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秋久ルート
第34話
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「なんだこれは。おい、外せ」
「い、嫌です」
「外せって言ってるだろ!」
相手の人の暴れように、昔のことがフラッシュバックする。
本当は怖いけれど、ここで離してしまったら秋久が危ない目に遭うかもしれない。
いつも護ってもらってばかりなのだから、なんとか彼を傷つけられないようにしたかった。
「…おい、やれ」
気配を辿ったときには遅かった。
わざわざ人を攫って誘い出すようなことをするなら、ひとりで行動しているはずがない。
どうして油断していたんだろう。
「こ、来ないでください」
「無理だよ。そいつらは可愛い申し子なんだ。…その者は穢れている。早く清めてあげなさい」
私が穢れているというのは、間違っていない。
蕀さんたちと一緒に何かをする人なんて、見たことがないから分かっている。
それでも、抵抗することは許されるだろうか。
「やめてください」
注射器みたいな何かを持った人たちが近づいてきて、思いきり体を動かした。
近くにいた人たちは蕀さんたちがなぎ倒してくれていて、手元にはナイフみたいに鋭い蔦がいつの間にかくっついている。
残りの鎖を千切った後、後ずさりながら出口を探した。
「なんなんだ、まさかこんな化け物がいるなんて…」
誰にも知られたくなかった。
人は自分と違うものを受け入れられない、という話は知っている。
だから、誰とも関わらないようにしようと思っていた。
…けれど、今1番怖いのは。
「どうしてそんなに、人を傷つけようとするんですか?」
「守護神を倒して、我らがディアボロが次の守護神となる為だ」
「…思いやりがないと、なれないと思います」
「ならばそれを浴びて死になさい!」
何かのスイッチが押された音がして、頭の上から何かが降ってくる。
だんだん体が動かなくなるのを感じながら、思いきり手を伸ばす。
「──お願い、蕀さんたち」
きっと全部は防げない。
それでも、何もしないよりずっといいはずだ。
今近づいてきている誰かの為に、なれるかもしれない。
「お嬢ちゃん!」
「あ、きひさ、さ…」
声がした方に手を伸ばそうとしてはっとする。
私は今蔦だらけだ。
もしこれで下手なことをしたら、秋久さんからも怖がられてしまうかもしれない。
「ごめ、な、さ、」
「謝らなくていい。俺が油断してたのが悪いんだ」
「でも…」
「この蔦はお嬢ちゃんの友だちなんだな?」
頷くのでせいいっぱいな私の体は抱きあげられる。
この人は私が怖くないのだろうか。
「あとは任せろ。すぐに片づける」
「あの人、針を、はり、を…」
「──少し目を閉じてな、月見」
秋久さんの鋭い声が聞こえたのを最後に、私の意識は暗闇に落ちていった。
「い、嫌です」
「外せって言ってるだろ!」
相手の人の暴れように、昔のことがフラッシュバックする。
本当は怖いけれど、ここで離してしまったら秋久が危ない目に遭うかもしれない。
いつも護ってもらってばかりなのだから、なんとか彼を傷つけられないようにしたかった。
「…おい、やれ」
気配を辿ったときには遅かった。
わざわざ人を攫って誘い出すようなことをするなら、ひとりで行動しているはずがない。
どうして油断していたんだろう。
「こ、来ないでください」
「無理だよ。そいつらは可愛い申し子なんだ。…その者は穢れている。早く清めてあげなさい」
私が穢れているというのは、間違っていない。
蕀さんたちと一緒に何かをする人なんて、見たことがないから分かっている。
それでも、抵抗することは許されるだろうか。
「やめてください」
注射器みたいな何かを持った人たちが近づいてきて、思いきり体を動かした。
近くにいた人たちは蕀さんたちがなぎ倒してくれていて、手元にはナイフみたいに鋭い蔦がいつの間にかくっついている。
残りの鎖を千切った後、後ずさりながら出口を探した。
「なんなんだ、まさかこんな化け物がいるなんて…」
誰にも知られたくなかった。
人は自分と違うものを受け入れられない、という話は知っている。
だから、誰とも関わらないようにしようと思っていた。
…けれど、今1番怖いのは。
「どうしてそんなに、人を傷つけようとするんですか?」
「守護神を倒して、我らがディアボロが次の守護神となる為だ」
「…思いやりがないと、なれないと思います」
「ならばそれを浴びて死になさい!」
何かのスイッチが押された音がして、頭の上から何かが降ってくる。
だんだん体が動かなくなるのを感じながら、思いきり手を伸ばす。
「──お願い、蕀さんたち」
きっと全部は防げない。
それでも、何もしないよりずっといいはずだ。
今近づいてきている誰かの為に、なれるかもしれない。
「お嬢ちゃん!」
「あ、きひさ、さ…」
声がした方に手を伸ばそうとしてはっとする。
私は今蔦だらけだ。
もしこれで下手なことをしたら、秋久さんからも怖がられてしまうかもしれない。
「ごめ、な、さ、」
「謝らなくていい。俺が油断してたのが悪いんだ」
「でも…」
「この蔦はお嬢ちゃんの友だちなんだな?」
頷くのでせいいっぱいな私の体は抱きあげられる。
この人は私が怖くないのだろうか。
「あとは任せろ。すぐに片づける」
「あの人、針を、はり、を…」
「──少し目を閉じてな、月見」
秋久さんの鋭い声が聞こえたのを最後に、私の意識は暗闇に落ちていった。
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