかった。
秋久さんから離れすぎたら迷子になりそうだ。
「甘栗、頼むからもう少し大人しくしててくれ」
いい天気だからか、甘栗は体を起こして秋久さんの腕でじたばた動きはじめた。
「楽しいんでしょうか?」
「多分そうだ。こいつは一旦遊びだすと周りが見えなくなりがちだから、心配ではあるが…多分大丈夫だろう」
私には、ずっと気になっていたことがある。
「あの…秋久さん」
「どうした?」
「甘栗は、右耳が聞こえていないんですか?」
足があまり強くないという話は前に聞いたことがあったけれど、それ以外にもあるんじゃないかと思った。
左側から話しかけると反応がいいのに、右側からだとかなり近づかないとぴくりとも動かない。
「…よく分かったな。正確には難聴ってやつだ。全く聞こえないわけじゃない。大声で呼べば右側からでも反応することはある。
ただ、この状態じゃ野生では生きていけない。身勝手な人間が甘栗を傷つけた結果だ」
そう話す秋久さんは苦しそうだ。
自分がもっと早く犯人を捕まえられていたら…と思っているのかもしれない。
「今、甘栗はきっと幸せです」
「ん?」
「秋久さんに大切に思われて、とても楽しそうです」
どんなことがあったのかなんて想像もできない。
だから、今の私にできるのは秋久さんの心に寄り添うことくらいだ。
「私も、秋久さんたちに助けていただいてばかりで…」
どんな反応がかえってくるか怖かったけれど、秋久さんはただ優しく抱きしめてくれた。
「月見はすごいな。いつも俺の心を軽くしてくれる」
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