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夏彦ルート
第78話
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「それで、どうしてこんな時間に花菜がここにいるの?」
「あ、いや、それは…」
花菜は明らかに焦っている。
何かあったのか、それとも誰にも言わずにこの場所に来たのか…何か事情がありそうだ。
「俺に依頼?」
「冬真に様子を見てきてって頼まれただけだよ」
多分、今の言い方は違う。
花菜が嘘を吐く理由として考えられるのはひとつだけだ。
「…夏彦を傷つけた人たちが、何かしたんですか?」
「月見はすごいね。私よりずっと捜査官向きだ」
「あいつら、何したの?」
夏彦の一言がとても重くのしかかる。
「…なっちゃんと近くにいる人間を近々始末するって。なっちゃんのことだけはできるだけ生かすように命令してあるって。
…ごめんね。私たちがもっと早く気づけていれば、こんなことにはならなかったのに」
「そんな、謝らないでください」
まさかそんなことになるなんて誰も思っていなかったはずだ。
「…サーバーに入りこまれてた?」
「先輩のでも私のでもなく、別チームの端末にウイルスが入りこんだみたい。
そこから情報が筒抜けになってたみたいなんだけど、詳しい原因は今調査中だから何とも言えないんだ…」
「それ、俺が調べちゃ駄目?」
その言葉に花菜はただ驚いたように目をぱちくりさせている。
「今は休まないと、」
「そんな話を聞いて、ただ休んでいることなんてできると思う?
…俺のせいでみんなが狙われるなんて耐えられない。だからせめて、原因だけでも探らせて。
それに、俺が1番見つけるのが早いだろうから」
夏彦は笑顔だったけれど、ふつふつと怒っているのが伝わってくる。
どう答えていいのか分からずに固まっていると、秋久さんがやってきた。
「…花菜、おまえは先に戻れ」
「先輩、ですが、」
「頼む。こいつと話す時間をくれ」
「…分かりました」
花菜は一礼して、ふらふら部屋を出ていってしまった。
秋久さんは夏彦に向き直り、ゆっくりと口を開く。
「…策はあるんだろうな?」
「蔡原のシステムに直接アクセスする。本当は色々なサーバーを経由しようと思ってたんだけど、その時間はなさそうだから。
心配しなくても、誰も危険な目に遭わないようにカモフラージュはするよ」
「分かった。悪いが一旦任せる」
「それで、別部署にいるのは何人?」
「それってどういうことですか…?」
「…月見ちゃんは知らない方がいいかもしれない」
そう話す夏彦の目はいつか見たように翳りがある。
「他にも、スパイみたいな人がいるってことですよね?だから花菜を先に帰らせた。…間違ってますか?」
「お嬢ちゃんには関心することばかりだな。勿論夏彦にもだが。…見たところ、あの場にいたのは3人だった。恐らく奴等は平然と殺せるタイプだ。
ただし、短絡的な思考しか持ち合わせていない為1度頭に血がのぼると怒りで周りが見えなくなる」
秋久さんはそこまで話して、花菜を追いかけるからと仕事に戻っていった。
夏彦はずっと何かを考えているのか、全然目があわない。
「…夏彦」
「ごめん、ちょっと深く考えすぎてた」
「試してほしいことがあるんです」
ネットというものの仕組みをいまひとつ理解していない私にできるかどうかなんて分からない。
ただ、手探りでもきっと今やってみないと後悔する。
「試してほしいこと?」
「…蕀さんたちで、なんとかインターネットを使えないでしょうか?
電話しか試したことがないので、どこまでできるかは分からないのですが…」
そう話すと、彼は何故か震えていた。
「あ、いや、それは…」
花菜は明らかに焦っている。
何かあったのか、それとも誰にも言わずにこの場所に来たのか…何か事情がありそうだ。
「俺に依頼?」
「冬真に様子を見てきてって頼まれただけだよ」
多分、今の言い方は違う。
花菜が嘘を吐く理由として考えられるのはひとつだけだ。
「…夏彦を傷つけた人たちが、何かしたんですか?」
「月見はすごいね。私よりずっと捜査官向きだ」
「あいつら、何したの?」
夏彦の一言がとても重くのしかかる。
「…なっちゃんと近くにいる人間を近々始末するって。なっちゃんのことだけはできるだけ生かすように命令してあるって。
…ごめんね。私たちがもっと早く気づけていれば、こんなことにはならなかったのに」
「そんな、謝らないでください」
まさかそんなことになるなんて誰も思っていなかったはずだ。
「…サーバーに入りこまれてた?」
「先輩のでも私のでもなく、別チームの端末にウイルスが入りこんだみたい。
そこから情報が筒抜けになってたみたいなんだけど、詳しい原因は今調査中だから何とも言えないんだ…」
「それ、俺が調べちゃ駄目?」
その言葉に花菜はただ驚いたように目をぱちくりさせている。
「今は休まないと、」
「そんな話を聞いて、ただ休んでいることなんてできると思う?
…俺のせいでみんなが狙われるなんて耐えられない。だからせめて、原因だけでも探らせて。
それに、俺が1番見つけるのが早いだろうから」
夏彦は笑顔だったけれど、ふつふつと怒っているのが伝わってくる。
どう答えていいのか分からずに固まっていると、秋久さんがやってきた。
「…花菜、おまえは先に戻れ」
「先輩、ですが、」
「頼む。こいつと話す時間をくれ」
「…分かりました」
花菜は一礼して、ふらふら部屋を出ていってしまった。
秋久さんは夏彦に向き直り、ゆっくりと口を開く。
「…策はあるんだろうな?」
「蔡原のシステムに直接アクセスする。本当は色々なサーバーを経由しようと思ってたんだけど、その時間はなさそうだから。
心配しなくても、誰も危険な目に遭わないようにカモフラージュはするよ」
「分かった。悪いが一旦任せる」
「それで、別部署にいるのは何人?」
「それってどういうことですか…?」
「…月見ちゃんは知らない方がいいかもしれない」
そう話す夏彦の目はいつか見たように翳りがある。
「他にも、スパイみたいな人がいるってことですよね?だから花菜を先に帰らせた。…間違ってますか?」
「お嬢ちゃんには関心することばかりだな。勿論夏彦にもだが。…見たところ、あの場にいたのは3人だった。恐らく奴等は平然と殺せるタイプだ。
ただし、短絡的な思考しか持ち合わせていない為1度頭に血がのぼると怒りで周りが見えなくなる」
秋久さんはそこまで話して、花菜を追いかけるからと仕事に戻っていった。
夏彦はずっと何かを考えているのか、全然目があわない。
「…夏彦」
「ごめん、ちょっと深く考えすぎてた」
「試してほしいことがあるんです」
ネットというものの仕組みをいまひとつ理解していない私にできるかどうかなんて分からない。
ただ、手探りでもきっと今やってみないと後悔する。
「試してほしいこと?」
「…蕀さんたちで、なんとかインターネットを使えないでしょうか?
電話しか試したことがないので、どこまでできるかは分からないのですが…」
そう話すと、彼は何故か震えていた。
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