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秋久ルート
第8話
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「あの、ここって…」
「そんなに驚かなくても、ここ全部があいつの店ってわけじゃない。今日はこっちにいるはずだしな」
目の前の大きな建物を見て、ただ呆然と立ち尽くしてしまう。
「大丈夫か?」
「あ、はい。ごめんなさい…」
「謝らなくていい。こっちだ、お嬢ちゃん」
中には沢山の人たちがいて、みんな楽しそうに笑っている。
少し羨ましいと思いつつ、はぐれないようについていくだけでせいいっぱいだった。
「月見ちゃん、いらっしゃい!」
「えっと、こんにちは…」
「取り敢えずアッキーに言われたとおりやっておいたよ」
今の言葉はどういう意味だろう。
「夏彦、余計なことは言うなよ」
「分かってるって。我らがリーダーに殺されたくないからね」
「人のことをなんだと思ってる。…まあいい。お嬢ちゃん、取り敢えずこっちの部屋で待っててくれないか?」
「わ、分かりました」
勝手に出歩いて迷惑をかけるわけにはいかない。
言われたとおり、机と椅子だけがある部屋で大人しくしていることにする。
待つのは慣れているから平気だ。
誰もいなくなるまで息をひそめているのが普通だったから。
もしかすると、私が聞いてはいけない話をしているのかもしれない。
そう思うと、余計に何も言えなかった。
「待たせたな。お嬢ちゃんにはこの中から気に入ったものを着てみてほしい」
「私なんかが着て、いいんですか?」
「寧ろお嬢ちゃんじゃないと困るんだ。やってくれるか?」
「はい。が、頑張ります…」
好きに選んでいいと言ってもらえたものの、どんなふうにすればいいのか分からない。
古くなるまでその場にあったものを着ている私には、洋服を選ぶということがとても贅沢に感じられる。
経験がないのもあって、すごく時間がかかってしまった。
「ごめんなさい、お待たせしました」
「よかった、サイズは合ってるみたいだな」
「月見ちゃん、可愛い…!」
「よく似合ってる」
「あ、ありがとうございます」
ふたりとも褒めてくれたけれど、1番傷を隠せそうな服だったからという理由で着てみただけだ。
「あの、どうして私だったんですか?他の方でもよかったんじゃ…」
「だって月見ちゃん、あんまり服持ってないでしょ?だから、俺の服を着てみてほしかったんだ」
俺の服ということは、今着ているこのパーカーもズボンも靴も全部、ということだろうか。
「ここにあるお洋服は、夏彦さんが作っているんですか?」
「大体そうかな。まあ、今回はアッキーにも協力してもらったけどね」
「俺はこういうものに疎いからな…。お嬢ちゃんが気に入ってくれれば問題ないんだが、どうだ?」
まさかこんなことまでしてもらえるとは思っていなかった。
嬉しくてしばらく固まっていたけれど、今はただお礼の気持ちを伝えたい。
「すごく着心地がいいです。ありがとうございます」
「それはよかった」
秋久さんが笑っていると、どうしてか心がざわざわする。
「それじゃ、残りはまた後で引き取りに来る」
「まいどあり」
そんなふたりの会話を聞いていると、秋久さんに手を握られる。
「それじゃあお嬢ちゃん。もう少しつきあってくれ」
「そんなに驚かなくても、ここ全部があいつの店ってわけじゃない。今日はこっちにいるはずだしな」
目の前の大きな建物を見て、ただ呆然と立ち尽くしてしまう。
「大丈夫か?」
「あ、はい。ごめんなさい…」
「謝らなくていい。こっちだ、お嬢ちゃん」
中には沢山の人たちがいて、みんな楽しそうに笑っている。
少し羨ましいと思いつつ、はぐれないようについていくだけでせいいっぱいだった。
「月見ちゃん、いらっしゃい!」
「えっと、こんにちは…」
「取り敢えずアッキーに言われたとおりやっておいたよ」
今の言葉はどういう意味だろう。
「夏彦、余計なことは言うなよ」
「分かってるって。我らがリーダーに殺されたくないからね」
「人のことをなんだと思ってる。…まあいい。お嬢ちゃん、取り敢えずこっちの部屋で待っててくれないか?」
「わ、分かりました」
勝手に出歩いて迷惑をかけるわけにはいかない。
言われたとおり、机と椅子だけがある部屋で大人しくしていることにする。
待つのは慣れているから平気だ。
誰もいなくなるまで息をひそめているのが普通だったから。
もしかすると、私が聞いてはいけない話をしているのかもしれない。
そう思うと、余計に何も言えなかった。
「待たせたな。お嬢ちゃんにはこの中から気に入ったものを着てみてほしい」
「私なんかが着て、いいんですか?」
「寧ろお嬢ちゃんじゃないと困るんだ。やってくれるか?」
「はい。が、頑張ります…」
好きに選んでいいと言ってもらえたものの、どんなふうにすればいいのか分からない。
古くなるまでその場にあったものを着ている私には、洋服を選ぶということがとても贅沢に感じられる。
経験がないのもあって、すごく時間がかかってしまった。
「ごめんなさい、お待たせしました」
「よかった、サイズは合ってるみたいだな」
「月見ちゃん、可愛い…!」
「よく似合ってる」
「あ、ありがとうございます」
ふたりとも褒めてくれたけれど、1番傷を隠せそうな服だったからという理由で着てみただけだ。
「あの、どうして私だったんですか?他の方でもよかったんじゃ…」
「だって月見ちゃん、あんまり服持ってないでしょ?だから、俺の服を着てみてほしかったんだ」
俺の服ということは、今着ているこのパーカーもズボンも靴も全部、ということだろうか。
「ここにあるお洋服は、夏彦さんが作っているんですか?」
「大体そうかな。まあ、今回はアッキーにも協力してもらったけどね」
「俺はこういうものに疎いからな…。お嬢ちゃんが気に入ってくれれば問題ないんだが、どうだ?」
まさかこんなことまでしてもらえるとは思っていなかった。
嬉しくてしばらく固まっていたけれど、今はただお礼の気持ちを伝えたい。
「すごく着心地がいいです。ありがとうございます」
「それはよかった」
秋久さんが笑っていると、どうしてか心がざわざわする。
「それじゃ、残りはまた後で引き取りに来る」
「まいどあり」
そんなふたりの会話を聞いていると、秋久さんに手を握られる。
「それじゃあお嬢ちゃん。もう少しつきあってくれ」
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