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夏彦ルート
第24話
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翌日も朝早くからお店に向かう。
一先ずソルトは私と作業部屋にいることになった。
「…ソルト、おいで」
にゃんとひと鳴きして近づいてきた白猫を抱きあげて、針を踏んだりしないように注意しながら片づける。
「もう片づいたから、ここで待っててね」
持ってきていた餌と水を用意しながら、できるだけソルトから目を離さないようにする。
「毛糸が好きなの?こっちのだったら使っていいから…」
ソルトは柔らかい素材のものが好きなのか、すぐにじゃれついていく。
少し暑くなってきて、誰も見ていないことを確認してからグローブをはずす。
こんな傷、見て驚かない人の方が少ないだろう。
「…できたよ。ゆっくり食べてね」
恐る恐る頭を撫でると、嬉しそうにすり寄ってきてくれた。
それから食事をしているところを見て作業を再開する。
夏彦がミシンというものを見せてくれたけれど、使い慣れないものでやるよりは慣れている手縫いでやった方がいいような気がして使っていない。
「月見ちゃん、お疲れ様。もしよかったら休憩しない?」
「ありがとうございます」
向かい合って座り、持ってきてくれたアイスクリームを美味しくいただく。
「もう少ししたら店を閉める時間になるから、片づけたら今日は少しだけ町を散策してみない?」
「いいんですか…?」
「うん。ソルトにとってもいい経験になるはずだし、月見ちゃんさえよければ一緒に行こう」
「…行きたいです」
夏彦はただ笑って、ソルトの首筋に鈴がついた首輪をつける。
「これならはぐれても大丈夫…な、はず。ソルト、もし苦しかったら外していいからね」
ソルトは夏彦にもだいぶなついている様子で、見ているだけで微笑ましく感じる。
「それじゃあ、人が少なそうな場所に行ってみようか」
「…うん」
店員さんたちが帰るのを扉の隙間から見送りながら、人が通らない場所の片づけを少しずつやっていく。
人と顔をあわせたり話したりするのさまだ怖いし、物覚えがいい訳でもない。
だからこそ、誰の目にもつかないような場所だけでも手伝いたかった。
「…ありがとう、ソルト」
ソルトがくわえて持ってきてくれたおかげで、グローブをはめていなかったことに気づく。
何かあったときは能力を使わないといけないのかもしれないけれど、今はまだ知られずに過ごしたい。
「お待たせ。掃き掃除してくれてありがとう」
「いえ。これくらいしか、できることがなかったので…」
「これぐらいなんてことはないよ。すごく助かったし、ソルトもご機嫌だしね」
ほっと息を吐いて、リードを持った夏彦の後ろを追いかける。
夕陽に照らされた髪がきらきらと輝いていた。
一先ずソルトは私と作業部屋にいることになった。
「…ソルト、おいで」
にゃんとひと鳴きして近づいてきた白猫を抱きあげて、針を踏んだりしないように注意しながら片づける。
「もう片づいたから、ここで待っててね」
持ってきていた餌と水を用意しながら、できるだけソルトから目を離さないようにする。
「毛糸が好きなの?こっちのだったら使っていいから…」
ソルトは柔らかい素材のものが好きなのか、すぐにじゃれついていく。
少し暑くなってきて、誰も見ていないことを確認してからグローブをはずす。
こんな傷、見て驚かない人の方が少ないだろう。
「…できたよ。ゆっくり食べてね」
恐る恐る頭を撫でると、嬉しそうにすり寄ってきてくれた。
それから食事をしているところを見て作業を再開する。
夏彦がミシンというものを見せてくれたけれど、使い慣れないものでやるよりは慣れている手縫いでやった方がいいような気がして使っていない。
「月見ちゃん、お疲れ様。もしよかったら休憩しない?」
「ありがとうございます」
向かい合って座り、持ってきてくれたアイスクリームを美味しくいただく。
「もう少ししたら店を閉める時間になるから、片づけたら今日は少しだけ町を散策してみない?」
「いいんですか…?」
「うん。ソルトにとってもいい経験になるはずだし、月見ちゃんさえよければ一緒に行こう」
「…行きたいです」
夏彦はただ笑って、ソルトの首筋に鈴がついた首輪をつける。
「これならはぐれても大丈夫…な、はず。ソルト、もし苦しかったら外していいからね」
ソルトは夏彦にもだいぶなついている様子で、見ているだけで微笑ましく感じる。
「それじゃあ、人が少なそうな場所に行ってみようか」
「…うん」
店員さんたちが帰るのを扉の隙間から見送りながら、人が通らない場所の片づけを少しずつやっていく。
人と顔をあわせたり話したりするのさまだ怖いし、物覚えがいい訳でもない。
だからこそ、誰の目にもつかないような場所だけでも手伝いたかった。
「…ありがとう、ソルト」
ソルトがくわえて持ってきてくれたおかげで、グローブをはめていなかったことに気づく。
何かあったときは能力を使わないといけないのかもしれないけれど、今はまだ知られずに過ごしたい。
「お待たせ。掃き掃除してくれてありがとう」
「いえ。これくらいしか、できることがなかったので…」
「これぐらいなんてことはないよ。すごく助かったし、ソルトもご機嫌だしね」
ほっと息を吐いて、リードを持った夏彦の後ろを追いかける。
夕陽に照らされた髪がきらきらと輝いていた。
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