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日常篇
1日デート
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午前10時、迎えに来ると言っていた木葉は時間ぴったりにやって来た。
「おはよう」
「木葉、大丈夫?無理してない...?」
「平気だよ。七海がいるからかな?」
確かにいつもより顔色がいいような気がする。
けれど、どうやって朝起きたのか...どうして今平気なのか訊きたい。
「朝でも動ける方法、母親に教えてもらったんだ。
何回も使えるものではないから、毎日は無理だけど...」
「無理だと思ったらすぐ言ってね」
「ありがとう」
ふたりでこんな時間から手を繋いで歩く。
それはとても新鮮で、それだけで心が満たされる。
「このバスに乗ったら行けるんだって」
「へえ、知らなかった...初めてだ」
「バスに乗るのが?」
「ううん、この時間帯に乗るのが」
笑いあって、ただ話して...そうしているうちに目的地にたどり着く。
「降りよう」
「...そうだね」
そのときちらっと見えたものに、少しだけ違和感を覚える。
「腕、怪我したの?」
「どうしたの、急に...」
「包帯、袖からはみ出てるから何かあったのかなって思ったんだ」
「ええ、と...ちょっとね」
【普通の人間より怪我や病気の治りが早い】...それも木葉が持っている特徴のうちのひとつだったはずだ。
実際に何度も治るのを目にしてきたから分かる。
それなのに包帯を巻いているのはどうしてなんだろう。
(...夜になったらもう1度訊いてみよう)
「噂どおり花が綺麗だね...!」
「そうだね。僕もそう思う」
ついはしゃいでしまいそうになるけれど、子どもっぽいと思われたくなくてできるだけ気をつけている。
けれどやっぱり、木葉の様子がいつもと違うような気がしてしかたない。
腕の包帯を気にしすぎているし、なんだかふらついているようにも見える。
「ねえ、少し休もう?」
「そうだね。丁度そこに休憩スペースがあるみたいだし...そうしよう」
木葉が疲れているように見えるから、なんて言えるはずもなく...そのままカフェで過ごした。
「ごめん、ちょっとお手洗いに行ってくるね」
「...?うん、待ってる」
そう言っていなくなるのは、これで何度目だろう。
...何にせよ早く帰った方がいい気がする。
このままだと、きっと体調を崩してしまうだろうから。
「七海、1ヶ所一緒に来てほしい場所があるんだけど...いいかな?」
「私は大丈夫だよ。木葉は無理してない...?」
「...うん。全然元気だよ!それより早く行こう?」
嘘だ。今のが嘘だったことくらいは分かる。
けれど私は、そのままついていくことにした。
──このとき、無理にでも帰しておけばよかったのに。
「おはよう」
「木葉、大丈夫?無理してない...?」
「平気だよ。七海がいるからかな?」
確かにいつもより顔色がいいような気がする。
けれど、どうやって朝起きたのか...どうして今平気なのか訊きたい。
「朝でも動ける方法、母親に教えてもらったんだ。
何回も使えるものではないから、毎日は無理だけど...」
「無理だと思ったらすぐ言ってね」
「ありがとう」
ふたりでこんな時間から手を繋いで歩く。
それはとても新鮮で、それだけで心が満たされる。
「このバスに乗ったら行けるんだって」
「へえ、知らなかった...初めてだ」
「バスに乗るのが?」
「ううん、この時間帯に乗るのが」
笑いあって、ただ話して...そうしているうちに目的地にたどり着く。
「降りよう」
「...そうだね」
そのときちらっと見えたものに、少しだけ違和感を覚える。
「腕、怪我したの?」
「どうしたの、急に...」
「包帯、袖からはみ出てるから何かあったのかなって思ったんだ」
「ええ、と...ちょっとね」
【普通の人間より怪我や病気の治りが早い】...それも木葉が持っている特徴のうちのひとつだったはずだ。
実際に何度も治るのを目にしてきたから分かる。
それなのに包帯を巻いているのはどうしてなんだろう。
(...夜になったらもう1度訊いてみよう)
「噂どおり花が綺麗だね...!」
「そうだね。僕もそう思う」
ついはしゃいでしまいそうになるけれど、子どもっぽいと思われたくなくてできるだけ気をつけている。
けれどやっぱり、木葉の様子がいつもと違うような気がしてしかたない。
腕の包帯を気にしすぎているし、なんだかふらついているようにも見える。
「ねえ、少し休もう?」
「そうだね。丁度そこに休憩スペースがあるみたいだし...そうしよう」
木葉が疲れているように見えるから、なんて言えるはずもなく...そのままカフェで過ごした。
「ごめん、ちょっとお手洗いに行ってくるね」
「...?うん、待ってる」
そう言っていなくなるのは、これで何度目だろう。
...何にせよ早く帰った方がいい気がする。
このままだと、きっと体調を崩してしまうだろうから。
「七海、1ヶ所一緒に来てほしい場所があるんだけど...いいかな?」
「私は大丈夫だよ。木葉は無理してない...?」
「...うん。全然元気だよ!それより早く行こう?」
嘘だ。今のが嘘だったことくらいは分かる。
けれど私は、そのままついていくことにした。
──このとき、無理にでも帰しておけばよかったのに。
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