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12.勇者様、可愛すぎる
しおりを挟む断じて魔法は使えない。
元々魔法が使える人間が生まれる確率は非常に低く、百分の一くらいだろうと言われている。使えたとしても魔力の威力や魔法の種類も限られている。人の感情を変えるなんて高度な魔法は魔力も全く無い俺には到底出来ない。
「俺は残念ながら魔法は使えないのでその可能性は有り得ないです」
「確かに魔力は感じられないな。私の勘違いか」
「あ、で、でも誰かと一緒に食べたら美味しく感じるって聞きますし、それかもしれませんよ」
俺のこのセリフでジェイミー様は漸く納得出来たように頷いた。
「魔法が使えないと不便ではないか」
「俺にとってはこの生活が当たり前なので特に不便だと思ったことは無いです。でも、ジェイミー様のように自由自在に使えるのは尊敬します」
実際にジェイミー様が魔法を使っているところは見た事がない。基本街中でも生活魔法なら良いが派手な攻撃魔法は禁止されている。
しかし、魔王討伐の旅を元にした演劇、その名も「光の勇者の宿命」でジェイミー様の魔法を使うシーンで初めて攻撃魔法を見たが、余りの凄さに感嘆の息が零れた。
旅の途中、魔物に襲われそうになった聖女の盾になり、囁くように呪文を唱えると構えていた聖剣に雷が纏い、その場にいた魔物全てを一蹴した、という逸話。まるで物語のような話だが実話なのだ。あの話は本当に格好良かった。実際のジェイミー様はもっと格好良いんだろうな。
「ありがとう。だが、私は攻撃魔法は使えるが回復魔法は使えないから自由自在とは言えない」
「それでも凄いですよ!俺「光の勇者の宿命」っていう魔王討伐の旅を元にした演劇を見たんですけどその中のジェイミー様役の人が格好良くて何度も見ちゃいました」
「ああ、あの演劇か……じゃあ本物を見せようか」
え?と声が零れる前にジェイミー様は何やら呪文を唱えた。異国の言葉でも無い、この世の言葉では表せないような言語だ。
演劇で見ていた時は「炎よ、燃え上がれ!!」みたいなあからさまな感じだったけどジェイミー様級になるとやはり違うのか?
じっと彼の様子を見ていると指先から氷が出ているのに気付く。丸い氷を人差し指で押すと、なんということか。そこには透明な氷の薔薇が出来ていた。まるでマジックを見ているようで俺は感極まって大きな拍手を彼に送った。
「凄いです!一瞬でこんな精巧な薔薇が出来上がるなんて!」
興奮の余り沢山褒め称えるとジェイミー様は照れ臭そうにした。その顔を見ると胸がギュンッと拳で強く握られたような感覚がした。
尊い。こんな高身長でイケメンなのに可愛いも兼ね持つなんて反則だ。可愛過ぎる。今この瞬間、俺は世界で一番の幸せ者だろう。
「もう一度見るか?」
「いえっ、これ以上見たら幸せを摂取し過ぎて倒れるかもしれないので……」
そう言うとジェイミー様に本気で心配された。ジェイミー様の前では下手な冗談を言うべきではないと学んだ。
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