裏世界の蕀姫

黒蝶

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秋久ルート

第9話

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初めて入ったお店で、初めて見た世界にただ感動する。
「こういう場所に来たこと、なかったのか」
「ご、ごめんなさい」
「別に謝る必要はない。初めてなら、そんなふうに色々なものを見るのも不思議じゃない。
この場所にある店は店員を人柄重視で選んでるからな。おかしな絡み方をしてくるような奴はまずいないと思っていい」
「そうなんですね…」
世界は学歴重視、という言葉を聞いたことがある。
だから、私なんかがいてはいけないとずっと思っていた。
けれどもし、さっきの言葉が本当なら…この場所にいる人たちはとても幸せだと思う。
「泣いている人、いないんですね」
「誰でも楽しくいられるように、っていうのがこの場所のモットーらしい。この建物を貸し出してる奴は15の頃から社長だからな」
「社長って、1番偉い人なんじゃ…」
「認識としては間違ってないな。さて、用があったのはこの店だ」
美味しそうな食べ物が沢山運ばれてきて、食べている人たちも笑顔で…今まで生きてきたなかで、こんな世界を見たことなんてなかった。
絵本の中だけだったものが、今目の前にある。
そのことがすごく不思議だった。
「店主、来たぞ」
「なんだよ、来るときはもっと早く言ってくれればサービスしたのに…。お、もしかして守護神も隅に置けないな」
「別にそんなんじゃない。…いつものをふたつと特選を頼む」
「はいはい、了解。お客さんもゆっくりしていってくれ!」
「あ、ありがとうございます…」
【守護神】というのはどういう意味だろう。
よく分からなくて首を傾げていると、秋久さんが人からあまり見えない席へと手をひいてくれた。
「この店にはよく来るが、さっきの店長が作る料理が絶品なんだ」
「私も、食べてしまっていいんですか?」
「なんでそんな当たり前のことを訊くんだ…って、そうか。お嬢ちゃん、ここでは好きなものを食べたり飲んだりしていいんだ。
もうおかしな奴等の法則に縛られる必要はないし、もっと自由でいい」
好きなものを、好きなように食べたり飲んだりできる…まさかそんなことが赦されるなんて思わなかった。
あの人たちみたいに賢くないから、私が食べ物をもらえないのは当たり前のことで、仕方ないことだったはずなのに。
そう思っていたのに、どうして今こんなに嬉しいんだろう。
「ほら、しらす丼と特選な。今回のネタでたたけるといいんだけど、もう3日くらい姿を見てない」
「そうか。…そろそろ動くかもしれないな」
何の話をしているのか全然分からないけれど、目の前の料理が美味しそうだということはすぐ感じた。
食べてみてもいいのか迷っていると、秋久さんが優しく手を握ってくれる。
「お嬢ちゃん、苦手じゃないなら食べてみな」
「はい。…いただきます」
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