裏世界の蕀姫

黒蝶

文字の大きさ
356 / 385
冬真ルート

第40話

しおりを挟む
「なんだこれは…!くそ、千切れろ!」
暴れているのは分かったけれど、それでも離すわけにはいかない。
このまま隠れていられればいいと思っていたのに、相手の人とばっちり目が合ってしまう。
「見つけたぞ、装置…!」
後ろに下がらないといけないのに怖くて動けない。
このままだとやられる…ぎゅっと目を閉じた瞬間、誰かが前に立った気配がした。
「…このまま切断してやろうか?」
その低い声はいつも聞くものと全然違っていて、ゆっくり目を開ける。
眼前で起きていたことにただ呆然とした。
冬香さんが手品で使うと話していた大道具を構えて、男の人に向けている。
使い方を間違えれば本当に人を殺しかねない道具だと話していたのに、その背中はそれを相手に向けたまま怒っていた。
「おまえは、マ、」
「もういいから寝てろよ」
銃みたいなものを3発くらい撃ちこんで、冬香さんはこちらをじっと見る。
怒られてしまうと身構えていたら、思っていたものとは全然違う反応がかえってきた。
「よかった。怪我はなさそうだね」
「は、はい」
その安心した声に私もほっとする。
ふと冬真がいた方を見ると、なんだか表情が曇っていた。
「あの、」
「やっぱり会ってたんだ」
「…ごめんなさい」
「蕀姫、黙っててくれたんだね。僕が言わないでほしいってお願いしたのをずっと守ってくれてありがとう」
「…あんたが口止めしたのか」
「だって、冬真にどう思われるか分からないから…嫌われたくなかったんだよ。
それに、僕と会ったなんて話したら蕀姫が怒られちゃうでしょ?またこんなに手が傷ついてる。ちょっとこっちにおいで」
「は、はい」
冬香さんに近づくと、一瞬で現れた布を当てて手当てしてくれた。
「ありがとう」
「こちらこそ、ありがとうございます」
「君はいい子だね。冬真、この子を大切にしないといけないよ。
おまえのことをちゃんと真っ直ぐ見ている人だから」
「もう帰れ」
「そうだね。カルテットに揃われると質問攻めにされそうだ。…またね、蕀姫」
颯爽と去っていく姿を目で追っていると、今度は冬真に手首を握られた。
「あ、あの…」
「あの花、やっぱりあいつにもらったの?」
「冬真の目につくところでお世話してほしいって言われました」
「……そう」
どうして冬真は痛そうな顔をしているんだろう。
頬に手を添えようとしたけれど、その手からは血が滲み出していて咄嗟に引っ込める。
冬真が何か言おうとしたとき、秋久さんが走ってきた。
「何があった?ふたりとも無事か?」
「大丈夫。こいつら、例のラムネの関係者だから連れていって」
「分かった」
状況を察知したのか、秋久さんは何も訊かずに倒れている人たちを運んでいってくれた。
冬真の心に罅が入ったみたいで不安になる。
なんとなく、いつもより目が冷たいような気がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...