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秋久ルート
第54話
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「悪いな、かなり待たせた」
「いえ…」
点滴が終わって部屋にいたところに秋久さんがやってきて、開口一番そんなことを言う。
待つ必要があるならいくらでも待つ。
ただ、秋久にもっとちゃんと休んでほしい。
「あの、秋久さん」
「どうした?」
「これから、私と一緒に寝ませんか?」
考えた末、私が口にできたことはそれだけだった。
すぐ答えが返ってくると思ったのに、秋久さんはぽかんと口を開けて固まっている。
やっぱり私が一緒じゃ迷惑だったんだ…そう思っていると、彼はよく分からない笑みを浮かべて複雑そうな顔をした。
「月見、その言い方だとちょっと違う意味に聞こえる」
「違う意味、ですか?」
どんなふうに聞こえたんだろう…そんなことをぼんやり考えたけれど、秋久さんの柔らかい視線に気づいて向き直る。
「口では上手く説明できないが、他の奴には同じことを言わないように」
「…?分かりました」
このまま彼を見送ったら、本当に休んでもらえないかもしれない。
なんとか引き止めたくて腕を触る。
「どうした?」
「えっと、その…」
「月見が心配してるようなことはおきない。体が頑丈だからな」
「嫌です」
心配させないように言ってくれているのは分かる。
ただ、もっと心配させてほしいし寝てほしい。
「秋久さんが倒れてしまったら、辛いです。だから、今から一緒に寝てほしくて…駄目ですか?」
「そんな目で見られたら断れないな… 」
秋久さんは苦笑いしながらベッドに入った。
「寝るんだろ?月見も寝られるし一石二鳥だ」
「ありがとうございます」
彼のすぐ隣で横になると、だんだん恥ずかしくなってくる。
どうすればいいのか分からなくて固まってしまいそうになるけれど、じっと彼の方を見つめた。
「あ、あの…」
「手を繋いでおくか」
「ごめ…ありがとうございます」
どうしてこの人には私が考えていることが分かるんだろう。
こうしたい、してほしくない…どんな気持ちも見破られてしまう気がする。
「まさか一緒に寝ようなんて言われるとは思わなかった」
「ごめんなさい」
「いや。それが優しさからだと分かっているから問題ない。
ただ、月見はちゃんと寝ているのか気になったんだ」
本当はいつも眠れなくて起きている。
どのくらい前からか、いきなり寝るなと言われたり叩き起こされたりした。
だから、今でもこの場所にあるふかふかのベッドに慣れない。
「相変わらず随分懐いてるみたいだな、甘栗は」
「そうだといいんですけど…今日も秋久さんがいなくて寂しがっていました」
「そうか。最近仕事で空けることが多かったからな…この埋め合わせはどこかでする」
しばらく話していたけれど、いつの間にか眠ってしまっていた。
目を開けると、視界に優しい寝顔がはいる。
「あ…」
「いえ…」
点滴が終わって部屋にいたところに秋久さんがやってきて、開口一番そんなことを言う。
待つ必要があるならいくらでも待つ。
ただ、秋久にもっとちゃんと休んでほしい。
「あの、秋久さん」
「どうした?」
「これから、私と一緒に寝ませんか?」
考えた末、私が口にできたことはそれだけだった。
すぐ答えが返ってくると思ったのに、秋久さんはぽかんと口を開けて固まっている。
やっぱり私が一緒じゃ迷惑だったんだ…そう思っていると、彼はよく分からない笑みを浮かべて複雑そうな顔をした。
「月見、その言い方だとちょっと違う意味に聞こえる」
「違う意味、ですか?」
どんなふうに聞こえたんだろう…そんなことをぼんやり考えたけれど、秋久さんの柔らかい視線に気づいて向き直る。
「口では上手く説明できないが、他の奴には同じことを言わないように」
「…?分かりました」
このまま彼を見送ったら、本当に休んでもらえないかもしれない。
なんとか引き止めたくて腕を触る。
「どうした?」
「えっと、その…」
「月見が心配してるようなことはおきない。体が頑丈だからな」
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心配させないように言ってくれているのは分かる。
ただ、もっと心配させてほしいし寝てほしい。
「秋久さんが倒れてしまったら、辛いです。だから、今から一緒に寝てほしくて…駄目ですか?」
「そんな目で見られたら断れないな… 」
秋久さんは苦笑いしながらベッドに入った。
「寝るんだろ?月見も寝られるし一石二鳥だ」
「ありがとうございます」
彼のすぐ隣で横になると、だんだん恥ずかしくなってくる。
どうすればいいのか分からなくて固まってしまいそうになるけれど、じっと彼の方を見つめた。
「あ、あの…」
「手を繋いでおくか」
「ごめ…ありがとうございます」
どうしてこの人には私が考えていることが分かるんだろう。
こうしたい、してほしくない…どんな気持ちも見破られてしまう気がする。
「まさか一緒に寝ようなんて言われるとは思わなかった」
「ごめんなさい」
「いや。それが優しさからだと分かっているから問題ない。
ただ、月見はちゃんと寝ているのか気になったんだ」
本当はいつも眠れなくて起きている。
どのくらい前からか、いきなり寝るなと言われたり叩き起こされたりした。
だから、今でもこの場所にあるふかふかのベッドに慣れない。
「相変わらず随分懐いてるみたいだな、甘栗は」
「そうだといいんですけど…今日も秋久さんがいなくて寂しがっていました」
「そうか。最近仕事で空けることが多かったからな…この埋め合わせはどこかでする」
しばらく話していたけれど、いつの間にか眠ってしまっていた。
目を開けると、視界に優しい寝顔がはいる。
「あ…」
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