12 / 14
【番外編】4(犬山side)
しおりを挟む俺、犬山直樹は男に恋をしている。
別に男が恋愛対象とかそういう趣味ではない。最初は彼に対しても友人として普通の感情を持っていた。
しかし、近づけば近づくほど俺の心を惹き付けられる。ノリが良くて優しいし一緒にいて楽しい。男子校の寮生活なんて華が無くてちょっと嫌だなんて思っていたが、そんな考え直ぐに吹っ飛んだ。今は彼女よりも友達といた方がずっと楽しい。まあ女の子は可愛いけどふざけてワーワー騒ぐ事なんて出来ないし、それに比べて男の方が楽しいんだろーな。
しかし、そういうことでは無いことに俺は気付いてしまったのだ。
「犬山ー!ぶち殺せ!!」
「へーい、犬山ぶっちぎっていきまーす」
猫宮の声に応え、画面の向こうにいるゾンビに銃を向ける。
その日はゲーセンにあるゾンビのシューティングゲームを楽しんでいた。
暗闇の中腐った肉塊が迫ってくるのはゲームといえど、結構ビビる。だが、隣にいる猫宮が恐怖どころか笑顔でゾンビの頭を撃っている為、恐怖心は薄れた。暗闇でよく見えないが、猫宮は真っ黒な瞳を細め生き生きとしてる。てかよく見たら睫毛長ぇな。目細めたら睫毛で瞳見えねえし。
「おい、犬山!」
猫宮は突如目を見開き、俺の名前を呼ぶ。視線を画面に移すと、もう近くまでゾンビは迫っていた。
「ギャァアアアア!!猫宮、死ぬな!!!」
情けない声で叫び、咄嗟にゾンビに背を向け猫宮をしっかりと抱き締める。その後GAME OVERと低い機械音で告げられ、照明が付いた。
しかし未だ胸が釘を打つように痛く動悸を繰り返す。すると、腕の中にいるものが震え始めた。パッと腕を離して彼の顔を覗くと、猫宮は耐えきれないといったように吹き出した。
「ぶっ、犬山、お前俺の彼氏かよ!ははっ」
ヒーヒーと腹を抑えて馬鹿にするように笑う彼に対して、いつもは怒るがその時は体が硬直して中々声を出せなかった。
「ん?犬山?」
「……か、彼氏。ま、まあ俺は彼氏だって錯覚させちゃう程イケメンだからな!惚れるなよ?」
「調子乗るな」
はははは、と肩を組み笑い合う。そしてさっきの恐怖なんて吹っ飛んだように次はどこ行くかと会話を交わす。だが、俺の心臓は未だ動悸が激しいままだった。
彼氏、カレシ、karesi……。
猫宮の声が頭から離れない。横を見ると猫宮の白い肌にほんのりと頬に淡い赤が染まっているのが見えた。ゲームに熱中していたせいか汗が首を伝う。柔らかいがクセのある毛を靡かせて、白い歯を見せて笑う。
「……見過ぎ。惚れるなよ?」
俺の真似をしたようにニッと笑う姿に、完全にノックアウト。俺の心臓は大砲で撃たれたように胸がきゅっと締め付けられた。
自分が信じられない。相手猫宮じゃん!普通のそこら辺にいるような男じゃん!何でこんなにドキドキしてんだよ!目を覚ませ!
猫宮は男猫宮は男、と脳内で反芻するがやっぱり胸のドキドキは止まらない。その日は猫宮を見る事が出来ず、無理矢理理由を付けてその場から逃げ出した。
22
あなたにおすすめの小説
俺の親友がモテ過ぎて困る
くるむ
BL
☆完結済みです☆
番外編として短い話を追加しました。
男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ)
中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。
一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ)
……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
て、お前何考えてんの?
何しようとしてんの?
……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪
平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています
七瀬
BL
あらすじ
春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。
政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。
****
初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m
ビッチです!誤解しないでください!
モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃
「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」
「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」
「大丈夫か?あんな噂気にするな」
「晃ほど清純な男はいないというのに」
「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」
噂じゃなくて事実ですけど!!!??
俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生……
魔性の男で申し訳ない笑
めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!
息の合うゲーム友達とリア凸した結果プロポーズされました。
ふわりんしず。
BL
“じゃあ会ってみる?今度の日曜日”
ゲーム内で1番気の合う相棒に突然誘われた。リアルで会ったことはなく、
ただゲーム中にボイスを付けて遊ぶ仲だった
一瞬の葛藤とほんの少しのワクワク。
結局俺が選んだのは、
“いいね!あそぼーよ”
もし人生の分岐点があるのなら、きっとこと時だったのかもしれないと
後から思うのだった。
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる