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春人ルート
第91話
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「ごめん、そっちにある工具をとってもらえる?」
「は、はい」
体のバランスはだいぶとれるようになってきたけれど、走ったりするのはまだまだ難しい。
「何を直しているんですか?」
「…最近、古時計屋がひとつなくなったらしい。だから、そこにお願いしていた人たちから雪乃を通して修理の依頼がくるんだ」
「そうなんですね…」
見たことがない形の時計もあって、つい見とれてしまいそうになる。
「折角俺に修理を頼んでくれたんだから、最後まできっちりやり遂げたい」
「少し休んだ方がいいんじゃ、」
「俺より君の方こそ休んだら?ずっと立ちっぱなしだと疲れるだろうし…本来は俺がやらないといけないことだから」
「私は春人と一緒にいられる時間が増えて、すごく楽しいです」
「…修理が楽しいなんて、本当に変わってるね」
春人は優しく笑いかけてくれたけれど、その顔はやっぱり疲れているような気がする。
近くにいたラビを掴んで、強引に顔に押し当てた。
「いきなり何…?」
「こうすれば手を止めてくれるかなって思ったんです。…ごめんなさい」
「それなら何か飲み物を淹れてくる。何がいい?」
「私がやります」
部屋を出た瞬間、冬真さんのむすっとした顔で視界がいっぱいになる。
「…ちょっと部屋に戻って」
「は、はい…」
「春人さん、これはどういうこと?僕は安静にしててって言ったはずなんだけど…」
「すみません。どうしてと譲れない仕事があるんです」
「この調子で仕事をするなら、道具全部預かる」
「それは困りますね…」
そんなふたりのやりとりを聞きながら、部屋には戻らず少しずつ飲み物を淹れていく。
片手だとどうしても慣れないのが、何かを注ぐという動作だ。
ゆっくりすぎでも早すぎてもこぼれてしまう。
調節しようとしても、カップがずれてしまわないか心配でそっちにばかり気が向いている。
「月見ちゃん、それ貸して」
「夏彦さん…?こんにちは」
「はい、こんにちは。ハルはまー君に怒られてるところ?」
「多分、そうだと思います…」
やりたいことができないのは辛いと思う。
私にもその感覚はなんとなく分かるような気がした。
「それじゃあ先に、月見ちゃんに報告しようかな」
「何を、ですか?」
「この前捕まえた犯人たちがどうなったか…知りたくない?」
「裁判になるんですよね?」
「一応そういうことになるね」
夏彦さんは知識がない私でも分かりやすいように解説してくれた。
裁判には少し時間がかかること、用意するものが沢山あること…。
「これでも簡略化してもらった方なんだけどね」
「そうなんですね…すごく大変そうです」
「だから、ハルに資料を作ってもらわないといけないんだ」
それも見越したうえで、冬真さんは休むように言っていたのかもしれない。
入るタイミングが分からなくて戸惑ったけれど、ここでただ止まっていることはしたくなかった。
片手でぐらつきながら、なんとか春人の部屋の前まで足を運ぶ。
「あ、あの…お茶にしませんか?」
「は、はい」
体のバランスはだいぶとれるようになってきたけれど、走ったりするのはまだまだ難しい。
「何を直しているんですか?」
「…最近、古時計屋がひとつなくなったらしい。だから、そこにお願いしていた人たちから雪乃を通して修理の依頼がくるんだ」
「そうなんですね…」
見たことがない形の時計もあって、つい見とれてしまいそうになる。
「折角俺に修理を頼んでくれたんだから、最後まできっちりやり遂げたい」
「少し休んだ方がいいんじゃ、」
「俺より君の方こそ休んだら?ずっと立ちっぱなしだと疲れるだろうし…本来は俺がやらないといけないことだから」
「私は春人と一緒にいられる時間が増えて、すごく楽しいです」
「…修理が楽しいなんて、本当に変わってるね」
春人は優しく笑いかけてくれたけれど、その顔はやっぱり疲れているような気がする。
近くにいたラビを掴んで、強引に顔に押し当てた。
「いきなり何…?」
「こうすれば手を止めてくれるかなって思ったんです。…ごめんなさい」
「それなら何か飲み物を淹れてくる。何がいい?」
「私がやります」
部屋を出た瞬間、冬真さんのむすっとした顔で視界がいっぱいになる。
「…ちょっと部屋に戻って」
「は、はい…」
「春人さん、これはどういうこと?僕は安静にしててって言ったはずなんだけど…」
「すみません。どうしてと譲れない仕事があるんです」
「この調子で仕事をするなら、道具全部預かる」
「それは困りますね…」
そんなふたりのやりとりを聞きながら、部屋には戻らず少しずつ飲み物を淹れていく。
片手だとどうしても慣れないのが、何かを注ぐという動作だ。
ゆっくりすぎでも早すぎてもこぼれてしまう。
調節しようとしても、カップがずれてしまわないか心配でそっちにばかり気が向いている。
「月見ちゃん、それ貸して」
「夏彦さん…?こんにちは」
「はい、こんにちは。ハルはまー君に怒られてるところ?」
「多分、そうだと思います…」
やりたいことができないのは辛いと思う。
私にもその感覚はなんとなく分かるような気がした。
「それじゃあ先に、月見ちゃんに報告しようかな」
「何を、ですか?」
「この前捕まえた犯人たちがどうなったか…知りたくない?」
「裁判になるんですよね?」
「一応そういうことになるね」
夏彦さんは知識がない私でも分かりやすいように解説してくれた。
裁判には少し時間がかかること、用意するものが沢山あること…。
「これでも簡略化してもらった方なんだけどね」
「そうなんですね…すごく大変そうです」
「だから、ハルに資料を作ってもらわないといけないんだ」
それも見越したうえで、冬真さんは休むように言っていたのかもしれない。
入るタイミングが分からなくて戸惑ったけれど、ここでただ止まっていることはしたくなかった。
片手でぐらつきながら、なんとか春人の部屋の前まで足を運ぶ。
「あ、あの…お茶にしませんか?」
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