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秋久ルート
第7話
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「すまない。驚いただろう?」
「えっと…」
驚いたと話せば困らせてしまうと思っていたけれど、秋久さんにはそれが伝わってしまったらしい。
彼は苦笑いしながら、私の腕の中にいた甘栗の頭を撫でた。
「悪いやつじゃないんだが、そいつもいつも驚いてる」
「そう、なんですね」
「いつも急に来るから、どうすればいいか戸惑ってるみたいだ。
甘栗は元々人が苦手だろうから脅かさないように言ってあるんだが、花菜は大人しくするということを知らない」
秋久さんの言葉に、怒っていないことを確認してほっとする。
失礼になるんじゃないかとか色々考えていたけれど、相手がそう思ってないであろうことも彼が説明してくれた。
「あいつはいつも滅茶苦茶なことを言うが、自分について分析できてる。
あと、お嬢ちゃんに色々質問しようとしていたのを我慢してたな」
「そうなんですか?」
「ああ。だが、いきなり初対面の相手を質問攻めにしたら驚くだろう?
あいつは勘が鋭いから時々訊かれたくないことを言われたりするかもしれないが、お嬢ちゃんさえよければ仲良くしてやってくれ」
「わ、分かりました」
「…で、何の話をしようと思ったんだか忘れた」
「え?」
たしかに秋久さんはさっきから何かを話そうとしていた。
それは花菜さんが持ってきた資料に関係するのか、私の家のことに関係しているのか…駄目だ、分からない。
「そうだ。お嬢ちゃん、こっちのにサインしてもらっていいか?」
「これって、何の契約書ですか?」
「あの家に帰らなくていい、自由に生きていくのに必要な誓約書だ。…その代わり、俺たちのことについては誰にも話さないことっていう条件が書かれてる」
なんだかずっしり重いものが肩にのしかかるような感覚になる。
ただ、私には話す相手なんていないし誰かにぺらぺらと話すことがいいことだとは思っていない。
「分かりました。…これで大丈夫ですか?」
「ああ、問題ない。悪いな、サインばかりもらって」
「いえ。寧ろ、私なんかの為に時間をいただいてすみません…」
頭を下げると、ぽんぽんと優しい手が髪に触れる。
「私なんか、なんて自分を卑下する必要はない。今のお嬢ちゃんにはまだ難しいかもしれないが、いつかそうなればいいとは思ってる」
「卑下、ですか…?」
「まだ分からなくていい。けど、できるだけ私なんかなんて言わないでほしい」
「…できるだけ気をつけます」
「ん、素直でよろしい」
顔をあげると、秋久さんは優しく笑ってまた頭を撫でてくれた。
そのとき、彼はあ、と声をあげる。
「そうだった。…お嬢ちゃん、店には行ったことあるか?」
「お店、ですか?」
「よければこれから少し時間をもらいたい。勿論、嫌なら無理強いするつもりはないが」
秋久さんの言葉に、私は分かりましたと一言答えることしかできなかった。
…そんなことを言われたのは初めてだったから。
「えっと…」
驚いたと話せば困らせてしまうと思っていたけれど、秋久さんにはそれが伝わってしまったらしい。
彼は苦笑いしながら、私の腕の中にいた甘栗の頭を撫でた。
「悪いやつじゃないんだが、そいつもいつも驚いてる」
「そう、なんですね」
「いつも急に来るから、どうすればいいか戸惑ってるみたいだ。
甘栗は元々人が苦手だろうから脅かさないように言ってあるんだが、花菜は大人しくするということを知らない」
秋久さんの言葉に、怒っていないことを確認してほっとする。
失礼になるんじゃないかとか色々考えていたけれど、相手がそう思ってないであろうことも彼が説明してくれた。
「あいつはいつも滅茶苦茶なことを言うが、自分について分析できてる。
あと、お嬢ちゃんに色々質問しようとしていたのを我慢してたな」
「そうなんですか?」
「ああ。だが、いきなり初対面の相手を質問攻めにしたら驚くだろう?
あいつは勘が鋭いから時々訊かれたくないことを言われたりするかもしれないが、お嬢ちゃんさえよければ仲良くしてやってくれ」
「わ、分かりました」
「…で、何の話をしようと思ったんだか忘れた」
「え?」
たしかに秋久さんはさっきから何かを話そうとしていた。
それは花菜さんが持ってきた資料に関係するのか、私の家のことに関係しているのか…駄目だ、分からない。
「そうだ。お嬢ちゃん、こっちのにサインしてもらっていいか?」
「これって、何の契約書ですか?」
「あの家に帰らなくていい、自由に生きていくのに必要な誓約書だ。…その代わり、俺たちのことについては誰にも話さないことっていう条件が書かれてる」
なんだかずっしり重いものが肩にのしかかるような感覚になる。
ただ、私には話す相手なんていないし誰かにぺらぺらと話すことがいいことだとは思っていない。
「分かりました。…これで大丈夫ですか?」
「ああ、問題ない。悪いな、サインばかりもらって」
「いえ。寧ろ、私なんかの為に時間をいただいてすみません…」
頭を下げると、ぽんぽんと優しい手が髪に触れる。
「私なんか、なんて自分を卑下する必要はない。今のお嬢ちゃんにはまだ難しいかもしれないが、いつかそうなればいいとは思ってる」
「卑下、ですか…?」
「まだ分からなくていい。けど、できるだけ私なんかなんて言わないでほしい」
「…できるだけ気をつけます」
「ん、素直でよろしい」
顔をあげると、秋久さんは優しく笑ってまた頭を撫でてくれた。
そのとき、彼はあ、と声をあげる。
「そうだった。…お嬢ちゃん、店には行ったことあるか?」
「お店、ですか?」
「よければこれから少し時間をもらいたい。勿論、嫌なら無理強いするつもりはないが」
秋久さんの言葉に、私は分かりましたと一言答えることしかできなかった。
…そんなことを言われたのは初めてだったから。
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