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夏彦ルート
第25話
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「ソルト、散歩が好きなんですね」
「そうみたいだね。てっきり狭い場所でのんびりするのが好きなんだと思ってたけど…」
夏彦はリードを持ったままソルトの後をついていく。
私もその後を追って夜の町を歩いていた。
お昼とは違う雰囲気に呑まれそうになりながら、少し楽しいとも思っている。
「どうかな?昼間よりは歩きやすいんじゃないかって思ったんだけど…」
「すごく楽しいです」
「それならよかった」
きらきら輝く通りにさしかかると、3人で手を繋いでいる親子が目に入る。
両親、だろうか。小さな女の子は楽しそうに笑っていて、両端で手を繋いでいる大人たちも楽しそうだ。
今まではどうでもいいと思っていた光景が、不思議と羨ましく感じられる。
…私はあの人たちからあんな表情を向けられたことはない。
最後に学校に行ったのはいつだろう。
知らない大人が来ても、体調不良ということで誤魔化されていた。
痣を見られたら困るからだったのかもしれない。
「…月見ちゃん?」
気づいたときにはその場に座りこんでいた。
苦しくて息ができない。
もういっそ、このままいなくなってしまえば誰にも迷惑をかけずにすむかもしれない…そう思うのに、彼に向かって手を伸ばしてしまう。
「大丈夫。大きく吸って…吐いて。そう、そのまま繰り返して」
真剣な声が聞こえてきて、とにかく言われたとおりにする。
「少し体動かすよ。…ソルト、散歩の続きはまた今度ね」
ソルトにも夏彦にも悪いことをしてしまった。
どうしてこうなったのか、自分でも分からない。
昔のことを沢山考えたからだろうか。
「ごめ、なさ…」
「大丈夫だから心配しないで」
耳に心地いい声が響いて目を閉じる。
本当は自分で歩かないといけないのに、ただ目を開けることさえ難しかった。
「……」
「起きた?」
視線だけ動かすと、いつか見た白い天井がある。
まだ重い体を動かそうとすると、見覚えがある男性に制止された。
「まだ動かない方がいい。待ってて」
…冬真さんだった。
どうしてここで寝ていたのか、いつの間に彼がいたのか、全然分からない。
言われたとおり待っていると、どたどたと足音が聞こえた。
「月見ちゃん、よかった…!」
「ごめんなさい、私は、」
「謝らないで。家よりここの方が近かったから、ついでにマー君に診てもらったんだ」
「またその呼び方…。それが終わったら帰っていい」
右手には管がつけられていて、そこから透明な何かが体に入っている。
「あの、冬真さんはお医者さんなんですか?」
「マー君は大学生だよ。飛び級制度を使って海外でお医者さんになって、日本の医師国家試験予備試験っていうのを受けて…とにかくずば抜けて頭がいいんだ」
「あんまり言わないでって言ってるのに…」
冬真さんと夏彦は仲がいいのか、お互いのことをよく知っているようだった。
そういう相手がいるのはやっぱり羨ましい。
「そうみたいだね。てっきり狭い場所でのんびりするのが好きなんだと思ってたけど…」
夏彦はリードを持ったままソルトの後をついていく。
私もその後を追って夜の町を歩いていた。
お昼とは違う雰囲気に呑まれそうになりながら、少し楽しいとも思っている。
「どうかな?昼間よりは歩きやすいんじゃないかって思ったんだけど…」
「すごく楽しいです」
「それならよかった」
きらきら輝く通りにさしかかると、3人で手を繋いでいる親子が目に入る。
両親、だろうか。小さな女の子は楽しそうに笑っていて、両端で手を繋いでいる大人たちも楽しそうだ。
今まではどうでもいいと思っていた光景が、不思議と羨ましく感じられる。
…私はあの人たちからあんな表情を向けられたことはない。
最後に学校に行ったのはいつだろう。
知らない大人が来ても、体調不良ということで誤魔化されていた。
痣を見られたら困るからだったのかもしれない。
「…月見ちゃん?」
気づいたときにはその場に座りこんでいた。
苦しくて息ができない。
もういっそ、このままいなくなってしまえば誰にも迷惑をかけずにすむかもしれない…そう思うのに、彼に向かって手を伸ばしてしまう。
「大丈夫。大きく吸って…吐いて。そう、そのまま繰り返して」
真剣な声が聞こえてきて、とにかく言われたとおりにする。
「少し体動かすよ。…ソルト、散歩の続きはまた今度ね」
ソルトにも夏彦にも悪いことをしてしまった。
どうしてこうなったのか、自分でも分からない。
昔のことを沢山考えたからだろうか。
「ごめ、なさ…」
「大丈夫だから心配しないで」
耳に心地いい声が響いて目を閉じる。
本当は自分で歩かないといけないのに、ただ目を開けることさえ難しかった。
「……」
「起きた?」
視線だけ動かすと、いつか見た白い天井がある。
まだ重い体を動かそうとすると、見覚えがある男性に制止された。
「まだ動かない方がいい。待ってて」
…冬真さんだった。
どうしてここで寝ていたのか、いつの間に彼がいたのか、全然分からない。
言われたとおり待っていると、どたどたと足音が聞こえた。
「月見ちゃん、よかった…!」
「ごめんなさい、私は、」
「謝らないで。家よりここの方が近かったから、ついでにマー君に診てもらったんだ」
「またその呼び方…。それが終わったら帰っていい」
右手には管がつけられていて、そこから透明な何かが体に入っている。
「あの、冬真さんはお医者さんなんですか?」
「マー君は大学生だよ。飛び級制度を使って海外でお医者さんになって、日本の医師国家試験予備試験っていうのを受けて…とにかくずば抜けて頭がいいんだ」
「あんまり言わないでって言ってるのに…」
冬真さんと夏彦は仲がいいのか、お互いのことをよく知っているようだった。
そういう相手がいるのはやっぱり羨ましい。
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