勇者様、推しです!〜溺愛されるのは解釈違いです〜

ぽぽ

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11.勇者様、嬉しそう!

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 食堂に着くと、沢山の騎士がガヤガヤと話しながら食事をしていた。しかし、ジェイミー様が足を踏み入れた途端、呼吸の音も聞こえない静けさが食堂を包む。
 
「ジェイミー様だ……」
「何故こんな所に」
「相変わらず砂糖菓子みたいな顔だこった」
 
 周囲の視線を集めているがそれに気付いていないのかと思う程無表情で颯爽と歩くジェイミー様と反対に俺は一人一人の声を噛み締めて聞いていた。
  「砂糖菓子」かぁ。確かにこんな甘い顔をずっと摂取していたら虫歯になっちゃう。まあジェイミー様の顏を眺められるならば虫歯でも糖尿病でもなっても良い。
 
「ここでいいか」

 頷き、ジェイミー様に言われた席に着くと隣に彼も座った。そして彼は自身が持っているバケットからサンドイッチを取り出し俺へ手渡す。
 
「あ、ありがとうございます!」

 ジェイミー様が選んで下さったものは、ハムと卵のサンドイッチ。ジェイミー様行きつけの以前のお店の物だとしたら確実に美味しい。というかジェイミー様の指が触れた時点でこのサンドイッチは神同然。自分の思考回路がかなり気持ち悪い事は自覚してるが許して欲しい。

 黙々と味わっていると横から熱い視線を感じる。ジェイミー様が何故かサンドイッチを食べずに此方をじっと見詰めているのだ。
 何故だ。何故俺をそんなに見ているんだ。もしかして俺の食べ方をチェックしているとか?そんなに見られたら味が分からなくなるからやめて欲しいんですけど……。
 
「お、美味しいですね。サンドイッチ」
 
 俺よりもサンドイッチに視線を移してもらうために話し掛けると、ジェイミー様はサンドイッチを取り出した。そうそう、俺なんか見ずに好きな物を食べてくれ。
 
「これも食べてくれ」
 
 そっち!?俺が食べる方!?
 推しに食べてくれと言われたら断る事は出来ない。笑みを浮かべ受け取ると、再びジェイミー様は頬杖をついて俺を見た。どういう心理で見ているんだ……。
 
 四つ目のサンドイッチを渡され流石に吐きそうだ。俺は大食漢では無いし寧ろ少食である。だが、ジェイミー様は真っ直ぐな目で俺に手渡してくれるからつい断れず受け取ってしまう。照り焼きチキンの入ったサンドイッチを見て胃がどっと重くなったのを感じる。まだ食べてもいないのに。
 
「ジェイミー様は、食べませんか?美味しいですよ」
 
 笑顔を作り話し掛ける。バケットの中にはまだサンドイッチが幾つか残っている。このままでは俺が全て食べることになりそうだ。それだけは回避したい。
 すると、ジェイミー様は徐に俺から視線を外しサンドイッチを見る。
 
「分かった」
 
 そう言うと、ジェイミー様は急にお顔を俺に近付けた。そして俺の持っていたサンドイッチを齧った。予想外の行動に目を見張る。周囲の騎士も息を飲んだだろう。
 
「美味しい」

 心做しか少し表情が柔らかくなった。目尻が少し下がり喜色が伝わる。それに騎士達も気付いたようで驚いたように彼に釘付けになっていた。それは俺も同じで思わず彼の顔に食いつくように見つめていた。
 
「……何故、笑っている?」
 
 俺の異変に気付き、再び普段の無表情で聞いた。
 自分でも笑っていた自覚は無かった。素直にジェイミー様が嬉しそうだったから、と伝えたら変に思われるだろうか。でも、そんな人じゃないと長年推し続けた俺は分かる。
 そして俺はそのまま笑顔で答えた。

「ジェイミー様が嬉しそうだったので」
「……私が?」
「はい。サンドイッチ、本当に好きなんですね!」
 
 そう言うとジェイミー様は少し目を伏せた。
 
「……私はサンドイッチが好きだと以前言ったが、正直今までは味よりも食べやすさを好んでいた。持ちながら走れてちょっとした小腹を埋めるのに丁度良いから。何時魔物が現れるか分からないから食事というのは如何に早く胃に詰め込めるかが重要だと思っていた」
 
 ジェイミー様が自分からこうして長く話すの今までに無かった。だから少したじろぐが彼の真剣な表情を見て俺も彼の話を真剣に聞こうと思った。

 以前サンドイッチを二人で食べていた時もかなり早く食べ終わっていた。単に俺が食べるのが下手くそだからと思っていたが、彼は歩きながら食べることに慣れていたのだろう。魔物が潜む森で座りながら食べるなんてする間抜けはいない。
 
「だが、君と食べると心が温かくなった。君は……」

 彼の口から出る言葉に耳を澄ます。すると、彼は至極真面目な顔で告げた。 
 
「君は、もしかして何か魔法を使っているのか?」
「はい?」
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