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春人ルート
第45話
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ラビとチェリーを抱えたまま、入ったことがなかった春人の部屋の前まで向かう。
その中は沢山の資料で溢れていて、知らなかった部分をまた少し知った。
「しばらくこのまま寝かせておこうと思う。無理に起こすと体に響くといけないからね」
呆然と立ち尽くしていた私の手をひいて、夏彦さんは一緒にリビングにいてくれることになった。
「春、人…どうしたん、ですか?」
「そんなに心配しなくても大丈、」
「大丈夫には見えません。…事件を、追いかけていたからですか?」
この前聞いた話には、夏彦さんの名前が出てきた。
それなら、調べていることも知っているんじゃないだろうか。
「そういえば、見ちゃったんだってね。…あのファイルに入ってる資料は、全部ハルが集めたものなんだよ。
俺もあの人があんな死に方をしたことに納得してないけど、1番辛いのはハルなはずだから」
「夏彦さん…何か知っているんですか?」
「え?」
「春人と話したとき、死んでしまった理由までは分かっていないようでした。ですが、今の言い方だと…」
まるで、どうやって死んでしまったのか分かっているみたいだ。
「すごいね、月見ちゃん。将来探偵とかできるかも。…うっかりしてたな」
「それじゃあ、やっぱり…」
「今夜、本当はもっと別の仕事を引き受けていたんだ。それが終わったら話をしようと思っていたのに、奴等はその場所までやってきた」
「奴等…?」
「ちょっと詳しいことは言えないんだけど、本当は俺が怪我をするはずだったんだ。
あいつらの狙いは俺だったのに、ハルは庇ってくれたんだ。俺が、」
そのとき、がたんと大きな音がした。
何かが崩れ落ちたような、何かが落ちてきたような…。
嫌な予感がして、ふたりで音がした方に走っていく。
「ハル、無理しちゃ駄目だって!」
「その名前で呼んでいいのは、あの人だけだって言ってるのに…」
ふらつく体で必死に歩いてこようとする春人を制止して、なんとかベッドに戻ってもらおうと言葉を並べる。
「今は、少しでも横になっていた方がいい…と、思います」
「そんなに心配しなくても大丈夫。この程度の怪我ならそこまで酷くないから」
「あと数ミリずれてたら死んでたかもしれないのに、そんなこと言うな」
私が言葉を紡ぐ前に、夏彦さんが怒った表情で春人の胸ぐらを掴む。
「俺のせいで誰かが傷つけられるのはもう嫌なんだ。
助けてくれたことには感謝してるけど、もうちょっと自分のことを大切にしてよ…」
夏彦さんの言葉は春人に真っ直ぐ届いたらしい。
ふたりの動きがぴたりと止まったのを確認して、浮かんだ言葉を零した。
「…あの、ご飯、できてるんです。休めそうにないなら、一緒に食べませんか?」
その中は沢山の資料で溢れていて、知らなかった部分をまた少し知った。
「しばらくこのまま寝かせておこうと思う。無理に起こすと体に響くといけないからね」
呆然と立ち尽くしていた私の手をひいて、夏彦さんは一緒にリビングにいてくれることになった。
「春、人…どうしたん、ですか?」
「そんなに心配しなくても大丈、」
「大丈夫には見えません。…事件を、追いかけていたからですか?」
この前聞いた話には、夏彦さんの名前が出てきた。
それなら、調べていることも知っているんじゃないだろうか。
「そういえば、見ちゃったんだってね。…あのファイルに入ってる資料は、全部ハルが集めたものなんだよ。
俺もあの人があんな死に方をしたことに納得してないけど、1番辛いのはハルなはずだから」
「夏彦さん…何か知っているんですか?」
「え?」
「春人と話したとき、死んでしまった理由までは分かっていないようでした。ですが、今の言い方だと…」
まるで、どうやって死んでしまったのか分かっているみたいだ。
「すごいね、月見ちゃん。将来探偵とかできるかも。…うっかりしてたな」
「それじゃあ、やっぱり…」
「今夜、本当はもっと別の仕事を引き受けていたんだ。それが終わったら話をしようと思っていたのに、奴等はその場所までやってきた」
「奴等…?」
「ちょっと詳しいことは言えないんだけど、本当は俺が怪我をするはずだったんだ。
あいつらの狙いは俺だったのに、ハルは庇ってくれたんだ。俺が、」
そのとき、がたんと大きな音がした。
何かが崩れ落ちたような、何かが落ちてきたような…。
嫌な予感がして、ふたりで音がした方に走っていく。
「ハル、無理しちゃ駄目だって!」
「その名前で呼んでいいのは、あの人だけだって言ってるのに…」
ふらつく体で必死に歩いてこようとする春人を制止して、なんとかベッドに戻ってもらおうと言葉を並べる。
「今は、少しでも横になっていた方がいい…と、思います」
「そんなに心配しなくても大丈夫。この程度の怪我ならそこまで酷くないから」
「あと数ミリずれてたら死んでたかもしれないのに、そんなこと言うな」
私が言葉を紡ぐ前に、夏彦さんが怒った表情で春人の胸ぐらを掴む。
「俺のせいで誰かが傷つけられるのはもう嫌なんだ。
助けてくれたことには感謝してるけど、もうちょっと自分のことを大切にしてよ…」
夏彦さんの言葉は春人に真っ直ぐ届いたらしい。
ふたりの動きがぴたりと止まったのを確認して、浮かんだ言葉を零した。
「…あの、ご飯、できてるんです。休めそうにないなら、一緒に食べませんか?」
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