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夏彦ルート
第57話
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夏彦が用意してくれた機械を操作しながら、沢山の人たちが歩いていくのを見つめる。
きらきらした笑顔を見ていると、なんだか少し安心した。
「…ソルトも見てみますか?」
のそりと起きあがった猫に声をかけると、にゃあとひと鳴きして膝にのった。
少し手のひらに痛みがはしるけれど、決して我慢できないほどじゃない。
それに、夏彦が作った眩しい衣装を少しでも目に焼きつけたかった。
「…綺麗」
ランウェイというものに現れたのは冬真さんで、お客さんたちの目が一気にそちらに向けられる。
普段あまり笑ったところを見たことがなかったけれど、彼は必死で笑顔をはりつけていた。
「…モデルさんって大変なんだね」
ソルトの頭を撫でながら、どうなっていくのかただ画面の世界を観測する。
それがとにかく楽しくて、気分がぱっと明るくなった。
『はい、みなさんこんにちは!本日は突然だったにも関わらずファッションショーにお越しいただきありがとうございます。
最後まで楽しんでいただけましたか?』
周りからは沢山の拍手が聞こえていて、あのモデルさんが着ていた服がほしいとかかっこよかったとか、そんな声もちらちら聞こえている。
『みなさんを笑顔にできて、きっとスタッフのみんなも楽しんでくれたと思います。
見えないところで頑張ってくれたスタッフたちも、ありがとう!』
「…!」
画面の向こうなんだからたまたまなはずなのに、夏彦と目があったような気がしてどきどきしてしまう。
『引き続き買い物を楽しんでいってくださいね』
そんな言葉で締め括られて、歓声があがるなかファッションショーは幕を閉じた。
蔦の先であの人たちが動いていないか探ってみたけれど、今のところは大丈夫そうだ。
遠隔でやったことなんてほとんどないし、どれだけ把握できているのか自分でも分かっていない。
「すごい夢中で見てたね」
「えっと、あの…ごめんなさい」
後ろから冬真さんが入ってきていたなんて知らなくて、少し声がうわずってしまう。
視えない蔦を探っていたのだから不信には思われなかっただろうけれど、少し心配になる。
「別に謝らなくていい。バイト代もらいに来ただけだから」
「人混み、苦手なんですか?」
「そう。君も?」
「すみません…。何度も手当てしていただいてありがとうございます」
沈黙が流れた瞬間、がちゃりと扉が開かれる。
「あ、まー君みっけ。これ報酬ね」
「いつもより多めな気がするんだけど」
「そりゃあ、ラストあれだけ盛り上がったのはまー君のおかげだから…ありがとう」
夏彦と秋久さんも部屋に入ってきて、なんだか微笑ましい空気が流れている。
ただ、相手は待ってくれそうにない。
言うべきか言わないべきか迷ったけれど、夏彦の近くまで行って小声で伝えた。
「…外で、誰かが動いたみたいです。人数は多分ふたり…。もう少し探ってみます」
きらきらした笑顔を見ていると、なんだか少し安心した。
「…ソルトも見てみますか?」
のそりと起きあがった猫に声をかけると、にゃあとひと鳴きして膝にのった。
少し手のひらに痛みがはしるけれど、決して我慢できないほどじゃない。
それに、夏彦が作った眩しい衣装を少しでも目に焼きつけたかった。
「…綺麗」
ランウェイというものに現れたのは冬真さんで、お客さんたちの目が一気にそちらに向けられる。
普段あまり笑ったところを見たことがなかったけれど、彼は必死で笑顔をはりつけていた。
「…モデルさんって大変なんだね」
ソルトの頭を撫でながら、どうなっていくのかただ画面の世界を観測する。
それがとにかく楽しくて、気分がぱっと明るくなった。
『はい、みなさんこんにちは!本日は突然だったにも関わらずファッションショーにお越しいただきありがとうございます。
最後まで楽しんでいただけましたか?』
周りからは沢山の拍手が聞こえていて、あのモデルさんが着ていた服がほしいとかかっこよかったとか、そんな声もちらちら聞こえている。
『みなさんを笑顔にできて、きっとスタッフのみんなも楽しんでくれたと思います。
見えないところで頑張ってくれたスタッフたちも、ありがとう!』
「…!」
画面の向こうなんだからたまたまなはずなのに、夏彦と目があったような気がしてどきどきしてしまう。
『引き続き買い物を楽しんでいってくださいね』
そんな言葉で締め括られて、歓声があがるなかファッションショーは幕を閉じた。
蔦の先であの人たちが動いていないか探ってみたけれど、今のところは大丈夫そうだ。
遠隔でやったことなんてほとんどないし、どれだけ把握できているのか自分でも分かっていない。
「すごい夢中で見てたね」
「えっと、あの…ごめんなさい」
後ろから冬真さんが入ってきていたなんて知らなくて、少し声がうわずってしまう。
視えない蔦を探っていたのだから不信には思われなかっただろうけれど、少し心配になる。
「別に謝らなくていい。バイト代もらいに来ただけだから」
「人混み、苦手なんですか?」
「そう。君も?」
「すみません…。何度も手当てしていただいてありがとうございます」
沈黙が流れた瞬間、がちゃりと扉が開かれる。
「あ、まー君みっけ。これ報酬ね」
「いつもより多めな気がするんだけど」
「そりゃあ、ラストあれだけ盛り上がったのはまー君のおかげだから…ありがとう」
夏彦と秋久さんも部屋に入ってきて、なんだか微笑ましい空気が流れている。
ただ、相手は待ってくれそうにない。
言うべきか言わないべきか迷ったけれど、夏彦の近くまで行って小声で伝えた。
「…外で、誰かが動いたみたいです。人数は多分ふたり…。もう少し探ってみます」
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