147 / 385
夏彦ルート
第22話
しおりを挟む
「デザイン、どれがいい?」
朝食をとっていると、夏彦に沢山のデザイン画を見せられる。
どれにしようか決められずに困っていると、彼は後でゆっくり見て決めてほしいと言ってくれた。
「朝御飯、今日もすごく美味しい」
「あ、ありがとう、ございます...」
少し照れくさい気もするけれど、私は彼に美味しいと言ってもらえることが嬉しかった。
こんな私でも誰かの力になれる、そう思うとやっぱり気分が晴れていく。
「ごちそうさまでした。…月見ちゃんはちょっとデザイン画を見ててね」
「あの、片づけを、」
「それは俺がやるから、月見ちゃんは無理しないでもっと休んでて」
夏彦は笑顔だったけれど、昨日だって帰ってきたのは月が沈んでしまう頃だった。
あまり寝ていないなら休んだ方がいいはずなのに、上手く説明できない。
積み上げられているものを確認して、そのなかからデザインをひとつだけ選ぶ。
それから、コサージュやシュシュというものを作ってみた。
少しでも負担を減らせるなら、私にできることを一先ずやってみようと思う。
「月見ちゃん、デザイン決まっ…」
夏彦はただ呆然としたように立ち尽くしていたけれど、いつものように微笑んで私の手元を見つめた。
「本当に手際がいいね。昔からやってたの?」
「…少しだけならやっていました。本で読んで、これなら破れた洋服も直せるかなって…」
普通の人たちからすれば、自分で縫って直すのはおかしいことだろうか。
少し流れた沈黙にそんなことを考えていると、夏彦が口を開いた。
「そっか。気に入った洋服があるなら、リメイクしてみるのもいいかもよ?」
いつもとは違う雰囲気に困惑しつつ、リメイクとはどういったものなのか考えこんでしまう。
「あの、それってどうやってやるんですか…?」
「たとえば、古くなった服から布を切り取っておいて今作ってるシュシュやコサージュにしちゃうとか…あ、あと軽いものを入れるバッグくらいなら作れるかも!
あんまり丈夫なのは無理だろうけど、やってみる?」
「…やってみたいです。やり方、教えてください」
あの家で手に入れたものというのはあまりいい気分にはならないけれど、苦楽を共にしてきたのはこういったものだけだ。
それなら、少しやってみてもいいのではないかと考えた。
それにしても、洋服からバッグを作るというのは一体どうすればいいのだろう。
「それじゃあまずは布選びからだね。今回はどの服をリメイクしようか?」
「可能なら、これでやってみたい…です」
私が取り出したのは、もう着ることは叶わないであろう小さめサイズのワンピースだ。
「これだけあればできそうだね。早速はじめちゃおうか」
「…うん」
朝食をとっていると、夏彦に沢山のデザイン画を見せられる。
どれにしようか決められずに困っていると、彼は後でゆっくり見て決めてほしいと言ってくれた。
「朝御飯、今日もすごく美味しい」
「あ、ありがとう、ございます...」
少し照れくさい気もするけれど、私は彼に美味しいと言ってもらえることが嬉しかった。
こんな私でも誰かの力になれる、そう思うとやっぱり気分が晴れていく。
「ごちそうさまでした。…月見ちゃんはちょっとデザイン画を見ててね」
「あの、片づけを、」
「それは俺がやるから、月見ちゃんは無理しないでもっと休んでて」
夏彦は笑顔だったけれど、昨日だって帰ってきたのは月が沈んでしまう頃だった。
あまり寝ていないなら休んだ方がいいはずなのに、上手く説明できない。
積み上げられているものを確認して、そのなかからデザインをひとつだけ選ぶ。
それから、コサージュやシュシュというものを作ってみた。
少しでも負担を減らせるなら、私にできることを一先ずやってみようと思う。
「月見ちゃん、デザイン決まっ…」
夏彦はただ呆然としたように立ち尽くしていたけれど、いつものように微笑んで私の手元を見つめた。
「本当に手際がいいね。昔からやってたの?」
「…少しだけならやっていました。本で読んで、これなら破れた洋服も直せるかなって…」
普通の人たちからすれば、自分で縫って直すのはおかしいことだろうか。
少し流れた沈黙にそんなことを考えていると、夏彦が口を開いた。
「そっか。気に入った洋服があるなら、リメイクしてみるのもいいかもよ?」
いつもとは違う雰囲気に困惑しつつ、リメイクとはどういったものなのか考えこんでしまう。
「あの、それってどうやってやるんですか…?」
「たとえば、古くなった服から布を切り取っておいて今作ってるシュシュやコサージュにしちゃうとか…あ、あと軽いものを入れるバッグくらいなら作れるかも!
あんまり丈夫なのは無理だろうけど、やってみる?」
「…やってみたいです。やり方、教えてください」
あの家で手に入れたものというのはあまりいい気分にはならないけれど、苦楽を共にしてきたのはこういったものだけだ。
それなら、少しやってみてもいいのではないかと考えた。
それにしても、洋服からバッグを作るというのは一体どうすればいいのだろう。
「それじゃあまずは布選びからだね。今回はどの服をリメイクしようか?」
「可能なら、これでやってみたい…です」
私が取り出したのは、もう着ることは叶わないであろう小さめサイズのワンピースだ。
「これだけあればできそうだね。早速はじめちゃおうか」
「…うん」
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
ハーフ&ハーフ
黒蝶
恋愛
ある雨の日、野崎七海が助けたのは中津木葉という男。
そんな木葉から告げられたのは、哀しい事実。
「僕には関わらない方がいいよ。...半分とはいえ、人間じゃないから」
...それから2ヶ月、ふたりは恋人として生きていく選択をしていた。
これは、極々普通?な少女と人間とヴァンパイアのハーフである少年の物語。
Tell me eMotion
黒蝶
キャラ文芸
突きつけられるのは、究極の選択。
「生き返るか、僕と一緒にくるか...」
全てに絶望した少女・雪芽は、ある存在と出会う。
そしてその存在は告げる。
「僕には感情がないんだ」
これは、そんな彼と過ごしていくうちにお互いの心を彩づけていく選択の物語。
※内容が内容なので、念のためレーティングをかけてあります。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
泣けない、泣かない。
黒蝶
ライト文芸
毎日絶望に耐えている少女・詩音と、偶然教育実習生として彼女の高校に行くことになった恋人・優翔。
ある事情から不登校になった少女・久遠と、通信制高校に通う恋人・大翔。
兄である優翔に憧れる弟の大翔。
しかし、そんな兄は弟の言葉に何度も救われている。
これは、そんな4人から為る物語。
《主な登場人物》
如月 詩音(きらさぎ しおん):大人しめな少女。歌うことが大好きだが、人前ではなかなか歌わない。
小野 優翔(おの ゆうと):詩音の恋人。養護教諭になる為、教育実習に偶然詩音の学校にやってくる。
水無月 久遠(みなづき くおん):家からほとんど出ない少女。読書家で努力家。
小野 大翔(おの ひろと):久遠の恋人。優翔とは兄弟。天真爛漫な性格で、人に好かれやすい。
クラシオン
黒蝶
ライト文芸
「ねえ、知ってる?どこかにある、幸福を招くカフェの話...」
町で流行っているそんな噂を苦笑しながら受け流す男がいた。
「...残念ながら、君たちでは俺の店には来られないよ」
決して誰でも入れるわけではない場所に、今宵やってくるお客様はどんな方なのか。
「ようこそ、『クラシオン』へ」
これは、傷ついた心を優しく包みこむカフェと、謎だらけのマスターの話。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる