148 / 385
夏彦ルート
第23話
しおりを挟む
どうやら私は、真っ直ぐ布を切るという工程が苦手らしい。
「ご、ごめんなさい…」
「大丈夫だよ。初めてのときはみんな上手くいかないものだから」
夏彦は手際よく鋏を動かしていて、それを観察させてもらうことにする。
そうこうしているうちに、足元で鳴き声が聞こえた。
「ソルト…ミルク飲む?」
抱きあげてそう尋ねると、にゃんとひと鳴きして手招きのようなポーズをとる。
「…ごめんなさい、少し行ってきます」
「了解!その間に布は切っておくね」
夏彦が実際に作業をしている姿を見ていると、やっぱりプロの人はすごいなと感じる。
彼は私みたいに必要最低限やらなければいけないことだから覚えたわけではないはずだ。
…だから鋏の音が綺麗に聞こえるのかもしれない。
「ソルト、ゆっくり飲んでね」
昔から人間以外が相手だと、気が抜けるからか敬語を使わずに話すことができた。
夏彦相手にもそうなりたいけれど、どうしても力が入ってしまう。
「…いい子にしててね」
ミルクを飲む姿を見届けてから元の部屋に戻る。
その瞬間、向日葵色の髪がかきあげられるのが目にはいった。
夏彦は作業に集中しているのか、私が扉を開けたことにも気づいていない。
「…これでよし」
「あ、あの。冷たい飲み物を淹れてきたのですが…」
ひと区切りついたところで彼に声をかける。
「月見ちゃん!?ごめん、全然気づいてなかった。ありがとう」
「夏彦は、とても綺麗な音を出すんですね」
「どういうこと?」
アイスココアを一口飲んで首を傾げる彼に、私はただ思ったことを伝えた。
「布を切るときの鋏の音とか、1枚1枚重ねるときの音とか…ひとつひとつの仕草が綺麗だなって思ったんです。変、でしょうか?」
「そんなことないよ。ただ、言われたのが初めてだったからちょっと吃驚しただけ!
まさかそんなふうに思ってもらえてたなんて思わなかったよ」
夏彦の笑顔はやっぱり輝いていて、見ているだけで明るい気分になる。
「月見ちゃんは、」
その瞬間、扉の隙間から白いものが入ってきた。
「ソルト…」
「ミルク美味しかった?でも、今から月見ちゃんともっと話をするところだったんだけど…」
ソルトは夏彦から顔を背けてとてとてとこちらにやってくる。
「まだひとりきりにすることはできないから、一旦店にも慣れさせないといけないんだけど…どうしようかな。
俺にはあんまりなついてない、というより月見ちゃんが大好きみたいだね」
「…そう、なんでしょうか?」
あまり意識したことはなかった。
好きだとか嫌いだとか、そんなことを話せる相手がいなかったから。
…ソルトはどう思っているんだろう。
「ご、ごめんなさい…」
「大丈夫だよ。初めてのときはみんな上手くいかないものだから」
夏彦は手際よく鋏を動かしていて、それを観察させてもらうことにする。
そうこうしているうちに、足元で鳴き声が聞こえた。
「ソルト…ミルク飲む?」
抱きあげてそう尋ねると、にゃんとひと鳴きして手招きのようなポーズをとる。
「…ごめんなさい、少し行ってきます」
「了解!その間に布は切っておくね」
夏彦が実際に作業をしている姿を見ていると、やっぱりプロの人はすごいなと感じる。
彼は私みたいに必要最低限やらなければいけないことだから覚えたわけではないはずだ。
…だから鋏の音が綺麗に聞こえるのかもしれない。
「ソルト、ゆっくり飲んでね」
昔から人間以外が相手だと、気が抜けるからか敬語を使わずに話すことができた。
夏彦相手にもそうなりたいけれど、どうしても力が入ってしまう。
「…いい子にしててね」
ミルクを飲む姿を見届けてから元の部屋に戻る。
その瞬間、向日葵色の髪がかきあげられるのが目にはいった。
夏彦は作業に集中しているのか、私が扉を開けたことにも気づいていない。
「…これでよし」
「あ、あの。冷たい飲み物を淹れてきたのですが…」
ひと区切りついたところで彼に声をかける。
「月見ちゃん!?ごめん、全然気づいてなかった。ありがとう」
「夏彦は、とても綺麗な音を出すんですね」
「どういうこと?」
アイスココアを一口飲んで首を傾げる彼に、私はただ思ったことを伝えた。
「布を切るときの鋏の音とか、1枚1枚重ねるときの音とか…ひとつひとつの仕草が綺麗だなって思ったんです。変、でしょうか?」
「そんなことないよ。ただ、言われたのが初めてだったからちょっと吃驚しただけ!
まさかそんなふうに思ってもらえてたなんて思わなかったよ」
夏彦の笑顔はやっぱり輝いていて、見ているだけで明るい気分になる。
「月見ちゃんは、」
その瞬間、扉の隙間から白いものが入ってきた。
「ソルト…」
「ミルク美味しかった?でも、今から月見ちゃんともっと話をするところだったんだけど…」
ソルトは夏彦から顔を背けてとてとてとこちらにやってくる。
「まだひとりきりにすることはできないから、一旦店にも慣れさせないといけないんだけど…どうしようかな。
俺にはあんまりなついてない、というより月見ちゃんが大好きみたいだね」
「…そう、なんでしょうか?」
あまり意識したことはなかった。
好きだとか嫌いだとか、そんなことを話せる相手がいなかったから。
…ソルトはどう思っているんだろう。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる