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獣人国編~御前試合の代表決め~

近いけど遠い

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~テイムの条件~ 

・対象を殺した後ではテイム不可。
・ある程度対象を弱らせる必要がある。
・眠らせたり気絶させたりして意識が失われた状態でのテイムは不可。
・テイム実施者は、対象と一定以上戦闘し、″功績″を稼がなければならず、一定以上″功績″を溜めなければテイムは不可。
・故に委託等の手段は使えない。
・対象と友好度を上げ、仲良くなってテイムする方法もあるが、中々に難しい。



~滅びの森・南部~ 

ピー…チチチ…

「お。来よるぞ。(バド)」

「あぁ、森ん奥で嬢ちゃんが接敵した様じゃ。(ルド)」

「もう一度言っとくど、ユウ。
儂らが合図を送ったら手を出せぃ。
それ以外は、逃げと防御に徹するんじゃど?(ロイ)」

「了解!
僕の知ってる″ダックスフンド″と似ても似つかなかったけど、ここまで来たらやってやる!(悠)」


ほぼ自棄糞気味に自身を鼓舞する悠。

明らかに周囲の者達と話が食い違った為、気になった悠が冒険者ギルドの資料に目を通した所、悠が想像していた″ダックスフンド″とは滅茶苦茶掛け離れたモノであった事が30分前に漸く発覚した。

だからと言って悠は逃げ出そうとはせず、準備を進めてくれたドワーフ3人組や、エルフのエスメラルダの為にもやり遂げようと奮起したのであった。

すると


ヒュッ。

ドゴォオオッ!バギバギバキッ!!

ヴワ″ォオ″オ″オ″オ″オ″オ″オ″ッ!


滅びの森の中からエスメラルダが飛び出してきたかと思うと、轟音と破砕音を響かせ、大木をへし折って巻き込みながら、体長5メルを超すダックス憤怒が勢いよく飛び出してきた。

狙いは明らかにエスメラルダであり、少し離れた場所に居る冒険者達には目もくれなかった。


ダダダダダダダッ!

「爺さん達!引っ張ってきたよ!(エスメラルダ)」

「で、でか…速…(悠)」

「釣り御苦労!引き付けは儂らが請け負う、嬢ちゃんは後衛に回れぃ!
行くどルド!ロイ!前足狙おて転かすど!(バド)」スラッ!

「おぅよ!(ルド)」ジャキッ!
「おぅさ!(ロイ)」ザガッ!


ダックス憤怒を引き連れたエスメラルダは真っ直ぐ一行に向けて駆けていく。
ドワーフ達は次々に斧を抜き、体の側面や肩に担ぎ、力を溜めている。


「ユウ!隙を作るけぇ、そのビリビリガントレットで隙見て殴れっ!
深追いはするな?2~3発に留めておけぃ!(ルド)」

「おぅ!(悠)」

「駆けぃ!奴がずっ転けた時の事も考えて距離を取りつつ極力近付け!(ロイ)」ダンッ!

「初心者にも分かる説明で頼むよ!」ダッ!


ロイの指示に愚痴を言いつつも共に駆け出す悠。
ドワーフ3人は、ダックス憤怒の側面に陣取れる様に展開し


(((<フルスイングショット>!)))


手にしていた斧を振りかぶるや否やその場で1回転したドワーフ達は、遠心力をたっぷり乗せた一撃を今正に側面を通り過ぎようとしているダックス憤怒の前足に叩き込んだ。


「「「ずぇりゃぁあああああっ!」」」

『『『ゴッ!ギィイイイッ!』』』

ヴォオ″オ″オ″オ″オ″ッ!?ズシャァアッ!


ドワーフ3人による凄まじい攻撃を前足に食らったダックス憤怒は、思わず頭から地面に突っ込む形で倒れてしまった。


「っし、今じゃ!撃ち込めぃ!(バド)」

「おぅ!(悠)」ダダダッ!


とバドが叫んでいる間に、既に悠はダックス憤怒に接近しており、その距離は5メルも無かった。


「シッ!(悠)」ドゴゴッ!

バヂッ!ヴォオ″ッ!バヂヂッ!ガァッ!


右、左、左と拳を打ち込む度、ガントレットからは紫電が走り、ダックス憤怒は呻き声を上げる。


「外皮や筋肉は堅いが、肉(なか)は生き物のセオリー通りだな。(悠)」タンッ!


悠は言われた通りに攻撃を3発迄に留めてその場から距離を取る。



「ユウ!それだけじゃアカン!
もう2歩分は下がるんじゃっ!(バド)」


5メルを超す巨体のダックス憤怒相手に高々2~3メル離れた程度では不十分と言えた。


ヴォオ″ッ!ガバッ!


その言葉通りダックス憤怒は起き上がり、悠に襲い掛かってくる。


「リドル!足下を掘れ!(悠)」

モゾゾゾゾッ!

ズボォッ!ヴォオッ!?


悠は徐に指示を飛ばすと、ダックス憤怒の直下を何かが通り、地面が盛り上がる。
するとダックス憤怒の足が取られ、再び倒れ込む。

リドルとは悠に着いてきた相棒の『削岩土竜(サクガンモグラ)』の事である。
悠の指示を受け、地面の下に溝を作り、即席の落とし穴を仕掛けたのであった。


ヒュパッ!

ドドドッ!ヴォオッ!?

ビキビキビキビキッ!


そこにエスメラルダの放った矢がダックス憤怒の前足に突き立ち、直ぐに蔓が巻き付き、地面に根を張った。


「吸血樹の種を内包した特製の鏃の3連撃よ!
地面に磔にされている内に攻撃を仕掛けちゃって!(エスメラルダ)」

「でかしたぞ嬢ちゃん!(ロイ)」
「この隙に行くぞユウ!(ルド)」
「ジャンジャン叩き込めぃ!(バド)」

「おぅ!(悠)」


これがドワーフやエスメラルダ達との初の実戦とは思えない連携を取りつつ、ダックス憤怒テイムに向けて奮戦するのであった。





~滅びの森・獣人国南門方面~ 


「ほらミユミユ、あれが魔蛸だよ。(レドリック)」

「ギルドの資料見て嫌な予感してたけど、やっぱりサイズがおかしい…
あんなのとどう戦えば良いの…?(美幸)」


新しい防具(皮鎧)を身に纏い、意気揚々と滅びの森までやって来たミユミユ(美幸)だが、視線の先で6人組パーティがウネウネした巨大なモンスターと戦っている所を目撃して固まった。


「あれ位の大きさのモンスター、この世界にごまんと居るわよ?(アミスティア)」

「何ならフリアダビアではもっと大きなモンスターを相手にしただろう?(レドリック)」

「い、いや、直接戦ってはいないし、後半は前線にも出ていなかったし…(美幸)」おろおろ…


恐らくこの世界に来て初めてと言って良い程間近で見た巨大モンスターなのだろう。
美幸はおろおろとしていたが、並んで歩いていたアミスティアは歩みを止める事無くその6人組パーティの方へと進んでいった。


「ちょっと肩慣らしに行ってくるわね。
1発で良いから援護射撃よろしく。(アミスティア)」

「あいよ。(レドリック)」





~魔蛸vs6人組パーティ~


キュロロロロロロッ!ビタンッ!ズズンッ!

「リーダー!もう無理だ!これ以上続けたらパーティが全滅しちまう!もう逃げようぜ!(冒険者1)」

「「そうしよう!(冒険者2、3)」」

「アホか!んな事したら誰かに押し付ける事になるだろうが!
シーラ、『身代わり鳥』を召喚して森の方へ飛ばせ!(リーダー)」



身代わり鳥…【召喚】が喚び出せる召喚獣。
3分間ギャアギャアと鳴きながら任意の場所に向かって飛び続ける為、囮として使う事も出来る。



「…ゴメン…″身代わり鳥″を喚べるだけの魔力も…無い…(冒険者5・シーラ)」

「「「「「う、嘘だろ…(パーティ一同)」」」」」


逃げの一手が使えない事を知り、思わず背筋が凍る想いの6人組パーティ。

だが

 
「要らないのなら私が引き受けるわよ?(アミスティア)」

「「「「「「へ?(パーティ一同)」」」」」」
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