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春人ルート
第46話
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しばらく沈黙が流れた後、春人の小さな呟きが聞こえた。
「…ご飯」
「はい。ご飯、できているので…」
何か変なことを言っただろうか。
少しの間しんと静まりかえった後、春人は楽しそうに微笑んだ。
「何も食べてないしもらおうかな」
「すぐに準備します。その、えっと…夏彦さんもいかがですか?」
「え、俺ももらっていいの!?」
「今日はたらことツナのスパゲティとコーンポタージュにしました」
本当は別のスープを作ろうかとも思ったけれど、1番体が温まる種類で思いついたのがそれだった。
「毎日こんなに美味しそうなものを作ってもらってるのか、いいなあ…」
「夏彦は自分で作れるでしょう?」
「ひとりで暮らしてた頃はものすごい不養生だったのに、本当に見違えたね。どうりで最近血色がよさそうだったわけだ」
「うるさい」
「ごめんごめん。だけどまあ、ハルが元気ならそれでいいよ」
夏彦さんは楽しそうに笑っていて、それを見た春人はむすっとしている。
ふたりの会話を聞きながら、3人で食べる準備を整えた。
「あの…できました」
「ごめんね、全然手伝わなくて」
「いえ。おふたりは、とても仲がいいんですね」
私にはそんな相手がいない。
だから、ふたりが楽しそうにしているとほほえましいと感じるのと同時に羨ましくなってしまう。
「…別に仲がいい訳じゃない。腐れ縁ってだけだよ」
「照れてるからってまたそんなこと言う…。俺はハルのこと親友だと思ってるんだけどな…」
「関係性にいちいち名前なんてなくてもいいんじゃない?…一緒に過ごしていて楽しいと思うかどうかが大事だと思う」
春人の瞳が真っ直ぐ私を射抜く。
彼は嘘をつけない人だろうと勝手に思っているけれど、とにかく怪我が心配だった。
「…いただきます」
「い、いただきます」
「いただきます!」
3人でほぼ同時に食べはじめたけれど、突然夏彦さんに声をかけられる。
「月見ちゃん」
「は、はい」
「ハルのこと、よろしくね」
「……え?」
料理が口にあわなかったのではと考えていた私にとって、その言葉は予想外のものだった。
「…夏彦、後でゆっくり話そうか」
「そんなに照れなくても…ちょ、地味に痛い!」
「これくらいならいいでしょ?」
夏彦さんの手の甲を軽くつねっている姿に少し慌ててしまう。
そのときの春人の顔は、何故か耳まで真っ赤になっていた。
「あの…変な味、しましたか?」
「そういう訳じゃない。ありがとう、今日も美味しい」
ほっと息を吐いて、引き続き食事を続ける。
「…ハルがこのまま事件の呪縛から解放されて、月見ちゃんとふたりきりで楽しく暮らしていければいいのに」
そんな夏彦さんの呟きは私の耳に届かなかった。
「…ご飯」
「はい。ご飯、できているので…」
何か変なことを言っただろうか。
少しの間しんと静まりかえった後、春人は楽しそうに微笑んだ。
「何も食べてないしもらおうかな」
「すぐに準備します。その、えっと…夏彦さんもいかがですか?」
「え、俺ももらっていいの!?」
「今日はたらことツナのスパゲティとコーンポタージュにしました」
本当は別のスープを作ろうかとも思ったけれど、1番体が温まる種類で思いついたのがそれだった。
「毎日こんなに美味しそうなものを作ってもらってるのか、いいなあ…」
「夏彦は自分で作れるでしょう?」
「ひとりで暮らしてた頃はものすごい不養生だったのに、本当に見違えたね。どうりで最近血色がよさそうだったわけだ」
「うるさい」
「ごめんごめん。だけどまあ、ハルが元気ならそれでいいよ」
夏彦さんは楽しそうに笑っていて、それを見た春人はむすっとしている。
ふたりの会話を聞きながら、3人で食べる準備を整えた。
「あの…できました」
「ごめんね、全然手伝わなくて」
「いえ。おふたりは、とても仲がいいんですね」
私にはそんな相手がいない。
だから、ふたりが楽しそうにしているとほほえましいと感じるのと同時に羨ましくなってしまう。
「…別に仲がいい訳じゃない。腐れ縁ってだけだよ」
「照れてるからってまたそんなこと言う…。俺はハルのこと親友だと思ってるんだけどな…」
「関係性にいちいち名前なんてなくてもいいんじゃない?…一緒に過ごしていて楽しいと思うかどうかが大事だと思う」
春人の瞳が真っ直ぐ私を射抜く。
彼は嘘をつけない人だろうと勝手に思っているけれど、とにかく怪我が心配だった。
「…いただきます」
「い、いただきます」
「いただきます!」
3人でほぼ同時に食べはじめたけれど、突然夏彦さんに声をかけられる。
「月見ちゃん」
「は、はい」
「ハルのこと、よろしくね」
「……え?」
料理が口にあわなかったのではと考えていた私にとって、その言葉は予想外のものだった。
「…夏彦、後でゆっくり話そうか」
「そんなに照れなくても…ちょ、地味に痛い!」
「これくらいならいいでしょ?」
夏彦さんの手の甲を軽くつねっている姿に少し慌ててしまう。
そのときの春人の顔は、何故か耳まで真っ赤になっていた。
「あの…変な味、しましたか?」
「そういう訳じゃない。ありがとう、今日も美味しい」
ほっと息を吐いて、引き続き食事を続ける。
「…ハルがこのまま事件の呪縛から解放されて、月見ちゃんとふたりきりで楽しく暮らしていければいいのに」
そんな夏彦さんの呟きは私の耳に届かなかった。
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