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お姫さまに大変身

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 なぜか通りすがりのひとびとが、わたしとすれちがうときに深々とお辞儀じぎをしてきた。
 マエダさんにアイサツしているの?
 最初は、そう思った。
 でも、わたしの顔をチラチラ見ていることに途中で気づいたんだ。
 元気いっぱいだった心が急にしぼんでいくのを感じた。
 あのいじわる王子と同じような目で、みんな、わたしのことをあやしんでいる……?
 ふうー、しょうがないか。
 だって、わたしはここではよそ者。
 どこからやってきたのかわからない、得体の知れない子なのに、王さまの命令にしたがい、お客さんとして迎えなければいけないのだから。
 はあー。思わず、ため息をついてしまう。
 やがて、ひとつの部屋の前でマエダさんは立ち止まった。
「こちらでございます」
 見あげてみると、重そうなとびらだった。
 ギィーと右と左にひらかれる。
「わ、あ……スゴい……!」
 目の前に広がった光景に何もかも忘れ、目がクギ付けになってしまった。
 そこにある何もかもが信じられないくらい豪華だった。
 ピカピカに磨かれた大理石の床に、金銀をあしらった家具。
 見るからに高価そうなツボや宝石箱などが置かれている。
 本当にこの部屋でいいの?
 わたしは不安になってしまった。
「ま、マエダさん! お部屋をまちがえているんじゃないですかっ?」
 ひとりで焦りまくるわたしに、マエダさんはニッコリほほ笑んだ。
「ご安心くださいませ。まちがいなく、おじょうさまのお部屋です」
 す、すごーい。ここがわたしの部屋だなんて!
 ポカーンと口をあけて左右を見まわしたあと、天井を見あげた。びっくり! 何層にも重なったシャンデリアまである。
 ずいぶん高そうだなあ。壊しちゃったらどうしよう。
 べ、弁償べんしょうできるだろうか。
 息をするのもこわいくらいだ。
 ドキドキ、そんなことを考えていたら、パンパンと手を打ち鳴らす音がした。
「え?」
 ふり返ってみると、簡素かんそな身なりの女のひとたちが何人もズラッと勢ぞろいしていて、わたしに向かって頭を垂れていた。
 みんな、その手に光沢のある生地やリボン、靴やアクセサリーなどが入った箱を、わたしに中身が見えるように差しだしていた。
「おじょうさま、お着替えでございます。衣装を持ってまいりました。お好みのものをお選びくださいませ」
「えーっ、着替えるんですか?」
 思わず目が点になってしまう。
「もちろんでございます。おじょうさまにふさわしいものを、こちらでご用意させていただきました」
 なんだか、びっくりすることだらけだ。
「でも、わたし、ドレスなんて着たことなくて……七五三のときくらいしか……」
 アハハーと苦笑いを浮かべた。
「しちごさん?」
 マエダさんが不思議そうな顔をした。
 あっ、いけない! この世界のひとが知るわけないのに、ついうっかり!
「ごめんなさい! 意味わかんないですよね?」
 あわててあやまったら、
「ああ、おじょうさまのお国での祭礼でございますね」
 意外なコトバが返ってきた。
「マエダさん、知ってるの?」
「はい、もちろんでございます。我が国にも似たような行事がありますので」
 七五三なんて、日本だけの行事だと思ってた。よその国にもあるんだなあ。ぜんぜん知らなかった。
「へえー」と感心していると、
「それでは、僭越せんえつながら、このマエダにお任せください。おじょうさまによくおにあいのものを選ばせていただきます」
 マエダさんはそう言うが早いか、女のひとたちの前にいって「これとそれと、あれと」テキパキ選んで、またパンパンと手を打ち鳴らした。
 そうしたら、長方形のパーティションのようなものが次々と運ばれてきて、わたしは四方八方を囲まれてしまったんだ。
「おじょうさま、失礼いたします!」
 三人の女のひとが、わたしの服のボタンに手をかけてきた!
「いっ! いいです、自分で着替えますから!」
 わたしはあわてて服の前を両手でおさえた。
「いいえ、わたくしたちの仕事でございますから」
「どうぞ、お楽になさってくださいませ」
 あちこちから、六つの手がのびてくる。
 ひええ!
 だれか、助けてー!
 おばあちゃーん!!
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