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5・御剣俊哉36歳、御剣梨緒34歳、仲良し夫婦。
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「クカー………かっ!!エッ!?」
不意に目が覚めた俺は、叩き起こされた様にバッと胸を反らせて背を伸ばし、クワッと大きく目を見開いた。
「やっと目を覚ましたのね。アンタはもー!
神鷹さんに迷惑ばかり掛けて!」
「え?え?えー?」
俺は自分の今の状況がすぐに把握出来なかった。
周りを見て、頭の中で順に状況を整理していく。
場所は、真弓の家の玄関で……
俺は、お父さんの背中におんぶされていて……
隣には、俺の靴を持つお母さんが居て……
俺をおんぶした、お父さんの目の前には着物姿ではなく、黒いタンクトップにジーンズを履いた真弓がいる。
あまりにも俺がキョロキョロするもんだから、お母さんが俺の今の状況を教えてくれた。
「走は、神鷹さんちに押し掛けた挙げ句、寝ちゃったの。
私達が迎えに来たから、神鷹さんが寝ているアンタを抱きかかえて玄関まで連れてきてくれたのよ。」
抱きかかえて!?真弓が俺を!?
「なんで俺が連れて来られた時に、すぐ起こしてくれなかったんだよ!!!」
俺は、お父さんの背中におんぶされた状態を拒否するように慌ててお父さんの背からずり落ちるようにして降りた。
玄関に靴下のまま降りて、お母さんが持つ俺の靴を奪う様に取って履く。
俺の慌てぶりに、お母さんがクスクス笑った。
「小学五年生にもなったら、さすがにおんぶや抱っこ姿を見られるのは恥ずかしいのねー」
お母さんはからかう様に言ったが、半分は当たり。
半分は違う。
お父さんにおんぶされている姿を真弓に見られたのは…ガキっぽいと思われただろうし確かに恥ずかしい。
でも真弓に抱っこされたのは……
ああああ!何で俺は寝てたんだ!!
そんなピッタリ真弓とくっついてたのに!!
それを全く覚えてないなんて!!
「そんなんじゃ無いからっ!!」
「おー照れちゃって。」
真弓が俺を抱っこ!恥ずかしいけど嬉しい!
嬉しいけど、全く覚えてない!
それが唇を噛むほど悔しい。
悔しいけど、その悔しい理由を口に出せない俺は、お母さんが言った言葉に図星を指されて悔しがってるように見えたと思う。
俺は反射的に真弓を見てしまった。
真弓は俺と2人の時は口が悪いけど、お父さん達の前ではとても静かだ。
それが、俺のガキっぽさに呆れた態度ではないかと不安になる。
「あの、神鷹さん…よろしければなんですが、連絡先を交換して頂けないでしょうか。
うちの息子は、貴方に懐いてしまったようで。
またこうしてお邪魔したりするかも知れません。
ご迷惑をお掛けするようであれば、連絡を頂きましたらすぐ駆け付けますので…。」
「あぁ、いいですよ。」
スマホを取り出したお父さんの提案に対し、真弓が何の躊躇いもなくジーンズのヒップポケットからスマホを取り出した。
「なにそれ!!ズルい!!」
色んな意味でズルい!
真弓と連絡先を交換するなんて、お父さんズルい!
真弓がお父さんには渋ったりせずに、すんなりスマホ出すのズルい!
さっき、俺のスマホ見せた時に真弓はスマホ見せてくれなかったくせに今、自然に出したのズルい!!
「あのねぇ、神鷹さんはアンタの同級生のお友達とは違うの。ズルイなんて言い方しないの!
迷惑を掛けたアンタを連れ戻しに来る為の連絡先交換なんだから!」
お母さんが俺の肩に手を置いて、呆れを含みながら嗜める様に言った。
俺とは連絡先を交換してくれないのに、お父さんとは連絡先を交換する。
その理由が、俺を真弓の家から連れ戻すためって!?
嫌だ、そんなの!
「でも!!俺達だって友達だ!」
「アンタねぇ!神鷹さん困らせないの!」
「いや連絡先の交換ぐらい別にいいですよ。
僕と走くんが互いの連絡先を知るのをお母さん方が許可するのでしたら。
それと、僕はこまめに携帯を見る方では無いんで、走くんが僕からの返事が無くても良いって言うのであれば。」
「いいよ!」
真弓が手にしたスマホを俺の方に向ける。
俺は、お母さんの許可なんて待たずに自分のスマホを向けた。
止められる前に急いで友達登録を済ます。
ひとつずつ、ひとつずつ、真弓との繋がりが増えていく。
大人の真弓からしたら、お父さんとのやりとりついでに子どもに連絡先を教えるなんて、大した事もない行動のひとつなのかも知れない。
でも俺には………俺のスマホに真弓が居るってだけで、サイコーの贈り物だ!
「ありがとう!!!まゅ……神鷹真弓さん!」
真弓が手の平を向け、「ハイよ」と小さく返事をしてくれた。
真弓の家から出て、お父さん、お母さん、俺の3人で帰路につく。
俺は真弓の家まで乗って行った自転車に乗り、俺を挟む様に歩く両親の歩速に合わせて自転車を漕いだ。
俺の右側を歩くお母さんが、俺に話しかけて来た。
「それにしても、神鷹さんが走をお姫様抱っこして玄関に連れて来た時は驚いたわね。
お姫様と王子様ですか!?って。」
少し俺をからかうように、クスッと笑ってお母さんが言った。
「それ、どっちがお姫様!?真弓!?」
俺をからかうつもりで言ったのだろう言葉に対して俺が予想外の反応を返したために、お母さんが「えぇ?」って不思議そうな顔をした。
「何で、抱っこしてる側のオジサンがお姫様なのよ。
走、まだ寝ぼけてんの?
しかも、アンタ神鷹さんを呼び捨てしてる?
駄目じゃないの!」
「だ、だって、俺がお姫様なワケ無いじゃん。
見てないから分かんないけどさ!
それに、ほ、本人にはちゃんと神鷹さんて呼んでるから。」
ちょっと色々と我慢が足りなかったと反省した。
感情が昂ぶって、思わず本音が口をついて出た。
ヘラっと笑って下手な言い訳をしながら、誤魔化す様にお母さんから視線を逸らす。
「見てないから分かんない?んっふっふっ…
これを見よ!!
神鷹さんの許可を得て撮らせて貰った、プリンセス走の写真!」
お母さんが、自慢げに自分のスマホの画面を俺に向けた。
「うぉおおぁあ!!!」
顔を真っ赤にしたらしい俺が、急に変な大声をあげた。
俺が恥ずかしさに顔を赤くして、声をあげたと思ったようだ。
俺の、その反応をからかい半分に見たかったらしいお母さんは、満足したのか嬉しそうに写真を消そうとした。
「ごめんごめん、ちゃんと消しとくからねー」
「待って!消さないで!消す前に、それちょうだい!!」
お母さんのスマホには、俺が真弓にお姫様抱っこされている画像が出ていた。
真弓にお姫様抱っこされて恥ずかしいとか思うより前に、数少ない真弓の貴重な写真!
寝ている俺は、何か半目開いてて気味の悪い顔をしているけど、真弓との初ツーショットだし!
すっげぇ真弓とくっついてるし!!
密着してるじゃん!
真弓の、仕方ないヤツだなみたいに、苦笑した様な表情も何かいい!
「恥ずかしいから早く消してって言うかと思ったのに。
意外ねー。」
「神鷹真弓のものなら何でも欲しい!大ファンだから!」
「えぇー、もうオジサンじゃん。」
と、お母さんは言ったが苦笑しながらも俺のスマホに写真を送ってくれた。
お母さんも、俺が小さな頃からラファエル皇子を演じた神鷹真弓って役者を、病的なほどずっと好きだったのは知っているので、深くは考えなかったようだ。
「まぁ、私が子どもの頃に好きだったアイドルだって、今はもういい年のオジサンだものね。
それでも本人を目の前にしたら私もキャーって言っちゃうかも知れないし。」
俺は同意するように、お母さんに向けて「そうそう!」とコクコクと何度も頷いた。
俺がファンとしてじゃなく、個人的に真弓ともっともっと仲良くなりたいって思っている事。
何だか、お母さん達に知られちゃいけない気がした。
少し間を置いて、お母さんが送ってくれた真弓にお姫様抱っこされている俺の画像をチラッと確認した。
ちゃんと届いてるのを確認にて満足そうにニンマリと笑みを浮かべた。
うちに帰ってから、じっくり見よう!
「さっき、神鷹さんと連絡先を交換するって話が出た時の走。
まるで、お父さんに嫉妬したみたいだったよね。」
お母さんとは逆側に居たお父さんが、お母さんに聞こえない位の声でぼそっと俺に囁いた。
心の中を見透かされた気がして、反射的にギクリと驚いた表情をしてしまった。
だがお父さんは、前を向いて歩いたままで俺の顔は見ていなかった。
少しホッとして、お父さんの背中を拳でツンと軽く小突いた。
「だって、お父さんだけズルいじゃん、
元ゲーノー人の神鷹真弓と俺より仲良くなるみたいで…
先に知り合ったのは俺なのに。」
「あー、そっかー、そうなんだねー。」
お父さんはハハハと小さな声で笑った。
うまく誤魔化せたんだろうか…?
不意に目が覚めた俺は、叩き起こされた様にバッと胸を反らせて背を伸ばし、クワッと大きく目を見開いた。
「やっと目を覚ましたのね。アンタはもー!
神鷹さんに迷惑ばかり掛けて!」
「え?え?えー?」
俺は自分の今の状況がすぐに把握出来なかった。
周りを見て、頭の中で順に状況を整理していく。
場所は、真弓の家の玄関で……
俺は、お父さんの背中におんぶされていて……
隣には、俺の靴を持つお母さんが居て……
俺をおんぶした、お父さんの目の前には着物姿ではなく、黒いタンクトップにジーンズを履いた真弓がいる。
あまりにも俺がキョロキョロするもんだから、お母さんが俺の今の状況を教えてくれた。
「走は、神鷹さんちに押し掛けた挙げ句、寝ちゃったの。
私達が迎えに来たから、神鷹さんが寝ているアンタを抱きかかえて玄関まで連れてきてくれたのよ。」
抱きかかえて!?真弓が俺を!?
「なんで俺が連れて来られた時に、すぐ起こしてくれなかったんだよ!!!」
俺は、お父さんの背中におんぶされた状態を拒否するように慌ててお父さんの背からずり落ちるようにして降りた。
玄関に靴下のまま降りて、お母さんが持つ俺の靴を奪う様に取って履く。
俺の慌てぶりに、お母さんがクスクス笑った。
「小学五年生にもなったら、さすがにおんぶや抱っこ姿を見られるのは恥ずかしいのねー」
お母さんはからかう様に言ったが、半分は当たり。
半分は違う。
お父さんにおんぶされている姿を真弓に見られたのは…ガキっぽいと思われただろうし確かに恥ずかしい。
でも真弓に抱っこされたのは……
ああああ!何で俺は寝てたんだ!!
そんなピッタリ真弓とくっついてたのに!!
それを全く覚えてないなんて!!
「そんなんじゃ無いからっ!!」
「おー照れちゃって。」
真弓が俺を抱っこ!恥ずかしいけど嬉しい!
嬉しいけど、全く覚えてない!
それが唇を噛むほど悔しい。
悔しいけど、その悔しい理由を口に出せない俺は、お母さんが言った言葉に図星を指されて悔しがってるように見えたと思う。
俺は反射的に真弓を見てしまった。
真弓は俺と2人の時は口が悪いけど、お父さん達の前ではとても静かだ。
それが、俺のガキっぽさに呆れた態度ではないかと不安になる。
「あの、神鷹さん…よろしければなんですが、連絡先を交換して頂けないでしょうか。
うちの息子は、貴方に懐いてしまったようで。
またこうしてお邪魔したりするかも知れません。
ご迷惑をお掛けするようであれば、連絡を頂きましたらすぐ駆け付けますので…。」
「あぁ、いいですよ。」
スマホを取り出したお父さんの提案に対し、真弓が何の躊躇いもなくジーンズのヒップポケットからスマホを取り出した。
「なにそれ!!ズルい!!」
色んな意味でズルい!
真弓と連絡先を交換するなんて、お父さんズルい!
真弓がお父さんには渋ったりせずに、すんなりスマホ出すのズルい!
さっき、俺のスマホ見せた時に真弓はスマホ見せてくれなかったくせに今、自然に出したのズルい!!
「あのねぇ、神鷹さんはアンタの同級生のお友達とは違うの。ズルイなんて言い方しないの!
迷惑を掛けたアンタを連れ戻しに来る為の連絡先交換なんだから!」
お母さんが俺の肩に手を置いて、呆れを含みながら嗜める様に言った。
俺とは連絡先を交換してくれないのに、お父さんとは連絡先を交換する。
その理由が、俺を真弓の家から連れ戻すためって!?
嫌だ、そんなの!
「でも!!俺達だって友達だ!」
「アンタねぇ!神鷹さん困らせないの!」
「いや連絡先の交換ぐらい別にいいですよ。
僕と走くんが互いの連絡先を知るのをお母さん方が許可するのでしたら。
それと、僕はこまめに携帯を見る方では無いんで、走くんが僕からの返事が無くても良いって言うのであれば。」
「いいよ!」
真弓が手にしたスマホを俺の方に向ける。
俺は、お母さんの許可なんて待たずに自分のスマホを向けた。
止められる前に急いで友達登録を済ます。
ひとつずつ、ひとつずつ、真弓との繋がりが増えていく。
大人の真弓からしたら、お父さんとのやりとりついでに子どもに連絡先を教えるなんて、大した事もない行動のひとつなのかも知れない。
でも俺には………俺のスマホに真弓が居るってだけで、サイコーの贈り物だ!
「ありがとう!!!まゅ……神鷹真弓さん!」
真弓が手の平を向け、「ハイよ」と小さく返事をしてくれた。
真弓の家から出て、お父さん、お母さん、俺の3人で帰路につく。
俺は真弓の家まで乗って行った自転車に乗り、俺を挟む様に歩く両親の歩速に合わせて自転車を漕いだ。
俺の右側を歩くお母さんが、俺に話しかけて来た。
「それにしても、神鷹さんが走をお姫様抱っこして玄関に連れて来た時は驚いたわね。
お姫様と王子様ですか!?って。」
少し俺をからかうように、クスッと笑ってお母さんが言った。
「それ、どっちがお姫様!?真弓!?」
俺をからかうつもりで言ったのだろう言葉に対して俺が予想外の反応を返したために、お母さんが「えぇ?」って不思議そうな顔をした。
「何で、抱っこしてる側のオジサンがお姫様なのよ。
走、まだ寝ぼけてんの?
しかも、アンタ神鷹さんを呼び捨てしてる?
駄目じゃないの!」
「だ、だって、俺がお姫様なワケ無いじゃん。
見てないから分かんないけどさ!
それに、ほ、本人にはちゃんと神鷹さんて呼んでるから。」
ちょっと色々と我慢が足りなかったと反省した。
感情が昂ぶって、思わず本音が口をついて出た。
ヘラっと笑って下手な言い訳をしながら、誤魔化す様にお母さんから視線を逸らす。
「見てないから分かんない?んっふっふっ…
これを見よ!!
神鷹さんの許可を得て撮らせて貰った、プリンセス走の写真!」
お母さんが、自慢げに自分のスマホの画面を俺に向けた。
「うぉおおぁあ!!!」
顔を真っ赤にしたらしい俺が、急に変な大声をあげた。
俺が恥ずかしさに顔を赤くして、声をあげたと思ったようだ。
俺の、その反応をからかい半分に見たかったらしいお母さんは、満足したのか嬉しそうに写真を消そうとした。
「ごめんごめん、ちゃんと消しとくからねー」
「待って!消さないで!消す前に、それちょうだい!!」
お母さんのスマホには、俺が真弓にお姫様抱っこされている画像が出ていた。
真弓にお姫様抱っこされて恥ずかしいとか思うより前に、数少ない真弓の貴重な写真!
寝ている俺は、何か半目開いてて気味の悪い顔をしているけど、真弓との初ツーショットだし!
すっげぇ真弓とくっついてるし!!
密着してるじゃん!
真弓の、仕方ないヤツだなみたいに、苦笑した様な表情も何かいい!
「恥ずかしいから早く消してって言うかと思ったのに。
意外ねー。」
「神鷹真弓のものなら何でも欲しい!大ファンだから!」
「えぇー、もうオジサンじゃん。」
と、お母さんは言ったが苦笑しながらも俺のスマホに写真を送ってくれた。
お母さんも、俺が小さな頃からラファエル皇子を演じた神鷹真弓って役者を、病的なほどずっと好きだったのは知っているので、深くは考えなかったようだ。
「まぁ、私が子どもの頃に好きだったアイドルだって、今はもういい年のオジサンだものね。
それでも本人を目の前にしたら私もキャーって言っちゃうかも知れないし。」
俺は同意するように、お母さんに向けて「そうそう!」とコクコクと何度も頷いた。
俺がファンとしてじゃなく、個人的に真弓ともっともっと仲良くなりたいって思っている事。
何だか、お母さん達に知られちゃいけない気がした。
少し間を置いて、お母さんが送ってくれた真弓にお姫様抱っこされている俺の画像をチラッと確認した。
ちゃんと届いてるのを確認にて満足そうにニンマリと笑みを浮かべた。
うちに帰ってから、じっくり見よう!
「さっき、神鷹さんと連絡先を交換するって話が出た時の走。
まるで、お父さんに嫉妬したみたいだったよね。」
お母さんとは逆側に居たお父さんが、お母さんに聞こえない位の声でぼそっと俺に囁いた。
心の中を見透かされた気がして、反射的にギクリと驚いた表情をしてしまった。
だがお父さんは、前を向いて歩いたままで俺の顔は見ていなかった。
少しホッとして、お父さんの背中を拳でツンと軽く小突いた。
「だって、お父さんだけズルいじゃん、
元ゲーノー人の神鷹真弓と俺より仲良くなるみたいで…
先に知り合ったのは俺なのに。」
「あー、そっかー、そうなんだねー。」
お父さんはハハハと小さな声で笑った。
うまく誤魔化せたんだろうか…?
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