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夏彦ルート
第58話
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できれば蕀さんたちに力を借りていることは隠しておきたかった。
私が蕀さんたちにお願いをする度、夏彦が辛そうな顔をしていたのを知っている。
「…ちょっと向こうで話そうか」
「は、はい…」
なんだか少し怒っているような気がして、後ずさってしまいそうになる。
秋久さんたちにソルトをお願いして向かったのは、入ったことがない部屋だった。
夏彦は鍵を閉めると、ふっと息を吐く。
「…月見ちゃん、蔦を出したでしょ?」
「ごめんなさい。それくらいしか、役に立つ方法を思いつかなかったんです…」
できるだけ使わない生活をしていた。
時々部屋に沢山蕀さんたちにきてもらうことはあっても、外の様子をただ確認するだけにしか使ったことはない。
何人動いてどんな感情があるのかなんて、考えたこともなかった。
最近なんとなく分かることに気づいて、これなら役に立てるかもしれないと思い上がっていたのかもしれない。
「本当に、」
「誰かの役に立ちたいって考えるのは分かるけど、今だって手が痛いの我慢してるでしょ?
俺は、そういうのが嫌なんだ」
謝罪の言葉は遮られて、代わりに心配の言葉が返ってくる。
そんなふうに言われたことなんて夏彦と出会うまではなかった。
私のことなんて誰にも伝わらない、だったらそれでいいと無意識のうちに諦めて自分の心に蓋をしていたのかもしれない。
「グローブ、秋用のを作ったから丁度よかった」
「え…?」
最近遅くまで起きていたことは知っていたけれど、もしかすると作ってくれていたからだったのだろうか。
夏彦はそう話すと、複雑そうな表情で私を見た。
「申し訳ないけど、あとどれくらいで店に到達しそうか分かる範囲で教えてもらえないかな?」
「は、はい。…建物の裏側に、入り口ってありますか?」
「裏口がひとつ…そっか、あいつらはそこから入ってくるつもりなのかもしれない。
向こうは狭いし暗いから丁度いいと思ってるのかも…。ありがとう、誰かいないか至急確認してくるね」
「あ、あの、夏彦ひとりだと危ないんじゃ…」
彼は驚いたように目を見開いて、ただいつもみたいに笑った。
…間違いなく怒りがこめられていたけれど。
「心配してくれてありがとう。だけど、ここにアッキーたちを巻きこむわけにはいかない。
だから、俺ひとりで頑張ってみるよ」
私には歩いていく背中を止める術がない。
ついていって足手まといになるならこのままただ見送るのが正しいことかもしれないけれど、あのふたりはどうだろう。
彼が扉を開いた瞬間、仁王立ちする人物が目にはいった。
「随分物騒な話がしたけど…緊急事態?」
「どうしてこんなところにいるの、ハル…」
私が蕀さんたちにお願いをする度、夏彦が辛そうな顔をしていたのを知っている。
「…ちょっと向こうで話そうか」
「は、はい…」
なんだか少し怒っているような気がして、後ずさってしまいそうになる。
秋久さんたちにソルトをお願いして向かったのは、入ったことがない部屋だった。
夏彦は鍵を閉めると、ふっと息を吐く。
「…月見ちゃん、蔦を出したでしょ?」
「ごめんなさい。それくらいしか、役に立つ方法を思いつかなかったんです…」
できるだけ使わない生活をしていた。
時々部屋に沢山蕀さんたちにきてもらうことはあっても、外の様子をただ確認するだけにしか使ったことはない。
何人動いてどんな感情があるのかなんて、考えたこともなかった。
最近なんとなく分かることに気づいて、これなら役に立てるかもしれないと思い上がっていたのかもしれない。
「本当に、」
「誰かの役に立ちたいって考えるのは分かるけど、今だって手が痛いの我慢してるでしょ?
俺は、そういうのが嫌なんだ」
謝罪の言葉は遮られて、代わりに心配の言葉が返ってくる。
そんなふうに言われたことなんて夏彦と出会うまではなかった。
私のことなんて誰にも伝わらない、だったらそれでいいと無意識のうちに諦めて自分の心に蓋をしていたのかもしれない。
「グローブ、秋用のを作ったから丁度よかった」
「え…?」
最近遅くまで起きていたことは知っていたけれど、もしかすると作ってくれていたからだったのだろうか。
夏彦はそう話すと、複雑そうな表情で私を見た。
「申し訳ないけど、あとどれくらいで店に到達しそうか分かる範囲で教えてもらえないかな?」
「は、はい。…建物の裏側に、入り口ってありますか?」
「裏口がひとつ…そっか、あいつらはそこから入ってくるつもりなのかもしれない。
向こうは狭いし暗いから丁度いいと思ってるのかも…。ありがとう、誰かいないか至急確認してくるね」
「あ、あの、夏彦ひとりだと危ないんじゃ…」
彼は驚いたように目を見開いて、ただいつもみたいに笑った。
…間違いなく怒りがこめられていたけれど。
「心配してくれてありがとう。だけど、ここにアッキーたちを巻きこむわけにはいかない。
だから、俺ひとりで頑張ってみるよ」
私には歩いていく背中を止める術がない。
ついていって足手まといになるならこのままただ見送るのが正しいことかもしれないけれど、あのふたりはどうだろう。
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