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春人ルート
第47話
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夏彦さんを見送って春人の部屋を訪ねると、そこに彼の姿はなかった。
…真面目な彼なら、もしかするとあの場所にいるかもしれない。
ある部屋の扉を開けてみるとやっぱりいた。
「む、無理をするのは駄目です」
「心配しなくても、体に負担がかからない程度でやってる」
そこには沢山の器具が並んでいて、修理する為にあるであろう色々な道具が並んでいた。
「お仕事、少しだけでも休めませんか…?そのまま無理をしていれば、傷が治りづらいと思います」
「それはそうなんだろうけど、俺の仕事は休めないから…」
帰り際、夏彦さんが春人をできるだけ休ませてほしいと話していた。
その表情は切実なもので…勿論私も心配だから、できればもっと休んでほしい。
「時計なら、直し方が分かります。私がやったら迷惑でしょうか?」
「悪いけど、依頼品を君に触らせるわけにはいかない」
その一言に、思わずその場でズボンのポケットを掴む。
どんな顔をすればいいのか分からなくて、そのまま俯いてしまった。
「そう、ですよね。いきなりこんなことを言って困らせてしまってすみませんでした。…部屋に戻ります」
「待って…」
引き留める声も聞かずに、その場所を飛び出す。
一目散に部屋まで戻ると、悔しくて涙が零れ落ちた。
私では役に立てない、私では信用されないんだ…そう思うとますます悲しくなる。
機械を修理させてもらえなかったことが嫌なんじゃない。
春人に信用してもらえていないんじゃないかと不安になって、この感情をどこにぶつけたらいいのか分からないだけだ。
けれど、急いで感情を抑えないと部屋中蕀さんたちでいっぱいになってしまう。
人に信じてもらえない、そんな状況に慣れていつからか分かってもらうことを諦めていた。
だからなのか、独りでいるのがこんなに苦しいと思ったのは初めてかもしれない。
しばらくベッドで体育座りしていると、がちゃりと扉が開かれた音がした。
「…ちょっといい?」
「えっと、その、」
「──月見」
真っ直ぐな声が耳に届いて、ぱっと顔をあげる。
そこには、不安げに瞳を揺らす春人が立っていた。
「話を聞いてほしいんだ」
「は、はい…」
「さっきはごめん。あれは俺が君を信頼してないとか、そういうことじゃなくて…頼んだ相手と違う人が直したとなると、相手が俺に頼んでくれた意味がなくなってしまう。
それに、あの作業は俺が唯一世界と繋がっていられるものだから」
「世界と、繋がる…」
よく分からなくて首をかしげていると、春人はゆっくり話してくれた。
「俺の世界には、あの人が繋げてくれた修理作業しかなかった。
今はカルテットのみんなや、君がいるけど…それでも不安なんだ。平穏って、当たり前のことじゃないから」
…真面目な彼なら、もしかするとあの場所にいるかもしれない。
ある部屋の扉を開けてみるとやっぱりいた。
「む、無理をするのは駄目です」
「心配しなくても、体に負担がかからない程度でやってる」
そこには沢山の器具が並んでいて、修理する為にあるであろう色々な道具が並んでいた。
「お仕事、少しだけでも休めませんか…?そのまま無理をしていれば、傷が治りづらいと思います」
「それはそうなんだろうけど、俺の仕事は休めないから…」
帰り際、夏彦さんが春人をできるだけ休ませてほしいと話していた。
その表情は切実なもので…勿論私も心配だから、できればもっと休んでほしい。
「時計なら、直し方が分かります。私がやったら迷惑でしょうか?」
「悪いけど、依頼品を君に触らせるわけにはいかない」
その一言に、思わずその場でズボンのポケットを掴む。
どんな顔をすればいいのか分からなくて、そのまま俯いてしまった。
「そう、ですよね。いきなりこんなことを言って困らせてしまってすみませんでした。…部屋に戻ります」
「待って…」
引き留める声も聞かずに、その場所を飛び出す。
一目散に部屋まで戻ると、悔しくて涙が零れ落ちた。
私では役に立てない、私では信用されないんだ…そう思うとますます悲しくなる。
機械を修理させてもらえなかったことが嫌なんじゃない。
春人に信用してもらえていないんじゃないかと不安になって、この感情をどこにぶつけたらいいのか分からないだけだ。
けれど、急いで感情を抑えないと部屋中蕀さんたちでいっぱいになってしまう。
人に信じてもらえない、そんな状況に慣れていつからか分かってもらうことを諦めていた。
だからなのか、独りでいるのがこんなに苦しいと思ったのは初めてかもしれない。
しばらくベッドで体育座りしていると、がちゃりと扉が開かれた音がした。
「…ちょっといい?」
「えっと、その、」
「──月見」
真っ直ぐな声が耳に届いて、ぱっと顔をあげる。
そこには、不安げに瞳を揺らす春人が立っていた。
「話を聞いてほしいんだ」
「は、はい…」
「さっきはごめん。あれは俺が君を信頼してないとか、そういうことじゃなくて…頼んだ相手と違う人が直したとなると、相手が俺に頼んでくれた意味がなくなってしまう。
それに、あの作業は俺が唯一世界と繋がっていられるものだから」
「世界と、繋がる…」
よく分からなくて首をかしげていると、春人はゆっくり話してくれた。
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