裏世界の蕀姫

黒蝶

文字の大きさ
271 / 385
秋久ルート

第34.5話

しおりを挟む
俺は結局、近くにいる人間を巻きこんでしまう。
間に合ってよかったが半分、こんな目に遭わせたくなかったが半分。
はっきり言って複雑だ。
「…おまえがディアボロの下っ端か」
「私は、」
「別に畏まる必要はねえよ。上で命令しかしない奴よりずっと好感を持てる。
ただ、あんた以外の奴は尻尾巻いて逃げたってことだけは教えておいてやる」
月見が倒れた瞬間、周りにあった蕀たちは一斉に床に落ちる。
背を向けないよう気をつけつつ、月見を近くに横たわらせた。
俺に近づきすぎれば一般的な生き方をできなくなるかもしれないと思うと、少し距離があった方がいいと考え敢えてお嬢ちゃんと呼ぶことにしていた。
そうして名前で呼ばないよう気をつけていたのに、うっかり呼んでしまったことに気づく。
「あなたをここで待っていたんです。餌がいてくれたおかげで助かりましたが、」
「…ちょっと黙ってろ」
俺はただ、いつもどおり目の前の極悪人候補を捕まえた。
彼女の顔色が悪いのが気になるが、この場所にはひとりで来ている。
どうしたものかと首をひねった瞬間、どこからか冬真が現れた。
「秋久さん、速すぎ…」
「悪い。どうしても待っていられなかった」
何故外に出たのか、大体見当はついている。
「甘栗、勝手に外へ行くのは危ないって言っただろ?…冬真、お嬢ちゃんの治療を頼む。恐らくこのタイプの毒を浴びてるから、解毒しないとまずい」
「分かった」
冬真はすぐに医者の顔になり、倒れていた月見の手当てをしている。
しょんぼりしている甘栗の頭を撫でながら、捕まえた男を足元に転がす。
「その人は?」
「そろそろ回収しに来てくれるはずだ」
花菜には連絡しておいたが、タイミングを遅らせておいて正解だった。
さっきの月見の様子からして、あの大量の蕀について彼女が知っている。
だが、あの光景をそう簡単には信じられないだろう。
それに、もしかすると本人があまり知られたくないと思っているかもしれない。
「先輩、この人ですか?」
「ああ。頼む」
花菜のいいところは無闇やたらと詮索しないところだ。
それから、仕事の上で持ち前の明るさで振る舞ってくれるのは助かっている。
「あとは連れて帰って様子を見るだけ。…秋久さん、怒ってる?」
「そう見えるか?」
「うん。あと、こうなったのは秋久さんのせいじゃないから」
「ああ。…ありがとう」
やはり冬真には分かってしまうらしい。
「お嬢ちゃんは俺が連れて帰るから、甘栗を頼んでいいか?」
「……分かった」
「大丈夫だ。今なら寝てるし、籠の中でなら大人しくしてる」
「気をつけて運ぶ」
月見の体はまだ軽くて、食事をしているところを見ているにも関わらず心配になる。
この体にどれだけのダメージを負って生きてきたのだろう。
「…どうすればよかったんだろうな、俺は」
闇が深くなる空に呟いた言葉は、きっと誰にも聞こえていない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...