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秋久ルート
第53話
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甘栗を支えながら寝返りをうとうとしたら、冬真さんが申し訳なさそうな顔で私に言った。
「…ごめん。もう少し写真を見てほしい」
「分かりました」
思い出すと苦しくなるかもしれないけれど、何もせずにはいられない。
沢山ある写真の中に何人か顔を見たことがある人がいたものの、さっき襲ってきた人たちのうち何人かが写っていなかった。
逆に知らない人の写真も混ざっている。
「本当にごめん」
「私は平気です」
「悪いな、捜査にまでつきあわせることになって」
「本当に大丈夫です。ありがとうございます」
ふたりの心配そうな様子は、言葉を聞いただけで嘘ではないと分かる。
私よりふたりのことが心配だ。
「あ、あの…」
「俺たちは鍛えてるから、これくらいで疲れたりはしない。健康管理は冬真が特に気をつけてるはずだ。
医者が過労で倒れたりしたら、患者に無理するなって言えなくなるだろ?」
「秋久さんだって気をつけて。最近遅くまで仕事してるの知ってるから」
冬真さんの圧に、秋久さんは苦笑いしながら頷く。
遅い時間まで起きていることがあるのは知っていたけれど、それが仕事の為だったとは思っていなかった。
「絶対気づかれないと思ったのに、やっぱり冬真には敵わないな」
「秋久さんは色々忙しいでしょ?もうちょっと周りを見てもいいんじゃないかな?」
そんな細かいところに気づくなんて、冬真さんはやっぱり人のことをよく見ているんだと感じた。
しばらくふたりが話すのを見ていると、からんと扉が開かれる音がする。
顔だけそちらに向けると、立っていたのはふたつの見知った顔だった。
「なんか複雑な話してるの?」
「夏彦か。悪いな、おまえらふたりにあの場を任せて」
「いえ。案外早く終わりましたから」
「それで、何の話をしてるの?」
4人は集まって何か作戦を立てているみたいだ。
甘栗が何かに警戒しているのはなんとなく理解したけれど、それが何なのかまでは分からなかった。
「ディアボロが暴れだしそうだから、それをどう押さえこむかっていう話だ。
他の組織が絡んでるようだが、ふたりは何かいい案ないか?」
「ディアボロ単体じゃないの?」
「恐らく違う」
見覚えがない人がいたと話していたということは、やっぱり別の人たちがいると考えるしかない。
「それは随分厄介なことになりましたね…」
「相手が分からない以上動きづらい気もするが、アジトさえ掴めればどうにかなる。目星はついてるものの、まだ確証がない」
いつの間にそんなことまでやっていたんだろう。
秋久さんはひとりで頑張りすぎだ。
私にもっとできることがあればよかったのにと考えてしまう。
…私には何もできないのに。
「…ごめん。もう少し写真を見てほしい」
「分かりました」
思い出すと苦しくなるかもしれないけれど、何もせずにはいられない。
沢山ある写真の中に何人か顔を見たことがある人がいたものの、さっき襲ってきた人たちのうち何人かが写っていなかった。
逆に知らない人の写真も混ざっている。
「本当にごめん」
「私は平気です」
「悪いな、捜査にまでつきあわせることになって」
「本当に大丈夫です。ありがとうございます」
ふたりの心配そうな様子は、言葉を聞いただけで嘘ではないと分かる。
私よりふたりのことが心配だ。
「あ、あの…」
「俺たちは鍛えてるから、これくらいで疲れたりはしない。健康管理は冬真が特に気をつけてるはずだ。
医者が過労で倒れたりしたら、患者に無理するなって言えなくなるだろ?」
「秋久さんだって気をつけて。最近遅くまで仕事してるの知ってるから」
冬真さんの圧に、秋久さんは苦笑いしながら頷く。
遅い時間まで起きていることがあるのは知っていたけれど、それが仕事の為だったとは思っていなかった。
「絶対気づかれないと思ったのに、やっぱり冬真には敵わないな」
「秋久さんは色々忙しいでしょ?もうちょっと周りを見てもいいんじゃないかな?」
そんな細かいところに気づくなんて、冬真さんはやっぱり人のことをよく見ているんだと感じた。
しばらくふたりが話すのを見ていると、からんと扉が開かれる音がする。
顔だけそちらに向けると、立っていたのはふたつの見知った顔だった。
「なんか複雑な話してるの?」
「夏彦か。悪いな、おまえらふたりにあの場を任せて」
「いえ。案外早く終わりましたから」
「それで、何の話をしてるの?」
4人は集まって何か作戦を立てているみたいだ。
甘栗が何かに警戒しているのはなんとなく理解したけれど、それが何なのかまでは分からなかった。
「ディアボロが暴れだしそうだから、それをどう押さえこむかっていう話だ。
他の組織が絡んでるようだが、ふたりは何かいい案ないか?」
「ディアボロ単体じゃないの?」
「恐らく違う」
見覚えがない人がいたと話していたということは、やっぱり別の人たちがいると考えるしかない。
「それは随分厄介なことになりましたね…」
「相手が分からない以上動きづらい気もするが、アジトさえ掴めればどうにかなる。目星はついてるものの、まだ確証がない」
いつの間にそんなことまでやっていたんだろう。
秋久さんはひとりで頑張りすぎだ。
私にもっとできることがあればよかったのにと考えてしまう。
…私には何もできないのに。
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