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獣人国編~救出作戦~
お1人で…ですか…?
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「え?この依頼を全てお1人で…ですか…?」
「あれ?もしかして受けれませんか?」
ノアが依頼をカウンターに提出した際、受付嬢(羊獣人で人間寄り)が依頼の内容を見て少し固まった。
「あ、いえ…危険度(低)とは言え、モンスターの強さは中級冒険者クラスはありますので、少し戸惑ってしまいました。
ノア様は新人冒険者ではありますが、"レベル3相当"まで昇格されております。
実質、"準上級冒険者"と言って良い実績をお持ちですので受ける事は可能です。」
「それではお願いします。」
「ただ申し訳無いのですが、お連れ様を同行させるのはお控え頂いてよろしいでしょうか?」
「あ、はい、分かりました。」
「えっ!?にゃんでですか!?」
「ど!どうしてですか!?」
受付嬢から同行を止められたヴァモスとベレーザは驚いて声を上げる。
「お連れ様は身分証…冒険者カードに類する物をお持ちでありません。
謂わば一般人と同じ扱いになります。
『滅びの森』の様な危険地帯にお連れする訳には…」
「じ、じゃあ冒険者カード作るにゃ!」
「作る事は可能ですが、作成直後は最低レベルの"10"ですので同様に『滅びの森』へ向かう事は禁止としています。
新人冒険者同士でも臨時パーティを組んで『滅びの森』に向かう事は出来ますが、最低"レベル8"からとさせて頂いてます。」
「「そ、そんなぁ…」」
受付嬢からそう告げられると、2人はガックリと肩を落とし、残念そうにしている。
「まぁ良いじゃないか、たまには別行動してみるのも。
ここで暮らす予行練習みたいな感じで街を歩いてみると良いよ。」
あくまで一時的に2人の保護者をやっている訳で、これからもその関係が続くかどうかは分からない。
この国を気に入ってここに根を張るかどうかを決める良い機会になるだろう、との思いでノアはそう勧め
以前の2人であれば、何がなんでも着いて来ようとしただろうが
「わ、分かりましたにゃ。
いつまでもベッタリ、と言う訳にはいきませんもにょね。」
「分かりました。
少し心寂しい感じはしますが、御武運をお祈りしています。」
2人もノアの意図を察してくれた様で、多少悩みつつも了承してくれた。
その後、依頼を受けたノアはギルドを出ると『滅びの森』がある南門方面へ、ヴァモス、ベレーザの2人は人流に従って通りを進んでいった。
(『あの2人、大丈夫かねぇ…』)
(多少心配だけど付きっきりって訳にもいかないしね。
それに『鬼神』も前に言ってたじゃないか、"僕は過保護過ぎる"ってね。)
(『む…どうやら主の過保護が移っちまった様だな…』)
(ふっふっふ、僕色に染まるが良い。)
(『何おぅ?』)
「…っと、矢50か…最近あまり使ってないからこれ位あれば良いか。」
カキッ…パキンッ…
スチャッ、バチッバチンッ!
コキッ、パキッ、ポキポキ…
「よし、準備完了。」
ノアは、南門前の出国待機列に並びつつ破損した魔装・破城槌式鉄甲を腕から外し、アイテムボックスへ。
代わりに荒鬼神2本を取り出して腰に差す。
首や肩、腰をぐりんぐりんと回して準備運動を施す。
「はいどうぞ。」
「どうもです。」
依頼の為の出国手続きを済ませ、防壁の外に出る。
周りを見渡してみると、ノアの他にも数組の冒険者パーティが『滅びの森』に向かっている様だ。
<<<今日はお願いします。>>>
<こちらこそ。>
<引き付けてから攻撃に移ってくれ。>
<<<<了解。>>>>
などと挨拶したり、戦法についての相談をしている事から、中には臨時で組んでる所もあるのだろう。
どのパーティにも【盾】がおり、最低でも4人でパーティを組んでいる。
1人で『滅びの森』へ向かっているのはノアただ1人だけなので、何処と無く浮いていた。
その為
「まさかとは思うが、君1人で『滅びの森』へ?(6人パーティの男性)」
「臨時パーティ組めなかったのか?
良かったらウチのパーティ来るか?(4人パーティの女性)」
「1人て…冒険者ギルドで止められなかったのか?(5人パーティの男性)」
やはりと言うべきか、周りのパーティに心配された。
「あ…ご心配無く…
冒険者ギルドでちゃんと承認されましたし、僕の【適正】的にパーティ組めないんです。」
「そ、そうか…」
「そう言う【適正】もあるんだな…」
「もし厳しいなら頼ってくれて良いからな?」
と、完全に納得はしてくれなかった。
この反応も慣れたものである。
南門を出て東にある街道を進んでいくと、獣人国と遠くに見えるヒュマノ聖王国との中間地点に鬱蒼と生い茂る広大な森林地帯が見える。
前日に森林地帯の端を、気配を消しつつ1000人もの冒険者と共に突っ切って行ったが、あの森からは何とも言えない気配を感じたのを今でも覚えている。
<あれが『滅びの森』かー…>
<稼ぐぞー。>
<少し南側に行ってみましょ。>
<りょーかい。>
など、他のパーティも『滅びの森』を視認し、各々動き始めようとしていた。
すると
バサバサバサ…ビョルルルン…パシッ!
ギャー!ギャギギッ…
<<<<…何今の…>>>>
突如鬱蒼と生い茂る『滅びの森』中央から鳥達が一斉に羽ばたいて行ったかと思うと、それを追い掛ける様に森の中から何かのモンスターの触手が伸び、鳥が捕まって引き摺り困れていった。
突然の事で周囲のパーティが立ち止まり、呆然としている中
(今の触手…あれが冒険者ギルドにあった図解に載ってた『魔蛸』かな…?)
(『蛸か…新鮮な物は身が半透明で甘味があるんだよな。』)
(ふーん…食べた事無いから少し興味あるな…
もし出会したら捕らえてみようかね。)
と、至って平常運転であった。
「お、あれは『エレファント・バッファロー』じゃないか!?おい、行くぞ皆!」
「「「「おぅ!」」」」ガシャガシャ!
また暫し歩いていると、『滅びの森』外縁部で青々とした草を食んでいた湾曲した角を生やした灰色の牛を見掛けた。
ノアの少し前を歩いていた5人組パーティが声を上げて周知させつつ戦闘準備に入っていった。
基本的に周囲に他のパーティが居る場合、まず最初に名乗りを上げた冒険者が相手する決まりとなっている。
その為、『エレファント・バッファロー』の相手をするのはこの5人組パーティとなる。
ブモァッ!ドガガッ!
「っしゃぁあっ!行くぜぇ!」ガンガンッ!
「よし皆!支援魔法掛けるぞ!<守護者の盾><身体強化><剣強化付与>!」
『エレファント・バッファロー』が一鳴きした直後、パーティへ向けて突進を開始。
【盾】の男性がパーティの中から飛び出し、盾を剣の柄で殴って挑発し出す。
その間味方が支援魔法を掛けて【盾】含め他の人員の強化を図る。
戦闘開始の手順としては一般的な物である。
ズズンッ!!
「ぐっ!?なんつー突進力だ…だが抑えたぞ!
皆攻撃を仕掛け…」
フスッ!
ガギッ!ブォンッ!「え!?うぉああっ!?」
突進を何とか抑えた男性であったが、再び『エレファント・バッファロー』が一鳴きしたかと思うと、自身の角を盾と男性の足に引っ掛け、首の力だけで空中へと克ち上げたのだ。
ブモォオオアアッ!ドガガッ!
「嘘だろ!?何つー膂力だ!?」
「マズイ!?そこの冒険者!そっちに向かったぞ!逃げろぉっ!」
【盾】の男性がまだ空中に居る中、『エレファント・バッファロー』は残りの4人に目もくれず、後方に居たノアへ向け突進を仕掛けてきた。
「あれ?もしかして受けれませんか?」
ノアが依頼をカウンターに提出した際、受付嬢(羊獣人で人間寄り)が依頼の内容を見て少し固まった。
「あ、いえ…危険度(低)とは言え、モンスターの強さは中級冒険者クラスはありますので、少し戸惑ってしまいました。
ノア様は新人冒険者ではありますが、"レベル3相当"まで昇格されております。
実質、"準上級冒険者"と言って良い実績をお持ちですので受ける事は可能です。」
「それではお願いします。」
「ただ申し訳無いのですが、お連れ様を同行させるのはお控え頂いてよろしいでしょうか?」
「あ、はい、分かりました。」
「えっ!?にゃんでですか!?」
「ど!どうしてですか!?」
受付嬢から同行を止められたヴァモスとベレーザは驚いて声を上げる。
「お連れ様は身分証…冒険者カードに類する物をお持ちでありません。
謂わば一般人と同じ扱いになります。
『滅びの森』の様な危険地帯にお連れする訳には…」
「じ、じゃあ冒険者カード作るにゃ!」
「作る事は可能ですが、作成直後は最低レベルの"10"ですので同様に『滅びの森』へ向かう事は禁止としています。
新人冒険者同士でも臨時パーティを組んで『滅びの森』に向かう事は出来ますが、最低"レベル8"からとさせて頂いてます。」
「「そ、そんなぁ…」」
受付嬢からそう告げられると、2人はガックリと肩を落とし、残念そうにしている。
「まぁ良いじゃないか、たまには別行動してみるのも。
ここで暮らす予行練習みたいな感じで街を歩いてみると良いよ。」
あくまで一時的に2人の保護者をやっている訳で、これからもその関係が続くかどうかは分からない。
この国を気に入ってここに根を張るかどうかを決める良い機会になるだろう、との思いでノアはそう勧め
以前の2人であれば、何がなんでも着いて来ようとしただろうが
「わ、分かりましたにゃ。
いつまでもベッタリ、と言う訳にはいきませんもにょね。」
「分かりました。
少し心寂しい感じはしますが、御武運をお祈りしています。」
2人もノアの意図を察してくれた様で、多少悩みつつも了承してくれた。
その後、依頼を受けたノアはギルドを出ると『滅びの森』がある南門方面へ、ヴァモス、ベレーザの2人は人流に従って通りを進んでいった。
(『あの2人、大丈夫かねぇ…』)
(多少心配だけど付きっきりって訳にもいかないしね。
それに『鬼神』も前に言ってたじゃないか、"僕は過保護過ぎる"ってね。)
(『む…どうやら主の過保護が移っちまった様だな…』)
(ふっふっふ、僕色に染まるが良い。)
(『何おぅ?』)
「…っと、矢50か…最近あまり使ってないからこれ位あれば良いか。」
カキッ…パキンッ…
スチャッ、バチッバチンッ!
コキッ、パキッ、ポキポキ…
「よし、準備完了。」
ノアは、南門前の出国待機列に並びつつ破損した魔装・破城槌式鉄甲を腕から外し、アイテムボックスへ。
代わりに荒鬼神2本を取り出して腰に差す。
首や肩、腰をぐりんぐりんと回して準備運動を施す。
「はいどうぞ。」
「どうもです。」
依頼の為の出国手続きを済ませ、防壁の外に出る。
周りを見渡してみると、ノアの他にも数組の冒険者パーティが『滅びの森』に向かっている様だ。
<<<今日はお願いします。>>>
<こちらこそ。>
<引き付けてから攻撃に移ってくれ。>
<<<<了解。>>>>
などと挨拶したり、戦法についての相談をしている事から、中には臨時で組んでる所もあるのだろう。
どのパーティにも【盾】がおり、最低でも4人でパーティを組んでいる。
1人で『滅びの森』へ向かっているのはノアただ1人だけなので、何処と無く浮いていた。
その為
「まさかとは思うが、君1人で『滅びの森』へ?(6人パーティの男性)」
「臨時パーティ組めなかったのか?
良かったらウチのパーティ来るか?(4人パーティの女性)」
「1人て…冒険者ギルドで止められなかったのか?(5人パーティの男性)」
やはりと言うべきか、周りのパーティに心配された。
「あ…ご心配無く…
冒険者ギルドでちゃんと承認されましたし、僕の【適正】的にパーティ組めないんです。」
「そ、そうか…」
「そう言う【適正】もあるんだな…」
「もし厳しいなら頼ってくれて良いからな?」
と、完全に納得はしてくれなかった。
この反応も慣れたものである。
南門を出て東にある街道を進んでいくと、獣人国と遠くに見えるヒュマノ聖王国との中間地点に鬱蒼と生い茂る広大な森林地帯が見える。
前日に森林地帯の端を、気配を消しつつ1000人もの冒険者と共に突っ切って行ったが、あの森からは何とも言えない気配を感じたのを今でも覚えている。
<あれが『滅びの森』かー…>
<稼ぐぞー。>
<少し南側に行ってみましょ。>
<りょーかい。>
など、他のパーティも『滅びの森』を視認し、各々動き始めようとしていた。
すると
バサバサバサ…ビョルルルン…パシッ!
ギャー!ギャギギッ…
<<<<…何今の…>>>>
突如鬱蒼と生い茂る『滅びの森』中央から鳥達が一斉に羽ばたいて行ったかと思うと、それを追い掛ける様に森の中から何かのモンスターの触手が伸び、鳥が捕まって引き摺り困れていった。
突然の事で周囲のパーティが立ち止まり、呆然としている中
(今の触手…あれが冒険者ギルドにあった図解に載ってた『魔蛸』かな…?)
(『蛸か…新鮮な物は身が半透明で甘味があるんだよな。』)
(ふーん…食べた事無いから少し興味あるな…
もし出会したら捕らえてみようかね。)
と、至って平常運転であった。
「お、あれは『エレファント・バッファロー』じゃないか!?おい、行くぞ皆!」
「「「「おぅ!」」」」ガシャガシャ!
また暫し歩いていると、『滅びの森』外縁部で青々とした草を食んでいた湾曲した角を生やした灰色の牛を見掛けた。
ノアの少し前を歩いていた5人組パーティが声を上げて周知させつつ戦闘準備に入っていった。
基本的に周囲に他のパーティが居る場合、まず最初に名乗りを上げた冒険者が相手する決まりとなっている。
その為、『エレファント・バッファロー』の相手をするのはこの5人組パーティとなる。
ブモァッ!ドガガッ!
「っしゃぁあっ!行くぜぇ!」ガンガンッ!
「よし皆!支援魔法掛けるぞ!<守護者の盾><身体強化><剣強化付与>!」
『エレファント・バッファロー』が一鳴きした直後、パーティへ向けて突進を開始。
【盾】の男性がパーティの中から飛び出し、盾を剣の柄で殴って挑発し出す。
その間味方が支援魔法を掛けて【盾】含め他の人員の強化を図る。
戦闘開始の手順としては一般的な物である。
ズズンッ!!
「ぐっ!?なんつー突進力だ…だが抑えたぞ!
皆攻撃を仕掛け…」
フスッ!
ガギッ!ブォンッ!「え!?うぉああっ!?」
突進を何とか抑えた男性であったが、再び『エレファント・バッファロー』が一鳴きしたかと思うと、自身の角を盾と男性の足に引っ掛け、首の力だけで空中へと克ち上げたのだ。
ブモォオオアアッ!ドガガッ!
「嘘だろ!?何つー膂力だ!?」
「マズイ!?そこの冒険者!そっちに向かったぞ!逃げろぉっ!」
【盾】の男性がまだ空中に居る中、『エレファント・バッファロー』は残りの4人に目もくれず、後方に居たノアへ向け突進を仕掛けてきた。
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