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茶園 渚 続篇
第8話
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翌日、二人は早速行ってみることにした。
「これが、船...」
雪が二人にあげたのは、豪華客船の旅。
どうやら仕事でもらったらしい。
▼「あいつ...」
「雪って船が苦手なの?」
▼「いや?そんなことはないはずだ。だが、まさかこんな客船のチケットをもらえるとはな」
「すっごく大きな船だね」
とてとてと白いものが歩いてくる。
...白玉だ。
「白玉も船ははじめて?」
白玉はこくこくと頷いた。
目をキラキラと輝かせ、デッキを走り回っている。
▼「あんまりはしゃいで海に落ちるなよ」
白玉は楽しそうにしている。
▼「...まさかペットも乗ることができるなんて思わなかった」
「風邪が気持ちいいね」
▼「そうだな」
渚はふっと笑って、黒羽に手を差し出した。
▼「取り敢えず、部屋まで行くか」
「うん!」
興奮気味の白玉を連れ、客室を目指す。
▼「それにしても、広い船内だな...足は大丈夫か?」
「うん、あんまり痛くないよ」
▼「...そうか」
渚は安心したような表情をしていた。
(本当に綺麗な場所...)
黒羽は船内を見渡す。
見たことがない施設ばかりで、少し戸惑っていた。
▼「船内なら、あとで厭というほどエスコートしてやる」
「ありがとう」
▼「俺がやりたいからやるだけだからな」
渚はまた笑っていた。
(今日の渚、なんだか楽しそう)
部屋まで辿り着くと、白玉はぴょんぴょんとベッドの上で遊びはじめた。
▼「おまえはこっちだ」
ふかふかのソファーの上で遊ぶように白玉に言い聞かせる。
白玉は少し残念そうにしていたが、ちゃんと指示に従っていた。
「偉いね、白玉」
黒羽が頭を撫でると、もっと嬉しそうに飛びはねていた。
「見て、渚!ここから見える景色もとっても綺麗だよ!」
▼「一面青だな」
そこは、まるで空の上にいるかのような青だった。
(これからどんな場所に行くのか、すごく楽しみだな)
黒羽はちくりと少し痛みを感じた。
「わっ...」
渚は黒羽を横抱きにし、ベッドへ座らせた。
▼「軟膏を塗っておく」
「ありがとう」
▼「俺がやりたいからやっているだけだ。だが...礼はもらおうか」
「お礼?」
黒羽が首を傾げるのと同時に口づけが落ちてきた。
「んっ...ぁ...」
舌まで絡めとられる。
▼「これで礼はもらった」
「もう...」
楽しそうな黒羽の姿に、渚はとても幸福に思った。
自らが歩いてきた暗い道ではこんなふうに楽しんではいけないのだろうと、そう思いつづけていたからだ。
二人の旅は、まだはじまったばかりだ。
「これが、船...」
雪が二人にあげたのは、豪華客船の旅。
どうやら仕事でもらったらしい。
▼「あいつ...」
「雪って船が苦手なの?」
▼「いや?そんなことはないはずだ。だが、まさかこんな客船のチケットをもらえるとはな」
「すっごく大きな船だね」
とてとてと白いものが歩いてくる。
...白玉だ。
「白玉も船ははじめて?」
白玉はこくこくと頷いた。
目をキラキラと輝かせ、デッキを走り回っている。
▼「あんまりはしゃいで海に落ちるなよ」
白玉は楽しそうにしている。
▼「...まさかペットも乗ることができるなんて思わなかった」
「風邪が気持ちいいね」
▼「そうだな」
渚はふっと笑って、黒羽に手を差し出した。
▼「取り敢えず、部屋まで行くか」
「うん!」
興奮気味の白玉を連れ、客室を目指す。
▼「それにしても、広い船内だな...足は大丈夫か?」
「うん、あんまり痛くないよ」
▼「...そうか」
渚は安心したような表情をしていた。
(本当に綺麗な場所...)
黒羽は船内を見渡す。
見たことがない施設ばかりで、少し戸惑っていた。
▼「船内なら、あとで厭というほどエスコートしてやる」
「ありがとう」
▼「俺がやりたいからやるだけだからな」
渚はまた笑っていた。
(今日の渚、なんだか楽しそう)
部屋まで辿り着くと、白玉はぴょんぴょんとベッドの上で遊びはじめた。
▼「おまえはこっちだ」
ふかふかのソファーの上で遊ぶように白玉に言い聞かせる。
白玉は少し残念そうにしていたが、ちゃんと指示に従っていた。
「偉いね、白玉」
黒羽が頭を撫でると、もっと嬉しそうに飛びはねていた。
「見て、渚!ここから見える景色もとっても綺麗だよ!」
▼「一面青だな」
そこは、まるで空の上にいるかのような青だった。
(これからどんな場所に行くのか、すごく楽しみだな)
黒羽はちくりと少し痛みを感じた。
「わっ...」
渚は黒羽を横抱きにし、ベッドへ座らせた。
▼「軟膏を塗っておく」
「ありがとう」
▼「俺がやりたいからやっているだけだ。だが...礼はもらおうか」
「お礼?」
黒羽が首を傾げるのと同時に口づけが落ちてきた。
「んっ...ぁ...」
舌まで絡めとられる。
▼「これで礼はもらった」
「もう...」
楽しそうな黒羽の姿に、渚はとても幸福に思った。
自らが歩いてきた暗い道ではこんなふうに楽しんではいけないのだろうと、そう思いつづけていたからだ。
二人の旅は、まだはじまったばかりだ。
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